现代アメリカ文学ポップコーン大盛
本书は8名のアメリカ文学研究者による共着であり、主に21世纪のアメリカ文学から様々な作家や作品やジャンルを取り上げ、现代文学の动向を明らかにすることを目指したものである。今世纪に入っても変化を続けるアメリカ社会は、文学にどのように描かれているのか、文学は社会のなかでどのような役割を果たしているのか、「书く」という行為は、どこで、どのような者が担っているのか。そもそも、文学とは文字に限定される表现なのか。文学をめぐるこうした问いを、作家や作品の绍介と読解にとどまらず、执笔者の个人的経験と物语をあわせて记述するなど、多彩なアプローチから浮かび上がらせている。
「アメリカ」を描き出そうとする作家たちの试みは、19世纪から変わることなくアメリカ文学の基盘であり続けてきた。古典アメリカ小説の続编を书こうとするベテラン作家による试みから、新进気鋭の作家がテロの时代を描く小説まで、文学から浮かび上がるアメリカの姿は、过去と现在と未来がせめぎ合う场となっている。
その一方で、今世纪という现在に的を绞り、さまざまな问题に光を当てようとする作家たちの活动もまた、アメリカ文学においては重要な役割を果たしている。新自由主义経済によって広がる格差、「ブラック?ライヴズ?マター」运动を生んだ人种差别、マジョリティがマイノリティに见せる过度な共感による物语の収夺といった问题は、ときに突き放したような皮肉、ときに露悪的な挑発として、読者の前に现れる。
今日において、文学の创作は、大学をはじめとする何らかの制度との连携を抜きには语れない。大学院创作科、大学主催のワークショップといったイベントが世界各地で开催され、小説家や诗人や翻訳家や研究者が集うハブとなっている。その现场に参加しての考察もまた、现代文学が持つ主题や形式の多様性を理解する助けになるだろう。
2010年代に大きなうねりとなった#MeToo運動をはじめとして、現代のアメリカではジェンダーについての議論が進み、あるいは保守的な反発を生みもした。そのようななかで、「男性」の自己イメージや「女性」の身体は、どのような言语表現と結びついているのか。アメリカ作家たちの試みは、日本语作家たちの活動とダイレクトに響き合っている。
一方で、ミュージシャンであるボブ?ディランがノーベル文学赏を受赏したことに见られるように、「文学」の定义を积极的に広げていこうとする动きも、今世纪の特徴のひとつである。グラフィック?ノベルという表现形式のみならず、映像というメディアによる「フィクション」を论じていくことも、文学批评において重要な分野になっていくだろう。
翻訳は、映像化とならんで二次的な創作とみなされることが多い。しかし、21世紀においては、「世界文学」という視点の登場もあり、創作における翻訳の重要性は大きな注目を集めている。そうした潮流のなか、英語と他言语はいかなる関係を結ぶのか、時代における翻訳者の役割は何か、といった問いもまた、文学研究の今後の可能性を示している。
こうした多様な问いを、各执笔者がそれぞれの视点から持ち寄り、纸面で一种の対话を行っている。それに加えて収録された座谈会においては、阴谋论やポスト?トゥルースといった时代の空気における「フィクション」はどのような意义を持つのかという问题を検讨している。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 藤井 光 / 2022)
本の目次
执笔者绍介
CHAPTER 1
现代アメリカ文学のおもしろさ
ひげを生やしたハックとトム──ロバート?クーヴァー『西部のハック』(里内克巳)
蚊が语るアフリカ100年の人间模様──ナムワリ?サーペル『オールド?ドリフト』(里内克巳)
竜の风と共に去りぬ──ル=グウィン遗稿『ゲド戦记』真の最终章「贵颈谤别濒颈驳丑迟」を読む(青木耕平)
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人はテロリストに生まれるのではない──カラン?マハジャン『小さな爆弾たちの连合』あるいは我らの时代(青木耕平)
取り残された人たちへの回路──ルシア?ベルリンの作品をめぐって(日野原庆)
ルイーズ?グリュック──「わたし」と対峙する诗人(吉田恭子)
CHAPTER 2
浮かび上がるアメリカ社会
“America” feat. Elvis Presley, 2018 Remix(藤井 光)
アウトソースされた苦しみ──ふたつの短編小説から(藤井 光)
切り離されるもの──リン?マー『断絶』をめぐって(藤井 光)
スティル?ナンバー?ワン?アメリカン?サイコ──ブレット?イーストン?エリス、9年ぶりの帰还(青木耕平)
ウェルカム?トゥー?(ポスト)エンパイア──B.E.エリス『ホワイト』part 2(青木耕平)
本日限定のセール──21世紀の暴力とゾンビ文化と翻訳と(藤井 光)
『ビラヴド(爱されし者)』から『アンべリード(葬られぬ者)』へ──ジェスミン?ウォードとアメリカの10年(青木耕平)
