Schools and Schooling in Asia Teacher evaluation policies and practices in Japan How performativity works in schools
近年、より良い教育成果を保証するためには教師の質を測定し、向上することが重要であるという理解とともに、教員評価に対する関心が世界的に高まっている。たとえば、NCLB法 (No Child Left Behind Act) 制定以降のアメリカは、結果に基づくアカウンタビリティと、教育の成果を向上させるための手段としての教員評価への関心が合流を見た好例である。前オバマ政権が採用した「頂点への競争 (Race to the Top)」の財政スキームとNCLB法の免除手続きによって、テストスコアが教師と授業について何を明らかにし得るのかが学術的に確立されていないのにも関わらず、多くの州で標準化されたテストで測定される子どもたちの学力による教員評価が実施された。
日本では2000年前后から、教师の资质?能力や业绩への関心が高まり、教育委员会による「新しい教员评価」の导入が始まった。その背景には、いじめ、不登校、学力低下など教育诸课题の深刻化や「指导力不足教员」问题が注目を集めたことに加え、职务?职责?勤务実绩を反映した成果主义的给与制度への移行もあった。现在、ほぼすべての公立学校教员を対象に実施されている「新しい教员评価」では、教师一人ひとりが职务に関する目标を组织目标に基づいて设定し、职务に取り组み、年度末にその成果を自己评価したうえで校长等の评価者と面谈を行う「目标管理」のサイクルが组み込まれている点が、かつての「勤务评定」とは异なる特徴である。
日本の教員評価は、今のところアメリカのように学力テスト結果が重視される制度ではないが、教師たちはこれまでとは異なるやり方で自分の業績や能力を説明しなければならなくなっていることは確かである。本書において著者は、この新たなアカウンタビリティ (accountabilities) の性質と影響を解明することを目指した。
日本の教育は、海外の研究者や政策決定者の目にはしばしば成功事例として映っている。特に日本の教師教育については、授業研究や初任者教育 (研修) に対する評価がきわめて高い。その一方で、日本の教育は学習指導要領や教科書検定を通じた国家的統制が強く、教師が専門的な裁量を発揮する余地が少ないとも指摘されてきた。近年の教育制度の分権化改革や市場原理の導入によって、この国家統制が弱まっているか、教師の専門的自律性にどんな影響を与えているかは重要な研究課題だが、著者は必ずしも楽観視できないと思う。本書で、その一端を明らかにしているように、組織的目標や国家的な教育改革からの要求を内面化して実行することを強いられ、自己の専門的な価値観や信念との間の板挟みに苦しんでいる教師たちが存在している。教師が「教師であること」の意味を強く動揺させられている、この過程において教員評価は看過できない役割を果たしている。
(紹介文執筆者: 教育学研究科?教育学部 教授 勝野 正章 / 2017)
本の目次
2. New Teacher Evaluation Policies
3. Theories of Teacher Evaluation and Performativity
4. Views on New Teacher Evaluation Policies
5. The Enactment of the New Teacher Evaluation Policies
6. Conclusion