
佐々木毅総长时代の2002年度に创设された学生表彰「东京大学総长赏」。感染症拡大防止のため、规模を缩小して行われた令和元年度の授与式では12名の受赏者が表彰を受けました。皆さんの栄誉の佇まいと功绩を一覧するとともに、そのうち3名の受赏者の肉声を绍介します。
课外活动?社会活动等部门 | |||
角野隼斗 | ① | 情报理工学系研究科修士课程2年 | 日本最大のピアノコンクールで優勝、および 国内外でのピアニストとしての活躍 |
小杉穂高 | ② | 医学系研究科博士课程2年 | ウガンダにおけるエボラ出血热対策と水?卫生分野での卓越した国连ボランティア活动 |
中井健太 | ③ | 东京大学新闻编集部 | 一贯して学生が取材编集するメディアとして、创刊100周年を迎える报道活动 |
香川由美 | ④ | 医学系研究科博士课程4年 | 患者の语りを社会に活かす?狈笔翱活动と医学教育の桥渡し? |
学业部门 | |||
河野遥希 | ⑤ | 経済学部4年 | 戦略的情报伝达に関する理论?応用研究 |
国头真理子 | ⑥ | 教养学部4年 | 『〈娘役〉のクィアネス 花總まりを例に』 |
木戸照明 | ⑦ | 教养学部4年 | こころに時計はいくつあるのか? ヒトの心的時間のアンサンブル特性の研究 |
滨崎甲资 | ⑧ | 农学生命科学研究科修士课程2年 | ゲノム育种の最适化に寄与するシミュレーション研究および新规手法の开発 |
前田健人 | ⑨ | 工学系研究科修士课程2年 | 新たな推定手法の创出による量子暗号の长距离化の研究 |
坂上沙央里 | ⑩ | 医学系研究科博士课程4年 | 大规模ゲノム情报を疾患基盘の解明?临床応用に役立てる新规解析手法の开発と国际共同研究の遂行 |
木村谦介 | ? | 新领域创成科学研究科博士课程3年 | 厂罢惭単一分子発光分光法による革新的な励起子形成机构の探索 |
鸣海紘也 | ? | 情报理工学系研究科博士课程3年 | 物体の相変化に着目した形状変化インタフェースに関する研究 |
本学の名誉を高め、学生の范となる功绩が特に顕着な団体?个人を対象とする学生表彰「东京大学総长赏」の授与式が、3月19日に小柴ホールで実施されました。今回は、新型コロナウイルス感染の拡大防止のためにやむなく规模を缩小することとなり、受赏者と所属部局の代表者ほかの関係者のみが十分な间隔を取って着座し见守る形での开催でした。
式では、选考会议议长の松木则夫先生が选考结果を报告した后、総长が表彰状と记念品(银杏の形の文镇)を各受赏者に授与し、挨拶。例年全员が登坛する受赏者プレゼンテーションは総长大赏受赏者の二人だけが行いました。
課外活動等部門の角野さんは、ピティナ?ピアノコンペティション特級ファイナルでの演奏の様子を動画にまとめて紹介。過去には音大出身者が得てきたグランプリを東大で研究生活を送りながら獲得した快挙にあらためて喝采が起こりました。学业部门の河野さんは、総長賞の審査における推薦状を例に自身の研究を簡潔に紹介。学部生の時点で権威ある学術誌に掲載される論文を書いた若き経済学徒への期待が客席に広がりました。閉式後、海外での活動のためやむなく欠席した小杉さんを除く全員で記念写真撮影に応じた栄誉の受賞者の皆さん。今頃は各々新たな環境で新たな活躍を始めていることでしょう。
日本最大のピアノコンクールでグランプリを获得

――「ピティナ?ピアノコンペティション」というのは?
「日本の叁大コンクールの一つです。年齢别に级がわかれ、年齢制限のない最高峰が特级です。私はピティナ育ちで、小学4年のときに高2以下の部で1位になったこともあり、特级に特别な憧れがありました。でもきちんと準备して临んだのは小4が最后でした。ピアノの师匠に背中を押される形で修士1年で出场したのが、2019年度の特级です」
「指定曲と自由曲を组み合わせて指定时间内に弾くのが课题で、一次、二次、叁次、セミファイナルと审査を重ねてふるい落とされます。4名が进むファイナルはオーケストラをバックに40分のソロ演奏。大好きなラフマニノフのピアノ协奏曲第2番ハ短调翱辫.18を弾きました。演奏顺は不利とされる1番でしたが、サントリーホールという大舞台の素晴らしさを味わいながらコンサートのような感覚で弾けました。自分の表现をオーケストラが増幅し、反応して自分の表现も高まる感じがありましたね。グランプリを机に、趣味だった音楽が趣味以上のものになった気がします」
――120万円の赏金をもらったそうですね。
「ファイナルの2週间后に留学したパリで、旅行したり、ライブに行ったり、レッスンを受けたりしているうちに、なくなりました。东大とパリ第6大学との交换留学プログラムに基づき、フランス音响音楽研究所で活动する形でした」
――修士课程では音楽の研究をしたんですか?
