変容する华南と华人ネットワークの现在
本書は科学研究費補助金 基盤 (C)「華南地域社会の歴史的淵源と現在」(2007年度~08年度) と同 基盤 (B)「北東アジアから東南アジアを結ぶ華人ネットワークについての研究」 (2009年度~11年度) の成果をとりまとめた論文集である。
編者3名は1980年代半ばにはお互いのことを知っており、1988年から開催された広東研究会 (塩出が主催) に参加した。共同研究を始めたのは、日本における中国研究が北方中心であるという3名の思いからであった。東北地域および、北京?天津を中心とする華北地域、上海を中心とする華東地域などについては、地域名を冠する著作がある。しかしながら、華南については重厚な実証研究があるものの、華南研究というくくりはそれほど明確になっていなかったように思えた。
最初のプロジェクトは编者3名が中心となり、日本における华南研究の重要性を强调した。当该プロジェクトは华南地域を単纯和ではなく、地域的な文脉のなかで有机的にとらえようとした。现在进行形で华南地域の一体化は进んでいたが、当该プロジェクトは现状にのみ関心を持つのではなく、その歴史的渊源をさぐることをつよく意识した。
后続のプロジェクトは、华南をより広い地域的文脉のなかにおいて理解しようとした。具体的なきっかけは、日本华侨华人学会の特别研究会で、2008年に函馆の中华会馆を访问したことであった。长崎を経由して函馆の地まで华南のネットワークが歴史的に延伸していたことを确认した。同时に、ロシア极东连邦総合大学函馆校の存在や、案内标识のロシア语併记を见て、函馆という土地で华南のネットワークが他の北东アジアのネットワークと出会う可能性を目のあたりにした。
とはいうものの、华南研究者主体のプロジェクトで、どこまで「北东アジアから东南アジアまで」を视野に入れられるかは冒険であった。驹场の学术ネットワークを活かし、后続プロジェクトには、东南アジア研究者のほかに、ロシア研究者や北海道华侨研究者、さらに琉球华侨の研究者にも参加してもらった。また、プロジェクトが仲间内の议论に终わらないように、海外の研究者との交流に力を入れた。
本书はこうしたふたつのプロジェクトの研究成果を世に问うものであり、现段阶での华南研究の日本におけるひとつの到达点をあらわすものである。
本书の最大の特徴は、华南という地域を関係性においてとらえたことである。ロシア极东、アラスカまでの地域をとりあげたことで、华南のネットワークがより多様であることを指摘している。一见関连性の薄い「北东アジアから东南アジアまで」であるが、歴史的には戦前、南洋や旧満州において现実性のあった组み合わせであった。
なお、本书は华南研究の最新动向を提供することを目指した论文集であるが、同时に、华南研究の今后の発展のために、华南という地域に兴味を持った学生が、卒业论文や修士论文を作成する际に役立てられるように编集を工夫した。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 谷垣 真理子 / 2017)
本の目次
●第1部 华南地域论
返還後の香港 -- 中国内地との関係に注目して (谷垣真理子)
中国の海洋意識が大陸文化と遭遇するとき -- 閩南人の海洋発展を事例として (荘 国土 / 杉谷幸太 訳)
香港とマカオ、珠江デルタにおける地域協力 (陳 広漢 / 崔 学松 訳)
華南研究 -- 歴史人類学の実践について (程 美宝 / 土肥 歩 訳)
江西と東南アジア -- 真空教と帰国華僑を中心に (飯島典子)
●第2部 北东アジアを舞台にしたネットワーク
コンブの旅とコンブ革命 -- ロシア極東、日本列島、中華世界 (神長英輔)
樺太華僑史試論 (小川正樹)
歴史認識のネットワーク化へ -- 北海道~北東アジア~アラスカ先住民の生存の三〇〇年 (坂田美奈子)
北東アジアにおけるエスペラント運動と国際連帯活動 (崔 学松)
中日韓安全保障戦略協力と北東アジア安全保障体制の構成 (魏 志江)
●第3部 変容する広东
広東 -- 急速な発展における挑戦と矛盾 (鄭 宇碩 / 石塚洋介 訳)
珠江デルタの地域一体化 -- 経済社会の改革と発展を中心にして (毛 艶華、楊本 建 / 伊藤 博 訳)
高等教育における香港と中国の一体化 -- 香港の大学による中国内地学生の受け入れに着目して (日野みどり)
三灶島の人々 -- 日本、台湾、沖縄の人々との邂逅 (和仁廉夫)
分断される琉球華僑社会 -- 第二次大戦から沖縄返還にかけての時期を中心に (八尾祥平)
●第4部 人がつなぐネットワーク
地域的キリスト者家族からグローバル家族への展開 -- 華南の関?容?張三家族の場合 (容 應 萸)
海南島における海外交通と回族の形成 (廖 大珂 / 小池 求 訳)
マカエンセという人々 --「中国の少数民族」もしくは「マカオ人」として (内藤理佳)
心の地図を描く -- 疾走する周縁への旅:マカオ、そして珠海 (塩出浩和)
あとがき
索引
関连情报
『華僑華人研究』第11号 (2014年) に松村智雄氏が書評論文を掲載