文学を成功作と失败作に分けてみよう──リチャード?グレイが提唱するフィクションの好ましきあり方(矢仓乔士)
分断されたアメリカにようこそ──罢.ジェロニモ?ジョンソンの小説(里内克巳)
CHAPTER 3
世界中を旅しながら
九龙に充実するオルタナティヴなリアル──香港バプテスト大学国际作家ワークショップ滞在记1(吉田恭子)
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叁首の女子がスペキュラティヴ?フィクションをスペキュレイトする──香港バプテスト大学国际作家ワークショップ滞在记2(吉田恭子)
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コルソン?ホワイトヘッドの基调讲演中は日本庭园を回游していました──ポートランド础奥笔19参戦记(吉田恭子)
哲学者と文学者を同じ部屋に2日间闭じ込めてみた──ラトガース大学翻訳ワークショップ报告(吉田恭子)
CHAPTER 4
魅力的な作家たち
居心地のわるい読书──ハニャ?ヤナギハラ『あるささやかな人生』(加藤有佳织)
こわかわいい创造の物语──モナ?アワド『バニー』(加藤有佳织)
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3日目のアザの色みたいにきれいだ──パトリック?デウィットによる4つの小説(加藤有佳织)
オレンジのブックリスト──ジェイク?スキーツの诗集とシェリー?ディマラインの小説(加藤有佳织)
ともだちのともだち──ジェニファー?クレイグ『ポット始めました』とシークリット?ヌーネス『友だち』(加藤有佳织)
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「素描」を書く者、「素描」を読む者(藤井 光)
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「生き延びる」とは何か、「俺たち」とは誰か(藤井 光)
残像に目移りを──ドン?デリーロ『ポイント?オメガ』におけるスローモーションの技法(矢仓乔士)
孤独な人のための文学──ピーター?オーナーのささやかな世界(里内克巳)
CHAPTER 5
フェミニズムとアメリカ文学
#惭别罢辞辞时代のクリエイティヴ?ライティング(吉田恭子)
ダメ男のレガシーを语る女たち──パート滨:アレグザンダー?ハミルトンの场合(吉田恭子)
ダメ男のレガシーを語る女たち──パートII: ラフカディオ?ハーンの場合(吉田恭子)
ゆがんだカラダ、ひびく声──カルメン?マリア?マチャドの小説(日野原庆)
ショーン?ペンよ、ペンを置け──&濒诲辩耻辞;史上最悪&谤诲辩耻辞;のデビュー作『何でも屋のボブ?ハニー』(青木耕平)
ガールズ?パワーからホラーへ──クリステン?ルーペニアンによるポスト?トゥルース时代の小説戦略(矢仓乔士)
本でできた虹の彼方へ──レインボー?ブックリスト(佐々木枫)
文学の不気味の谷を越えて──メレディス?ルッソの『イフ?アイ?ワズ?ユア?ガール』(佐々木枫)
CHAPTER 6
FATをめぐるものがたり
贵础罢をめぐるものがたり(1)──『ダイエットランド』と、あるひとつの解放宣言(日野原庆)
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贵础罢をめぐるものがたり(2)──ふとっていることの语源学(エティモロジー)と物语学(ナラトロジー)(日野原庆)
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贵础罢をめぐるものがたり(3)──『飢える私』と「残酷な」世界(日野原庆)
贵础罢をめぐるものがたり(4)──『ミドルスタイン一家』と『ビッグ?ブラザー』における家族と身体(日野原庆)
CHAPTER 7
文学は文字だけではない
文字は文字ではいられない──英语授业でグラフィック?ノベルを教える(矢仓乔士)
君、バズりたまふことなかれ──沉黙を取り戻すグラフィック?ノベル『サブリナ』(矢仓乔士)
スケートリンクから宇宙の果てへ──ティリー?ウォルデン『スピン』『阳光に乗って』(里内克巳)
あ??????ありのまま今起こったことを话すぜ!──ドラマ『13の理由』シーズン3で人は谁しも被害者と加害者の侧面を持つという作风への批判が相次いだかと思ったら、いつのまにかオルタナ右翼が映画『パシフィック?リム』を理想的な世界とみなしている事実に気づかされていた(矢仓乔士)
ソーシャル?ネットワークと文学──アダム?ジョンソン『フォーチュン?スマイルズ』/「ニルヴァーナ」(日野原庆)
タイラー?ダーデンふたたび、みたび──『ファイト?クラブ2』そして『ファイト?クラブ3』(青木耕平)
トランプのいない世界の风刺──『サウスパーク』の受难(青木耕平)
お目醒めはほどほどに──『デトロイト ビカム ヒューマン』における保守的ジェンダー観と人種表象について(矢倉喬士)
CHAPTER 8
翻訳とは何か?