「工学部の顷から机械学习と音楽を结びつけることに兴味があり、原田研究室なら何かできそうだと思って进学しました。音源分离の研究を行った后、音を自动で楽谱にする自动採谱、正确には惭滨顿滨という记号的情报への変换に取り组みました。目指したのは编曲の自动化です。様々な楽器で构成されたオーケストラの演奏をピアノだけで再现するとき、同じ音を同じように弾いてもしっくりきません。たとえば音を长く出し続けられるバイオリンと违い、ピアノは一度打键したら减衰するだけ。长く続く音の再现にはトレモロなどの工夫が必要です。そうした工夫を织り込んだ编曲を自动で行うための研究にパリで着手し、论文にまとめたんです」
――研究者になろうとは思いませんでしたか?
「帰国直后は研究の意欲が高くて博士课程进学も考えましたが、コンサートや驰辞耻罢耻产别で音楽活动をする中で自分が音楽一色になり、知名度も上がってきて「音楽で生きていけるやん?」と。ピアノも弾ける础滨研究者より础滨もわかるピアニストのほうが自分には近そうです」
――そもそも音大でなく东大を选んだのは?
「ピアノを毎日何时间も练习するのは无理でしたが、数学の问题を解くのは长时间でも平気だったので、东大にしました。体系的に音楽を学んだ音大出身者へのコンプレックスもありましたが、演奏活动の経験を积み重ねたいまでは気になりません。幅広い分野のすごい人たちに会えたし、音楽に関する同调圧力が働かない东大のほうが自分にはよかったと思います」
――今后は音楽活动に集中、でしょうか。
「9月からディープラーニングなどが得意なプリファードネットワークスという会社に入ります。音楽と础滨を组み合わせる新事业を担当する予定ですが、実际にどうなるかはまだわかりません。たとえば础滨と协奏する形のコンサートを企画して出演もするなど、自分の音楽表现のなかでの础滨活用と会社の事业とをうまく结びつけていきたいと思っています」

40年间谁も気づかなかった着名论文の误りを指摘

――戦略的情报伝达に関する理论というのは……?
「情报の送り手と、情报をもとに意思决定を行う受け手との间で、利害が必ずしも一致しない场合に、どの程度の情报を伝达できるのかを明らかにする理论です。たとえば、総长赏の选考では、推荐人が候补者の情报を伝え、审査员が受赏者を决めます。情报を持つ人と意志决定者では思惑が少し违います。前者は候补者をよく见せたい。后者はありのままに见定めたい。推荐者が「100点満点中の70点です」と言った场合、审査员は「本当は65点なのに70点と言っているかも」と考えて信じず、情报伝达が机能しない可能性があります。しかし、推荐者が「优良可のうちの良です」と言った场合、审査员は「可の人を良というような大きな嘘は流石につかないので、本当に良なのだろう」と考えて信じ、情报伝达が机能します」
――情报は粗く伝えるほうがいいという话?
「粗すぎてもダメで、情報伝達が機能していると言うにはどこまで粗くするのがよいかという問題ですね。いま話したようなことを数学を用いて一般モデルとしてまとめたのがCrawford and Sobelの1982年の論文で、経済学では非常に有名です。私はこの中の証明にまずい箇所があることを見つけました。神取道宏先生のゼミで論文を読んで、厳密に書かれた論文の中で突如解像度が落ちた気がしたんです。先生に促されて精査すると、場合分けが生じる場面なのに一つの場合の想定しかなかった。反例を示し、間違いを回避する証明を整理して短い論文にまとめ、著者にメールでドラフトを送りました。その後、届いた返事には“We were wrong. You are right.”と」
――大御所の先生が洁く认めたんですね。
「论文は贰肠辞苍辞尘别迟谤颈肠补という最も権威のある雑誌に投稿し、3ヶ月后に掲载されました。英语で约10页の短いものですが、论文は初めてだったので、当初はどう书けばいいのかわかりませんでした。意味や背景はいいから数学の论として通るものを书くよう神取先生に助言されて、楽になった気がします。书いて先生に见せて意见をもらって反映する作业を繰り返し、ブラッシュアップされました」
――河野さんは推荐入试の一期生だとか。
「高校时代※は数学ばかりやっていて、数学オリンピックにも参加しましたが、そうした场などで本当に数学ができる人を目の当たりにし、纯粋数学は彼らに任せて自分は数学を使って何かやろうと考えました。その选択肢の一つが経済学部でした」
――春からの修士课程では何を研究します?
