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东京大学教员の着作を着者自らが语る広场

薄いピンクの表紙

书籍名

ロシア语文学のミノタウロスたち 幸福なモスクワ

着者名

アンドレイ?プラトーノフ (著)、 池田 嘉郎 (訳)

判型など

252ページ、四六判

言语

日本语

発行年月日

2023年5月30日

ISBN コード

9784560093443

出版社

白水社

出版社鲍搁尝

学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)

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『幸福なモスクワ』は、ソ連の作家アンドレイ?プラトーノフ (1899-1951年) の長編小説です。1933年から1936年にかけて書かれましたが、作家の生前にはごく一部が発表されただけでした。ロシア革命後の混乱によって孤児となった少女が主人公です。彼女は社会主義国家の栄えある首都にちなみ、モスクワというあたらしい名前をもらいます。「ふつうのしあわせ」を得たいというのが彼女の夢でした。そのために彼女は自分のエゴイズムを克服して、周りの人々や周りの世界とひとつになることを願います。はじめ彼女は自然とひとつになることを求めてパラシュート士になります。あまりに奔放な活躍ぶりのために航空隊にはいられなくなりますが、優れた能力をもっていたので医者や技師たち若きエリートの仲間入りを果たします。同年代の仲間に囲まれながら彼女は、他者との一体化を求めて恋愛遍歴を重ねます。しかし、結局彼女は、性愛では他者との一体化は得られない、「愛はコムニズムにはならない」という認識にたどりつきます。生きるべき場所を探し求めるモスクワは、地下鉄工事の作業員に志願しますが、さらなる苦難に直面します。しかし、首都改造によって日々変貌を遂げる世界都市モスクワと同じように、彼女もまた、心身に多くの痛手を負いつつも、その心臓は力強く脈動を続けます。彼女はけっして幸福の探求を放棄することはないでしょう。
 
プラトーノフは20世紀ロシアを代表する作家の一人ですが、スターリン体制の規範から大きくはみだす作風のゆえに、生前は何度も批判され、作品を発表する機会にもあまり恵まれませんでした。彼の死後、ソ連の検閲体制が徐々に緩和されるにつれて、未刊行の作品が世に出て、再評価が進みました。それでも、『幸福なモスクワ』は原稿の存在自体が知られる時期が遅く、ソ連最後の年である1991年にようやく雑誌に発表されました。私は2013年にこの小説を読んで、社会主義ロシアの曠野を彷徨する主人公に魅了されました。2014年以来ゆっくりと翻訳を進め、ようやく2023年に活字にすることができました。『幸福なモスクワ』が日本语に訳されるのは私のものが初めてです。巻末には長文の解説「名無しの少女の転生」も書きました。プラトーノフの生涯について、ロシアで2011年に出た伝記などを参照しつつまとめ、さらに『幸福なモスクワ』の解説を行なったものです。作品解説では「他者との一体化」「性愛とその克服」「スターリンの形象」という諸点についてとくに詳細に論じました。ぜひ本書を手にとって、独特の生命力に満ちたプラトーノフの文学世界に親しんでください。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 池田 嘉郎 / 2024)

関连情报

书籍绍介:
『読書アンケート 2023』で識者が選んだ本 (みすず書房 2024年2月22日)

 
沼野充義 評「海外文学の森へ」 (朝日新聞夕刊 2023年7月18日)
 
関连记事:
研究ブログ「私はなぜプラトーノフ『幸福なモスクワ』を訳したのか」 (池田嘉郎|researchmap 2023年7月3日)


関连讲座:
池田嘉郎先生 (西洋史学)「幸福なモスクワ」 (東京大学次世代文化交流学部門 2013年6月6日)

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