市场って何だろう 自立と依存の経済学
人はひとりでは生きられない。自分は一匹狼だと思っている人でも、あるいは引きこもりがちの人も、何かを食べて生きている。その食べ物のほとんどは、いろいろな人が作り、运んだものだ。自给自足を标榜する人ですら、ひとりで家を建て、锹や锄を作った人はまずいないであろう。私たちは他の人と関わりあいながら生きているのである。
もちろん、そのなかには亲と子どもの縁のように切っても切れない関わりあいもあるし、会社の同僚といったもう少し缓いものもあるであろう。いずれも颜の见えるつながりである。
逆に颜の见えないつながりもある。现代社会では、私たちは市场を通じて世界中の人とつながっている。あなたが买った靴に使われているゴムはインドネシアで採れたものかもしれない。そのゴムを採集した人はそれとは知らずにあなたとつながっているわけだ。そのゴムを使い作られた靴は米国でも売られ、大统领も履いているかもしれない。
颜の见える関係から颜の见えない関係まで、様々なつながりを読み解く学问こそ、経済学だ。つながり方には様々なものがある。力づくで相手から夺う社会、それを防ぎつつ、颜の见えるつながりを中心に据える社会、そして颜の见えないつながりが中心となる社会。そういった社会を考えていきたい。
僕が「障害と経済」というプロジェクトに関わっていることもあって、障害問題がそこここで取り上げられている。障害は社会の歪 (ひず) みを映し出す鏡のようなものである。社会に不具合があると、真っ先に被害を被るのが「障害者」と呼ばれる人々だからだ。例えば、大震災のとき、車椅子利用者はエレベータが止まったことによって、移動が健常者以上に困難になってしまった。知的障害者たちは避難所で迷惑がられて避難所を転々とせざるを得なかった。
障害者の问题を吟味していくことで、社会の姿が见えてくる。とくに市场の问题を考えるとき、障害者の视点は欠かせないものとなる。本书において障害者が直面する问题がそこここで取り上げられているのもその辺りに理由がある。
もちろん、生きづらさや息苦しさを感じているのは障害者だけではないだろう。子供からエリートビジネスパーソンまで何らかの形で社会に自分を合わせて生きる过程で生きづらさ?息苦しさを感じることもあるだろう。
その生きづらさ?息苦しさは、もしかしたらあなたに必要な市场が欠けているせいかもしれない。市场の欠如は选択肢の欠如でもあるからだ。
さあ、あなたのための市场を探しにいこう。なければ创ればいい。まずはいっしょに探検だ。いざ、市场の旅へ!
(紹介文執筆者: 経済学研究科?経済学部 教授 松井 彰彦 / 2018)
本の目次
第1章 共同体と市場
第2章 広がる市場――グローバル市場
第3章 政府も市場のプレイヤー
第4章 市場の失敗を克服する
第5章 市場を守る
第二部 みんなのための市场
第6章 「ふつう」の人のための市場
第7章 市場は差別を助長するか
第8章 自立と市場
第9章 みんなを輝かせる市場
関连情报
市場という発明 熊谷 晋一郎 評 (2018年8月6日 ちくまweb)
慶應大教授 経済学者 坂井豊貴 評 (2018年8月19日 読売新聞)