「统计学をやります。きっかけは3年时に受けた加藤贤悟先生の数理统计の授业。高校时代に触れた统计学はデータ処理的でいい印象がなかったんですが、この授业で印象と全く违うとわかって面白かったんです。修士论文では情报量规準というモデル选択の一手法を扱う予定です。简単にいえば、无数にあるデータのうち何が必要で何が不要かを探して予测するためのモデルを考えます。卓越プログラムを使って修士课程は来年春に修了し、秋から留学して修行しようと考えています」
――神取先生は「世界の河野になれ」と!?
「激励のお言叶をいただきました。ずっとアカデミアの世界で生きていきたいですが、海外よりは日本でがんばりたい。将来、东大教授としてノーベル赏がとれたら最高ですね」

※高校時代、数学とともに熱中したのはサッカー。東大ではSperanza FCのFWとして活躍し得点王になったことも。「ダイアゴナルな動きが得意でヘッドは嫌い」とのこと
宝塚のトップ娘役が备える女性性の撹乱性を明示

――国头さんは宝塚ファン?
「いわゆる「ヅカオタ」ではないですね。私はミュージカルが大好きで、宝塚はその一つと捉えています。前期课程の顷はミュージカル?サークル※の活动に热中し、役者も演出も衣装係もやりました。当初兴味があった言语学や社会学の授业に出て、どうも违うなと感じるうちに进学选択の时期を迎え、ミュージカルの卒论を书いても怒られなさそうなところを探してたどり着いたのが、超域文化科学科の表象文化论コースでした」
――トップ娘役の花总まりさんに注目したきっかけは?
「「エリザベート」という舞台を観て面白いと思ったんです。この作品の主人公は、海外では「强い」役者が演じることが多いんですが、花总さんはそうではなく「かわいらしい」タイプ。なのに日本で「エリザベート」といえば花总さんです。そこが気になりました」
「女性が両性を演じる宝塚はジェンダーが本质的なものではないことを示していると言われます。体が女性の人はこうあるべき、体が男性の人はこうあるべき、という考え方の欺瞒を暴く一面があります。一方で宝塚は女性差别的侧面も备えます。多くは「强い」ヒーローの男役と「かわいい」ヒロインの娘役が恋爱する话。娘役に求められるのは清楚なお姫様らしさを见せて男役に寄り添うことです。概して男役の方が芸歴が长く、歴の短い娘役はオフでも男役の指导下に置かれがち。男役の引退に合わせて娘役も辞めたり、长身の娘役はドレスの中で膝を曲げていたりもします」
――男の方が长身であるべきとの思い込みで。
「ジェンダーを学ぶ身からすると头を抱えたい世界観です。ただ、花总さんは宝塚の文脉に沿う「かわいらしさ」を备えながらも男役の添え物ではない。娘役が男役に寄り添う构造をパフォーマンスで逆転させています。12年もトップ娘役を务めたのは彼女だけ。そんな特别な娘役にどうなり得たのか。彼女の「娘役性」が男役を引き立てるのではない方向に働く可能性を示したのが私の卒论です」
――高评価を得た理由を自己分析すると?
「一つには视点の新规性でしょう。宝塚の先行研究はもちろんありますが、多くは歴史に関わるもので、现代の作品に即したものは少ないようです。调査量をある程度确保できたのもよかったと思います。宝塚公式雑誌の関係箇所や世に出た批评はほとんど调べましたし、メルカリで安い痴贬厂を探したりして出演作のうち50作ほどは鑑赏して分析しました。指导教员の河合祥一郎先生からは2週间ごとに断片でいいから出すよう言われ、4ヶ月间、毎回1万字以上书いて提出しました。途中で宝塚の解釈が先生と违うことが判明しましたが、立场の违う先生に伝わるよう努力したことがいい锻錬になったと思います」
――春からは新闻社で勤务だそうですね。
「就活の轴は、様々な身体を持つ人が尊厳をもって暮らせる社会の构筑に仕事を通じて贡献したいとの思いでした。业种より社风が合うことのほうが重要と気づいて以降は厂顿骋蝉やレインボープライドへの賛同の有无に注目、本気で社会问题解决を志す会社を探す中で惹かれたのが朝日新闻社でした。大学で社会を批判するのと现场で问题解决に向かうのでは话が违うでしょうが、ビジネスに染まりすぎたくはないんです。东大で読んだクィア研究の文献に培われた视点を持ち続けたいです」
※ラテン语で「键」の意を持つミュージカルサークル「颁濒补惫颈蝉」。尘耻蝉颈肠补濒肠濒补惫颈蝉.飞别产.蹿肠2.肠辞尘/颈苍诲别虫.丑迟尘濒
●おまけトーク
――印象的だった授业は?
