
书籍名
近代日本の科学论 明治维新から败戦まで
判型など
552ページ、础5判、上製
言语
日本语
発行年月日
2021年
ISBN コード
978-4-8158-1019-1
出版社
名古屋大学出版会
出版社鲍搁尝
学内図书馆贷出状况(翱笔础颁)
英语版ページ指定
科学論とは、科学の知識としての性格や、科学の社会や国家などとの関わりについての議論であるが、本書は、明治维新から败戦までの日本に現れた主要な科学論の内実を検討し、さらに科学論と社会、および科学論同士の関係について叙述する。科学とは何かを論ずる科学論に関心がある人々は多いであろうし、たいていは「正しい」科学論が求められるであろう。しかし、本書では、「正しい」科学論がどのようなものであるかは議論されず、叙述は個々の科学論の紹介と、歴史的な展開に集中している。
それではどのような科学論が正しいのかわからないではないか、と思われるかもしれない。この問いに対する答えは本書は与えないが、数々の科学論とそれら相互の関係を提示することで、間接的には、「正しい」科学論を求めることに果たして意味があるのかと問い返してもいる。科学論は、その時代の科学の状況や、社会情勢、主要な思潮などの影響の下に、生まれて消え、支持され放棄されていくのであり、時代を超えて「正しさ」を保つ科学論などはない、という印象をも生むかもしれない。こうした姿勢は、科学は時代を超えて一貫して正しいというわけではなく、その正否についての判断は時代や文化の影響を受けざるを得ないという前提の下になりたつ、科学の歴史を叙述する学問領域 (科学史) では一般的にとられるものであり、本書では同じ姿勢が科学論に対して適用されている。
科学の大規模な流入の始まった明治初期から、科学論は知識人の関心を集めており、多くは外国のものを紹介するかたちではあったが、様々な議論が世に問われてきた。そのなかで、歴史の転換点として特筆すべきは、ロシア革命 (1917年) やソヴィエト連邦の誕生 (1919年) の衝撃を受けて、日本でもマルクス主義 (科学的社会主義) への関心が高まると、この陣営から、革命の正しさを主張する議論が、自然科学を含む科学の名のもとに提示され、国家の側では、その挑戦に対抗するため、国体や日本精神の擁護を含み込んだ科学論の構築が模索されるようになったという経緯である。明治維新で天皇を主権者とする国家が誕生したとはいえ、その正統性の由来となる神話 (天祖の神勅) までをも信ずる者はごく一部にとどまっていたが、科学的社会主義の挑戦を受け、天皇制国家のもとで科学が適用されるべき範囲や、その効力の吟味が開始された。対中国戦の始まる1937年からは、戦争遂行にあたっての科学の重要性が強く意識されていたことも、議論の動向に影響を与えた。
天皇制国家の中での科学论构筑の试みがどのような见解を产んだか、またそれは、第二次世界大戦において日本が直面した、以前の戦争にはない败北のかたちによってどのような终焉を迎えたかについても、本书では详述している。この部分に限らず、科学论の展开に基づく思想史の一侧面の描写が试みられており、この点も本书の特徴をなしていると着者は考えている。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 岡本 拓司 / 2021)
本の目次
1 本書が扱う対象と時期
2 科学史?科学論との関連
3 これまでの科学論史
4 本書の構成
5 明治維新の前に築かれていたもの —— 自然と道徳
第滨部 科学と出会った明治の日本
—— 科学論の黎明
第1章 「科学」の語が意味したもの
1 日本における科学の語の誕生とその意味の変遷
2 精神科学?自然科学
3 科学的社会主義
第2章 天皇の国の科学と科学论
—— 明治期の諸相
1 国体と科学、宗教と科学
2 3人の物理学者
3 木村駿吉の『科学之原理』と『物理学現今之進歩』
第滨滨部 学问的科学论の试み