英語を壊すお?も?て?な?し──多和田葉子の『献灯使』とマーガレット満谷の『The Emissary』の翻訳術(矢倉喬士)
柴田さんと村冈さん──『ハックルベリー?フィンの冒けん』の新しさ(里内克巳)
诗人のように翻訳し、翻訳者のように创作せよ──パート滨:翻訳とアイスランド语の未来(吉田恭子)
诗人のように翻訳し、翻訳者のように创作せよ──パート滨滨:アメリカ手话の翻訳诗を「読んで」みる(吉田恭子)
COLUMN
文学の现场はどこにあるのか──イギリスからみた文学创作(吉田恭子)
座谈会「正しさの时代の文学はどうなるか?」
加藤有佳织&迟颈尘别蝉;柴田元幸&迟颈尘别蝉;藤井光&迟颈尘别蝉;矢仓乔士&迟颈尘别蝉;吉田恭子
あとがき
おわりに(矢仓乔士)
関连情报
『现代アメリカ文学ポップコーン大盛』を読みながら聴きたい音楽をまとめたSpotifyのプレイリスト (本書執筆者選) (Spotify)
着者インタビュー:
時間をかけて他人の言葉に身を委ねる「表現としての翻訳」とは – 藤井光インタビュー (ANTENNA 2021年6月21日)
青木耕平氏インタビュー「なぜカニエ?ウェストは人种差别的な小説に惹かれた? 现代アメリカ文学が描く&濒诲辩耻辞;时代&谤诲辩耻辞;を気鋭研究者が彻底分析!」 (『日刊サイゾー』 2020年12月28日)
书评:
倉本さおり 評 (『ダ?ヴィンチ』2023年3月号 2023年2月6日)
巽孝之 (慶應義塾大学教授) 評《アメリカ文学がいかに多様なエネルギーを爆発させてきたかを語り尽くす》 (『みすず』2023年1?2月合併号 2023年2月1日)
吉田恭子 評「大波小波 #Metoo時代の作品価値」 (『東京新聞』 2022年5月17日)
(『工场管理』3月号 2022年2月21日)
栗原裕一郎 評「3冊の本棚」 (『東京新聞』朝刊 2022年2月19日)
藤ふくろう 評「新刊めったくたガイド」 (『本の雑誌』3月号 No.453 2021年2月9日)
冨塚亮平 評「「アメリカ」と「文学」の枠組みを揺さぶり再構築する刺激的な営為――現代アメリカ文学をめぐる「名前の育て方」の新たな回路」 (『図書新聞』第3494号 2021年5月1日)
书籍绍介:
(慶應義塾大学文学部英米文学専攻巽ゼミ OBOG会 公式ホームページ 2021年2月6日)
おすすめの本 (ほぼ日刊イトイ新闻 2020年12月19日)
「世の中が変わるときに読む本」 (『叠搁鲍罢鲍厂』狈辞.930 2020年12月15日)
イベント:
『现代アメリカ文学ポップコーン大盛』(书肆侃侃房)刊行記念イベント 青木耕平さん×加藤有佳織さん×日野原慶さん 「现代アメリカ文学ポップコーン大盛、渋谷でおかわり!」 (TWO VIRGINS 2021年3月21日)