岩波講座 世界歴史 第17巻 近代アジアの动态 19世纪
近代アジアの歴史は、一种の决まり文句で説明されてきました。老大国の保守的な姿势、停滞した社会情势、欧米诸国の军事的优位とアジアの植民地化などなどです。そして、ときには、アジアの中で日本のみが进取の気象に富み、いち早く近代化を成し遂げたという指摘がなされます。
しかし、このような見方は、近代アジア各地の社会が持っていたダイナミクスを見逃しています。私が編集に加わった『岩波講座 世界歴史』第17巻は「近代アジアの动态」と題して、最近の研究を踏まえた新しい歴史像を提供することを試みました。
まず、この『岩波講座 世界歴史』について紹介しましょう。実は、この『岩波講座 世界歴史』全24巻は、三代目です。最初の『岩波講座 世界歴史』は1969~1971年に刊行され、第2シリーズは20世紀末に編集?刊行されました。それぞれ当時までの研究成果にもとづいて、広い読者に向けて世界史について論じたものです。今回の第3シリーズは、21世紀に入ってからの研究動向と厳しさをます世界情勢を踏まえて、新たな視点から世界史を把握しようとしました。
19世纪のアジアを全体として扱う『岩波講座 世界歴史』第17巻は、オスマン帝国史の専門家である林佳世子教授と私が、編集の責任者となりました。この巻では、停滞と後進という近代アジアのステレオタイプを払拭し、アジア各地で生き生きと歴史が動く様相を提示したいと考えました。そして、当時の人々の奮闘と苦悩を少しでも理解することを重視しました。この巻は、本文11章とコラム5本から成っています。それぞれの執筆者は、多彩な近代アジア社会の動向を印象的に叙述しています。本当は、もっと取り上げたい事柄は多かったのですが、ページ数の制約がありました。
私は、総論として「19世纪アジアの動態と変容」を執筆し、次の点について指摘しました。(a)19世纪前半に存在した各地の王朝は、決して無能な停滞した存在ではなく真剣に自己改革を試みていたこと、(b)イギリスが掲げた自由貿易の理念のもとで、アジアの王権や商人も経済的利益を確保したこと、(c)アジア各地で新しい宗教的な啓示が現れ、変動する社会における人々の救済をめざしたこと、(d)19世纪半ば頃から欧米で急速に進んだ軍事技术の革新の結果、新しい軍事的学知を使いこなせる社会への転換が促されたこと。
このような諸点への着目によって、19世纪アジア各地には個性的な歴史の動態があり、しかもアジアを通じて同時代的な共振の現象もみられることを述べました。たぶん、19世纪のアジア全域を概観しようとした文章は、世界的にも珍しい試みだったと思います。そして、19世纪の日本が直面していた課題とそれに対する試行錯誤は他のアジア諸地域とも大いに共通していたことも、ある程度示すことができたと考えています。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 吉澤 誠一郎 / 2023)
本の目次
一九世纪アジアの动态と変容&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;吉泽诚一郎
はじめに
一、国家统治の再编
二、海域秩序の変动
叁、宗教运动の展开
四、一九世纪军事革命の衝撃
おわりに
问题群|滨苍辩耻颈谤测
オスマン帝国の諸改革……秋葉 淳
一、改革の诸前提
二、タンズィマートの统治方法(一八叁九―七六年)
叁、アブデュルハミト二世の时代(一八七六―一九〇八年)
四、改革の帰结
一九世纪インドにおける植民地支配――司法と教育&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;井坂理穂
はじめに
一、司法制度と在地社会
二、教育制度と在地社会
结びにかえて
朝鲜の経済と社会変动――财政と市场、商人に注目して&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;石川亮太
はじめに
一、一九世纪の経済基调――「一九世纪の危机」论をめぐって
二、开港以前の财政と市场
叁、开港と国际市场への参入
四、开港后の财政と商业
五、日清戦争―大韩帝国期への展望
おわりに
焦点|贵辞肠耻蝉
変容する「アラブ社会」&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;黒木英充
はじめに
一、オスマン帝国统治机构の近代化と宗派间対立への国际介入
二、人の移动とアラビア语公共圏
おわりに
イランの一九世纪&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;阿部尚史
はじめに
一、カージャール朝の成立と统治构造
二、列强?近隣诸国との関係
叁、地方社会の変容
四、イランの「近代化改革」とナショナリズム
おわりに――イラン立宪革命への道
ロシアと中央アジア&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;宇山智彦
一、ロシア帝国の改革とアジア系少数民族统治
二、ロシア帝国の中央アジア进出?征服と现地诸势力
叁、ロシア帝国の中央アジア统治制度とイスラーム
四、中央アジア统治の欠陥と现地人の适応
五、帝国―植民地関係の変容と知识人の改革运动
六、帝国崩壊と国民国家形成の长い道のり
一九世纪の清?チベット関係――境界地域の视点から&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;小林亮介
はじめに
一、ダライ?ラマ政権と清の境界地域
二、一九世纪のアムドとカム
叁、二〇世纪初头のアムドとカム
おわりに
近代シャムにおける王権と社会&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;小泉顺子
はじめに――一九世纪シャムへのアプローチの変容
一、バウリング条约缔结と経済的影响
二、领域国家の形成と王権
おわりに――统治制度の整备と「タイ」臣民の形成
清朝の開港の歴史的位相……村上 衛
はじめに
一、清朝の限界
二、开港场システムの成立
叁、清朝の限界克服とその背景
四、开港と内地の构造
おわりに
日本経済発展の始动&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;谷本雅之
はじめに
一、近世日本経済の动态と达成
二、経済発展の始动と复层性の源流
叁、「富国强兵」と政府の役割
四、対外経済関係の视点――小括に代えて
コラム|颁辞濒耻尘苍
环ベンガル湾世界の植民地化――ミャンマー/ビルマに焦点を当てて&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;长田纪之
カイロの預言者生誕祭からみたエジプトの近代……高橋 圭
清朝の変容とモンゴルの独立……橘 誠
ジャワにおける植民地统治の进展と社会の分裂&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;菅原由美
太平天国の「女性解放」言説をめぐって&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;仓田明子
関连情报
『岩波讲座 世界歴史』全巻构成