摆けいそうブックス闭 天皇と军队の近代史
本书は、1930年代の日本の军事と外交を専门としてきた着者が、ときに、东大教养学部の学生に向けて讲义した学术俯瞰讲义、ときに、『岩波讲座 日本歴史』の一章として寄せた论文などを中心に编んだ8章からなる部分と、书き下ろした长い総论を一本柱とする部分から构成されている。
著者は、博士論文で検討した内容を中心に書かれた最初の著書『模索する1930年代 日米関係と陸軍中堅層』以来、英国から米国に国際秩序形成のヘゲモニーが移ってゆく1930年代にあって、安全保障という点では、アメリカ中立法という外枠が設定され、経済発展ということでは、やはりアメリカの互恵通商法という「坂の上の雲」(到達すべき国家目標) が日本の目の前に現れる。このような時代にあって、安全と経済という二つの領域で政治的発言力を強めていった軍部、特に陸軍を分析対象として研究を進めてきた。
この間の筆者の研究を支えていた問題意識は、次の点にあった。過去の痛苦を「忘れないこと」や、戦争の前兆に「気づくこと」が、戦争を考えるときにそれほど万能な処方箋なのか、との淡い疑念である。過去を忘れないことや前兆に気づくことによってだけでは、戦争の本質を摑まえるのは難しいのではないかとの思いである。そこで、非合理と暴力という要素から軍を描く方向性からではなく、ひとまず、(i) 国家の安全の概念と外交政策形成との関係に及ぼす政治主体としての軍、特に陸軍を描き、(ii) 政府の政策決定の本質的変容における軍の影響力を描こうと考えた。
さらに、明仁天皇 (現上皇) 自身の発意により、200年余年ぶりとなる譲位による皇位継承が2020年春になされたことからくる現代的な問題関心がこれに加わった。近代の天皇の在り方をめぐる制度は、天皇が徴兵制軍隊を親率するとの理念によって支えられていた。軍隊を政治的中立の位置に置く必要性は、西郷隆盛による内乱?西南戦争を経験した明治政府にとっては不可欠のことだった。だが、1882 (明治15) 年の軍人勅諭中の「股肱の臣」と表現された天皇と軍隊の特別な親密さや、1889 (明治22) 年の大日本帝国憲法中の統帥大権 (第11条) と編制大権 (第12条) が規定する最高命令権者としての天皇の権威は、第一次世界大戦を契機として大きく動揺を来してゆく。
书き下ろしの総论では、1931年の満州事変から1933年の国际连盟脱退通告に至る时期の昭和天皇と军队との紧张関係を论じた。1932年は上海事変、血盟団事件、五?一五事件等、谋略やテロが内外に続発した年だったが、惊くべきことに、天皇はこの年7月の陆军士官学校卒业式に安全上の理由から出席できないでいた。またこの年、木戸幸一などの宫中侧近は「五箇条の誓文」に比すべき詔书を出すべく準备を进めていた。天皇亲率という理念のもとに「股肱の臣」と謳われて明治初年に创设された军队は、天皇に対して何故このように紧张をはらんだ存在となったのか。军人の政治不干与を要求していた军人勅諭はいかに踏み破られていったのか。社会の中で歴史的に支持されていた论理が覆されてゆく、その理由と过程をおさえた。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 加藤 陽子 / 2020)
本の目次
総 论 天皇と军队から考える近代史
1 天皇と军队、その特别な関係
2 军の论理と「幕府」论の存在
3 徴兵制と军人勅諭
4 宫中侧近への攻撃と満州事変の作為
5 共产主义の影
6 士官候补生の天皇観
7 事件の计画性について
8 上海事変の持った意味とは
9 皇族という不安と詔书涣発
おわりに
第1章 戦争の记忆と国家の位置づけ
はじめに
1 戦争の记忆
2 日清戦争研究の现在
3 日露戦争研究の现在
おわりに
第2章 军国主义の勃兴──明治维新から第一次世界大戦终结まで
はじめに
1 日本の朝鲜観?中国観の特质
2 政军関係の特质と构造
3 日清?日露开戦の过误と正当化の论理
4 植民地帝国日本の権益と国际情势
第3章 第一次世界大戦中の「戦后」构想──讲和準备委员会と币原喜重郎
はじめに
1 背景となる时代状况
2 会议録の分析
3 どのような论拠で利権を夺取するか
おわりに
第4章 一九叁〇年代の戦争は何をめぐる闘争だったのか
はじめに
1 国际军事裁判所条例の革命性
2 指导者责任论が成立した背景
3 一九叁〇年代アメリカの「中立」
4 日中戦争を语る语汇から见えるもの
第5章 総力戦下の政─军関係
はじめに
1 政军関係论と第一次大戦
2 统帅権の内実の変容
3 宣戦布告なき戦争
4 対米英兰戦争へ
おわりに
第6章 大政翼賛会の成立から対英米开戦まで
はじめに
1 欧州情势の激変と近卫新体制の始动
2 国策决定の新方式と非决定の内実
3 「革新」派の论理と大政翼賛会の成立
4 叁国同盟の调印と自主的决定の确保
5 国际関係のなかの日米交渉
第7章 日本军の武装解除についての一考察
はじめに
1 武装解除をめぐる攻防
2 昭和天皇と辽东还附の詔勅
3 アメリカのジレンマ
4 実际の武装解除过程
おわりに
第8章 「戦场」と「焼け跡」のあいだ
あとがき
事项索引
人名索引
初出一覧
関连情报
あとがきたちよみ (けいそうビブリオフィル 2019年10月21日)
书评:
呉座勇一 評 (『朝日新聞』 2020年1月11日)
井上寿一 (学習院大学教授) 評「気鋭の近代史研究者 陰謀史観ギリギリの提起」 (『週刊エコノミスト』 2020年1月7日号)
吉田裕 評「政軍関係の変遷を明らかに」 (『日本経済新聞』 2019年12月14日)
山田朗 (明治大学教授) 評 (『しんぶん赤旗日曜版』 2019年12月8日)
讲座:
天皇と军队の近代史 - 軍人勅諭の踏み破り方と叛乱?内乱をめぐる裁判の行方 (朝日カルチャーセンター 2020年6月11日)
刊行记念イベント:
『天皇と军队の近代史』刊行記念 加藤陽子さんトークイベント「軍人勅諭の踏み破り方~「20世紀帝国」日本の国体と神話」 (ジュンク堂書店池袋本店 2019年10月22日)
刊行记念フェア: