ワードマップ 科学技术社会学 (STS) テクノサイエンス时代を航行するために
現代社会はテクノサイエンスからできている。社会一般に対して科学技术の影響力が増大していることは、連日のニュースの中に、地球温暖化や環境破壊、遺伝子組み換えやサイバー攻撃といった形で、自然一般や特定の科学技术に関わるトピックが絶え間なく続いていることで分かる。
こうした科学技术の動態を、哲学や歴史というよりも、むしろ社会とのリアルタイムでの関わりの中で研究しようとするのが科学技术社会学 (STS Science and Technology Studies) である。こうした試みは1970年代以降欧米を中心に活発化しており、本邦でも関心が高まっている。他方この分野は社会科学全般をふくむ学際融合的な分野であり、社会学、政治学、経済学、人類学、地理学あるいは法学といった様々な分野が問題解明に関与しており、その全体像がつかみにくいのも事実である。
本書は、こうした多様な分野からなるこの領域を、自然、境界、過程、場所、秩序、未来、参加という7つのキーコンセプトで、理論と実践の両面からひも解いてゆく、画期的な試みである。これらの概念の裏には、科学技术(そしてその背景にある自然/人工という対比)をどうやって社会科学の視点から新たにとらえなおすかという絶え間ない試みがあり、それが現在この分野の多様なアプローチにつながっている。
本書では、こうした科学技术社会学 (STS) を従来の社会科学との連続性と非連続性の絡み合いとして描いている。先端的なSTSの議論では、比較的分かりやすい問題と並行して、難解な哲学的議論もあるが、それはこうした連続性/非連続性のせめぎ合いの中で生まれたものである。またこうした多様な議論は、その多くが初期STSの基本的な観点を共通して背負っている面もあり、そうした理解がないと、そのアプローチの統一性と多様性は理解しにくいのである。
本书では、本邦で蔓延する、この分野でのかなり表面的な理解を排し、その基本的概念构造から论じるものである。他方执笔者のリアルな研究现场での様子もエッセーという形で绍介されており、政治からアートをふくむ个别の分野での厂罢厂研究の在り方についても、その生き生きとした様子を探ることが可能になる。
(紹介文執筆者: 情報学環 教授 福島 真人 / 2022)
本の目次
1章 自然
1−1. カント主義
1−2. ポスト?カント主義
1−3. モノの社会学
1−4. 社会科学としてのSTS
―― コラム1 ラトゥール神話
2章 境界
2−1. 科学の境界
2−2. 協業
2−3. 再編成
―― コラム2 リンリ?りんりというけれど
3章 过程
3−1. 研究過程
3−2. 過程としての存在
3−3. イノベーション
3−4. 経済と市場
―― コラム3 科学技术の移転
―― コラム4 イノベーションの現場
4章 场所
4−1. 科学の地理学
4−2. 実験室という場所
4−3. 科学と民俗的知識
4−4. ジェンダー
―― コラム5 インドネシアの環境問題
―― コラム6 ラボラトリーの日常分析
5章 秩序
5−1. インフラ
5−2. 科学と規制
5−3. エビデンスとしての科学
5−4. 犯罪と科学
―― コラム7 農業バイオという研究トピック
―― コラム8 合成生物学ELSIの巨波の後で
6章 未来
6−1. 期待
6−2. モデル
6−3. イメージ
―― コラム9 感染症数理モデルの棲息地
7章 参加
7−1. 市民参加
7−2. 市民科学
7−3. ユーザー
―― コラム10 科学とアート?
―― コラム11 市民らしい市民
おわりに
索引
関连情报
福岛真人研究室
着者连载:
[連載] 福島真人 STS関係エッセー (ModernTimes TV 2022年)
関连记事:
[連載] 日比野 愛子「感染症モデルと社会 ―― STS (科学技术社会) への誘い」 (クラルス (新曜社) [全3回] 2020年7月)