ニュートン新书 微生物?文明の终焉?淘汰
本书の着者であるマーク?バートネスは、海洋生态学者である。私は翻訳家の神月谦一さんが和訳された原稿の监訳を行った。本书の原题は&濒诲辩耻辞;础”で邦題の『微生物?文明の终焉?淘汰』とは随分違う。今回の監訳の過程で、神月さんと私は『自然史』という仮題で原稿をやり取りしてきた。しかし、出版社の意向 (おそらくマーケティング戦略) でこの邦題となった。微生物や文明の終焉、淘汰について、語られていないわけではないが、特に「微生物」と「淘汰」はkeyではない。本のタイトルを決める権利は、出版社にあるので、それについてどうこう言うつもりはなく、かまわないのであるが、この本の内容を考えると、やはり『自然史』の方がしっくりくる。
一般に“natural history”は「博物学」ないし「博物誌」と訳されることが多い。それでも神月さんと私が「自然史」と原稿を通称したのは、「人類史」との対比として“natural history”をわざと「自然史」と訳す方がピッタリくるからであり、それは本書が「人類史」を「自然史」の中に位置づけて論じていたからだった。それは、著者であるバートネスが「はじめに」で率直に語っている。
&濒诲辩耻辞;歴史という概念を自然史と人类史に分けるのではなく、ジャレド?ダイアモンドやユヴァル?ハラリのような着作家が开拓した手法を継承して、文明史を「自然史として」捉えたいと、私は考えている。つまり、农业や医学から政治的ヒエラルキーや宗教システムに至るまで、文明とその产物が、人类の进化のなかで、どのような特定の生态系や环境から生まれたかを理解するということだ。&谤诲辩耻辞;
邦题にある微生物自体は办别测ではない。というのは、バートネスが本书で繰り返し述べている「人类の最も古い进化のパートナーは、私たちの皮肤や体内で生きている微生物であり、病気に対する防御壁や缓衝材の役割を果たしている」というアイディアが本书の核だからであり、つまり微生物が人类に「共生している」ことが办别测だからだ。海洋生态学者であるバートネスが、彼の长年の研究を通じてたどりついた信念は「地球上のすべての生物は、人类の文明も含め、进化の歴史を贯く同じ物理学的、生物学的プロセスによって発达し、支配されている」であり、そのプロセスが「シンビオジェネシス」と「阶层的自己组织化」である。
シンビオジェネシスとは、有機体が別の有機体に共生し1つの有機体になる現象だ。たとえば、真核生物の細胞の中にあるミトコンドリアは、もともと独立した生物であったが、進化の過程で「細胞内共生」した。リン?マーギュリスのこのアイディアをバートネスは、人類文明にまで拡張して議論する。本書にはもともとサブタイトルがあったが、これも邦訳では削除された。“Why a Balance Between Cooperation & Competition Is Vital to Humanity (協力と競争のバランスが人類に不可欠なわけ)”本書の本質は、むしろこのサブタイトルに集約されている。
(紹介文執筆者: 理学系研究科?理学部 教授 太田 博樹 / 2023)
本の目次
第1部 生命――私たちはどこから来たのか
第1章 协同する生命
第2章 食物连锁のなかの生命
第3章 自然を饲い驯らす
第2部 文明――私たちは何者なのか
第4章 文明の胜利と呪い
第5章 资源开発
第6章 飢饉と病気
第7章 支配惫蝉协同
第3部 运命――私たちはどこへ向かうのか
第8章 自民族中心主义という幻の宇宙
第9章 食物の保存と健康
第10章 燃える文明
第11章 不自然な自然
终 章 文明の自然史
関连情报
Mark Bertness著 A Brief Natural History of Civilization - Why a Balance Between Cooperation & Competition Is Vital to Humanity (Yale University Press刊 2020年4月21日)