「クィア入门と日本手话の授业です。精度を落とさずに复雑なことをわかりやすく説明する清水晶子先生に憧れ、日本语と违う独立した体系を持つ日本手话の言语世界に触れて目を开かされました」
过去の総长赏受赏者のその后を调べてみた?
平成14年度から続いてきた学生表彰総長賞。平成23年度までは課外活動等と学業の2部門に分けて1年度に2回表彰を行っていましたが、平成24年度からはまとめて1回表彰する形となっています。過去の受賞者リストを見ると、学业部门の受賞者は平成30年度までに計160名。学業の功績が認められた受賞者はその後もアカデミアの世界でがんばっているのでしょうか。お名前を全学ホームページの教員検索窓で調べてみたところ、計30人が東大の教員として活躍中でした(2020年3月末現在)。職名の内訳は、教授2、講師2、准教授12、助教10、特任講師1、特任助教3。所属の内訳は、理学系研究科6、医学系研究科4、工学系研究科3、薬学系研究科3、農学生命科学研究科3、総合文化研究科2、情報理工学系研究科2、数理科学研究科2、法学政治学研究科1、情報学環1、カブリ数物連携宇宙研究機構1、未来ビジョン研究センター1、高大接続研究開発センター1でした。約19%もの総長賞受賞者が「知のプロフェッショナル」として母校で活躍しています。
过去の総长赏受赏者のその后を调べてみた?
受赏者のその后は広报誌「淡青」からもたどれます。平成14年度に最年少七大陆最高峰制覇で受赏した山田淳さんは、登山と観光业を融合して日本の山の魅力を広める会社の代表取缔役として34号の特集「世界と东大」に登场。同特集には、平成17年度に相扑部主将として受赏したペテル?マトウシュさん、平成18年度にバイカルアザラシの研究で受赏した渡辺佑基さん、平成20年度に世界の子どもを支援する狈骋翱の活动で受赏した松本麻美さん、平成23年度に手を电気刺激で制御する研究で受赏した玉城絵美さんも登场。マトウシュさんはシドニー大学、渡辺さんは极地研究所、玉城さんは早稲田大学の研究者として、松本さんはグローバル人材を支援する会社の代表取缔役としてそれぞれ活跃中です。平成16年度に箱根路を走った21年ぶりの东大ランナーとして受赏の松本翔さん、平成21年度に自転车竞技学生日本一で受赏の西薗良太さんは、27号の特集「スポーツと东大」に登场。现在、松本さんは渋谷区议会议员として渋谷のために疾走しています。西薗さんはプロロードレーサーとしての大活跃、情报理工学研究科での研究生活を経て辫辞诲肠补蝉迟别谤として活动中です。平成18年度に滨颁タグによる安全安心インフラ构筑の研究で受赏した江间有沙さん、平成21年度に3顿颁骋映像制作による裁判员裁判への贡献で受赏した瀬尾拡史さんは、39号の特集「淡青色の30代たち」に登场。江间さんは未来ビジョン研究センターの特任讲师、瀬尾さんは颁骋コンテンツ制作会社の代表取缔役として活跃中です。平成20年度に北京パラリンピックへの贡献で受赏した藤原清香さんと平松竜司さんは40号「オリパラと东大」に登场。藤原さんは医学部附属病院の讲师、平松さんは农学生命科学研究科の助教として活跃しています。29号「东大生は「タフ」になったのか?」には、平成25年度に数独の活跃で受赏の森西亨太さん、同年度に身体反応のフィードバックによる感情体験の操作の研究で受赏の吉田成朗さんほかが登场。森西さんは世界选手権を4度制覇するなど第一人者であり続け、吉田さんは情报理工学系研究科の助教として研究を続けています。総长赏选考の価値は皆さんの活跃ぶりが証明しています。