男性性の探究
东大に入学する新入生のうち女子学生が2割に达するかどうかが最近ではひとつの目安になっている。数年前まで私が教えていた上智大学のフランス语学科では逆に男子学生の割合が1~2割程度だったせいか、驹场に来て改めて印象づけられたのが男子学生数の多さである。教员もしかり、2019年4月の辞令交付式で、このとき着任した30名近くのうち、女性教员の姿がわずか1人しか见られなかったことには惊いた。
振り返ってみれば、私自身は地方の公立男子校出身者で、30年近く前に东大文滨滨滨に入学したときにはクラスの女子学生の数が比较的多いと惊いていたような人间である。そんな私でも、フランス留学から日本に戻ってくると、さまざまな社会组织における意思决定プロセスがやはり男性中心主义的であることに、しばしば戸惑いを覚えるようになっていた。しかし、そうした自分にも男性中心主义的なものの见方が根深く巣食っていることは、自信を持って否定することができない。
2017年は#MeToo運動が世界を席巻した年だが、カナダで研究休暇 (サバティカル) を送っていた私は、SNSなどで被害を訴える女性たちの声が気になりながらも、どのように反応すればよいのかわからなかった。自分の専門である宗教学の研究との直接的関係は薄いが、一人の男性としてまたは一地球市民として関心を払うべき問題だと思われた。それでも何か発言するには、自分自身の立場性の問題が問われる。これに対して態度を決めるのはなかなか難しいことで、自分としては身動きが取れないままに時間が過ぎていった。
そうしたなかで出会ったのがこのラファエル?リオジエの本だった。彼は宗教事象をおもな対象とするフランスの社会学者?哲学者で、専门分野や研究対象は私と近い。#惭别罢辞辞运动を前にして、西洋白人男性という立场性を引き受けながら男性性に反省を加える姿势に共感するとともに、人类の长い宗教と世俗の歴史のなかにこの运动を位置づける视点に目を开かれ、日本に翻訳绍介する意义があると考えた。
リオジエは、女性を「もの」として所有しようとする男性の视线と言动が、男性中心主义的な社会を作り上げてきたと论じる。彼の基本的主张はシンプルで、一言で言えば女性の意志を认めよということに尽きる。そんなことなら先刻承知という男性読者からの声が闻こええてくるようである。リオジエ自身も、原书の出版记念パーティーで、とある有名な男性から、自分はあなたの批判する男性像には该当しないと言われたそうである。ところが、その男性が程なくしてセクハラを告発され、メディアを賑わせることになった。
わかっているつもりでわかっていないことは多い。本书の内容は、ある程度フェミニズムを啮ったことのある人にとっては、常识的なことばかりと思われるかもしれない。それでも、社会的?経済的?象徴的な男女间格差の现状を考えるならば、着者が男性の立场から、特に男性読者を想定しつつ、男女平等の地平で男女の性差を再肯定できると主张していることの意义は、大きなものである。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 伊達 聖伸 / 2021)
本の目次
问题なのは、ドン?ジュアン
#惭别罢辞辞の意味を歪める五つのやり方
同意の超越论的価値
白马の王子の神话が意味していること
资产として重要な女性
女性の値段
「女子无料」は女性优遇なのか
男らしさは女性によって伝达される
心も体も不完全な女性
レイプの文化
男らしさの无力(不能)
强すぎる女性に対する不安
女性の欲望に対する怖れ
去势コンプレックスはまずは男性的なもの
金の槛から抜け出す
果たされていない近代の约束
女性の同意は両义的で纷らわしいという俗説
爱のないセックス
ジェンダーのなかの违和感
自由を恐れないこと
私たちの差异を再び自分のものにすること
ジェンダーの和平に向かって
エピローグ―価値の転换
注
訳者解説
関连情报
澁谷知美 評「「内なる男性性」問題に真摯に向き合う男へ」 (『週刊金曜日』1330号 2021年5月28日発売号)
江藤俊哉 評 (『西日本新聞』 2021年5月29日)
&濒迟;大波小波&驳迟; 男性性の问い直しの试み (『中日新闻』 2020年8月25日)
书籍绍介:
フランス大使馆からあなたへ:自由に生きたい女性のためのフランスの本 (フランス大使馆/アンスティチュ?フランセ日本 2021年12月)
taires.pdf
関连记事:
EAAブックレット EAA Forum 19 フランスから見た?MeToo運動――ラファエル?リオジエ『男性性の探求』をめぐって (EAA 東京大学東アジア藝文書院)
〈シンポジウム〉 女性蔑視はどうつくられるか――ラファエル?リオジエ『男性性の探究』をめぐって ラファエル?リオジエ×三牧聖子×清田隆之 (『群像』 2021年10月号)
<論点> 伊達聖伸「男性性の探究と#MeToo運動」 (『群像』 2020年9月号)
イベント:
【報告】連続討論会——ラファエル?リオジエ 『男性性の探究』をめぐって (東京大学東アジア藝文書院 (EAA) 2021年8月5日
女性蔑視はどうつくられるか——ラファエル?リオジエ 『男性性の探究』をめぐって (科学研究費補助金 基盤研究 (A) / 東京大学東アジア藝文書院 (EAA) 2021年7月26日)
フランスから見た#MeToo 運動——ラファエル?リオジエ 『男性性の探究』をめぐって (科学研究費補助金 基盤研究 (B) / 東京大学東アジア藝文書院 (EAA) 2021年7月22日)