—— 教養主義と理想主義の科学論
第3章 桑木彧雄の科学史と科学论
—— 変革との対峙
1 桑木は何を紹介したか
2 「絶対運動論」から科学論へ
3 説明か記載か
第4章 田辺元の哲学と科学论
—— 方法と実在
1 『最近の自然科学』
2 『科学概論』
3 方法の検討と実在
第5章 石原纯の物理学と科学论
—— 自然科学と世界形像
1 相対論の解説から科学論へ
2 科学と美と人生
3 包括的な自然科学論の完成
第滨滨滨部 诸潮流の形成と展开
—— マルクス主義の衝撃
第6章 マルクス主义科学论の勃兴
—— 科学の階級性と自然弁証法を中心に
1 初期の模索
2 岡邦雄の辿った道
3 唯物論研究会 —— 自然弁証法、科学の階級性
第7章 篠原雄と综合科学
1 北川三郎の「幻想」
2 綜合科学協会の設立
3 篠原雄の来歴
4 綜合科学の確立に向けて
5 綜合科学の変容
6 篠原の「科学的精神」論批判
7 実践への衝動
第8章 武谷叁男の叁段阶论
1 自然弁証法との出会い
2 量子力学との格闘から科学論の構築へ
3 中間子論と武谷の科学論
4 三段階論の彫琢
5 戦争末期の武谷
第滨痴部 日本科学论の诞生
—— 科学との対峙から「科学する心」へ
第9章 思想统制と科学论
—— 1930年代前半の国民精神文化研究所を中心に
1 国民精神文化研究所の誕生
2 開所当初の国民精神文化研究所と科学論
3 科学論の深化の試みとその周辺
4 作田荘一の「科学」
5 科学への関心の高まり
6 「日本文化」と科学論
7 文部省の特別講義に見る科学論
第10章 教学刷新と科学论
1 自然科学への警戒
2 教学刷新評議会
3 教学刷新評議会に現れた科学観とその背景
4 教学刷新と「科学的精神」
第11章 日本文化としての科学
1 教学刷新と歩む科学論
2 第一高等学校の橋田邦彦
3 教育審議会の議論に見る科学観
4 教学局の活動と科学論
第12章 科学する心
—— 文相橋田邦彦とその周辺
1 橋田邦彦の文部大臣就任
2 文部大臣の講義と映画
3 教育政策の中の科学論
4 科学論の制度化
5 日本科学史と科学的精神
6 『明治前日本科学史』刊行の企画と日本科学史学会の誕生
第痴部 戦う帝国の科学论
—— 科学精神と日本精神の昂揚と焦燥
第13章 综合科学を枢轴とする积极的世界建设
—— 戦時下の篠原雄
1 工政会における篠原雄
2 篠原の工政会との決別
3 戦う帝国の積極的世界建設
第14章 日本科学论の展开
1 科学文化協会
2 国民精神文化研究所とその周辺
3 特異な科学論
第15章 革新官僚の科学论
—— 精神と生活の科学化
1 「科学的精神」と「科学精神」
2 基本国策要綱の諸草案における科学の扱い
3 「科学する心」と「科学精神」
4 宮本武之輔における、「科学」、「精神」、「日本科学」
5 科学技术新体制確立要綱の成立
6 日本的性格と日本的把握
7 生活の科学化
第16章 戦时下の科学
—— 純粋科学と応用研究、日本精神と科学精神
1 小倉金之助の変容
2 科学者の焦燥
3 大東亜共栄圏の純粋科学
4 日本精神と科学精神
5 科学戦の帰趨
终 章
注
あとがき
参考文献
事项索引
人名索引
関连情报
岡本拓司「社会や国家にとって科学がもつ意味とは何か。科学論の歴史から考える」 (ALL REVIEWS 2021年3月24日)
书评:
小松美彦 評「読者アンケート特集」 (『月刊みすず』 2022年1?2月合併号)
瀬戸口明久 評「明治初期から戦時期までの日本における科学論を詳細に検討――本書を貫く、階級や民族のような特定の社会集団にとっての科学とは何かという問い」 (『図書新聞』第3509号 2021年8月28日号)
坂野徹、小松美彦 評「特集「2021年上半期読書アンケート」」 (『図書新聞』第3505号 2021年7月24日号)
長崎浩 評 (『週刊読書人』第3387号 2021年4月23日号)