东大式 癒しの森のつくり方 森の恵みと暮らしをつなぐ
本書は、東京大学演習林のひとつ、富士癒しの森研究所 (以下、研究所) の理念と、「癒し」を得ながら森と付き合うアイデアをまとめたものである。研究所は、保健休養機能と呼ばれる、レクリエーションなど休養の場として活用できる森林の特性を重視した教育?研究活動を行っている。2011年からは、「癒しの森プロジェクト」を掲げ、保健休養機能に優れた森林が自律的に維持される社会的仕組みの実現を模索してきた。本書の要点をごく簡単に言うと、森がもたらす恵みや癒しを私たち一般市民がより身近に、そして積極的に得ようとすることで、森づくりにもつながるだろう、ということである。そうした観点から、なるべく一般市民に読んでもらえるような説明にし、森に親しめるような実践的なアイデアも豊富に盛り込んだ。
一方、本书は、现在の日本に横たわる、森林と社会の関係をめぐるやや深刻な问题をも意识している。
森林の手入れ不足。多くの人が、こんな言叶を最近耳にしているのではないだろうか。特に、豪雨によって山林が崩れた时、あるいは、野生动物による深刻な被害が発生した时に、その要因としてしばしば言及される。もちろん、すべての原因をここに求めることには无理があるが、十分に管理ができずにいる森林が広范に存在していることは事実である。
なぜ管理ができずにいるのか。これへの答えはシンプルである。森林を管理するインセンティブが十分に働かないからである。森林を管理するインセンティブとはなにか。これまで主に想定されてきたのは、林業 (=木材生産) である。より付加価値の高い木材を生産するために、林家 (あるいは林業従事者) は、間伐などの手入れを行う。これが、森林の公益性も担保する管理行為になる。そのようなシナリオが想定されてきた。しかし、およそ半世紀にわたりし、林業の採算性は悪化し続け、補助金が投入されてようやく収支を釣り合わせられるのが実情である。つまり、このシナリオはいま、絵に描いた餅と化しているのである。
このシナリオは、経済活動 (产业) を重視する近現代社会における、いわば「一般解」である。分業を前提とし、林業を営む者にのみが森林管理を担い、その他一般市民は、市場を通じて木材あるいは木材を原料とする商品を購入することでしか、森林に関わることがない。本書では、この状況を野球と社会の関係になぞらえ、「まるでプロ野球の選手とプロの試合を観戦する観客しかいない」状況ととらえる。そして、「もう一つの解」として、市民自らがプレーヤーとして参加する「草野球」のような関わり方を提案する。「もう一つの解」において、森づくりのインセンティブとなるのは、森がもたらす「癒し」ではないのか、研究所ではそのように考えている。森の癒しと言った時、一体どんな体験が期待できるのか、あるいは、どんな森と人の関係性が描けるのか、詳しくは、是非本書を読んで考えを深めていただきたい。
(紹介文執筆者: 农学生命科学研究科?农学部 講師 齋藤 暖生 / 2021)
本の目次
第1部&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森と森づくり
第1章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;富士山麓?山中湖畔で始まる、新たな森と人とのつながり
1 東京大学の森「富士癒しの森研究所」
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;なぜ山中湖畔に东大が
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;时代背景と研究テーマの変迁
2 山中湖村のたどった道─寒村から国内有数のリゾート地へ
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;山野の恵みにたよる厳しい暮らし(江戸时代?明治时代)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;観光による开発の兆し──富裕层向けの保养地(大正时代~昭和初期)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;山中湖村の発展と生业の急激な転换(戦后?昭和时代)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;森と人の断絶と日本有数の保养地の衰退(平成时代)
3 「癒しの森プロジェクト」、始まる!
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;たどりついたのは「癒し」
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;「癒し」という森の恵み
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;「癒し」が森と人をつなぐ可能性
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;「癒しの森プロジェクト」は山中湖村だけのもの?
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;地域の事情によりそった、森と人との関係をつくる
第2章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;みんなでつくる癒しの森
1 癒しの森ってどんな森?
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;日本の社会と森の癒し
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森とはどんな森か
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森からもたらされる「癒し」
2 森は動いている
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;日本の风土と森
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;人の暮らしがつくった风景
3 癒しの森のつくり方
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;社会があってこその癒しの森
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;暮らしを见つめ直す
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;森林所有者とのつながり
癒しの森にフィットする技术──安全?快適?簡易
4 癒しの森づくりが拓く未来
第3章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森を支える技と心得
1 森にひそむ危険
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;树木がもたらす危険
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;その植物、「さわるな危険」
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;ハチ─痛いだけならいいけれど&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;マダニ─かゆいだけならいいけれど&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;野生动物─意外と身近にいます
2 癒しの森のリスク管理
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;树木の管理
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;危険の见つけ方
【コラム1】 樹木の見た目は生き様
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;动植物のコントロール
3 森を快適に保つ
4 あっ、危ない!─山しごとを安全に行うために
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;身を守る装备
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;伐倒作业
【コラム2】 東屋(あずまや)─道ぞいの危険木を有効利用
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;刈り払い作业
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;高所作业
5 森づくりの便利な道具
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;ポータブルロープウインチ─力がなくても重いものを动かせます!
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;简易製材机「アラスカン」─木を伐ったその场で製材ができます!
【コラム3】 台風被害木を生かすアイデア─パネル式看板再生プロジェクト
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;无烟炭化器─じゃまになる枝?灌木をかたづける[1]
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;木材チッパー─じゃまになる枝?灌木をかたづける[2]
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪割り道具いろいろ
【コラム4】 癒しの森からの木材を活用した建物─富士癒しの森講義室
第4章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪のある暮らし─癒しの森の原动力
1 古くて新しい薪
2上手な薪の使い方
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪を燃やすということ
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪は乾燥が命
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪をケチってはいけない
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪はかさばる
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;【コラム5】 薪棚をつくろう
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;よい薪?悪い薪
3 薪ストーブを選ぶ
4 薪を割る
5 薪を積む
6 薪で料理を楽しむ
第2部&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森でできること
第5章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森で学ぶ
1 自分たちの手で癒しの森をつくる
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;心地よい森の中でのグループワーク
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;道づくり
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;立木を生かした游具をつくる─縄ばしごとブランコ
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;やまなかふぇ─素敌なバーカウンターができました
2 森のエネルギーを使いこなす
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪割りと薪の体积计测
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;间伐と间伐材の価値の试算
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;炭焼き体験と収炭率
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;森のエネルギーで调理実习
3 癒しの森をデザインする
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;先入観なしに森に関わるスケジュール
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;アイデアいろいろ
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;●えだまり ●まるぼっくい ●ひとりふたりほとり
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;●くーぐる ●骋测尘.こもれび
●The Healing Pit "Yes, We Dig" ●浮庵fuan
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;●あめおと ●帘帘幽席 ●くもの巣迷路 ●全緑疾走
4 癒しの森を使った音のワークショップ
第6章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;山しごとをイベントに
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;柴刈りと柴垣づくり
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;下草刈りと芝刈り
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;堆肥づくり
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;落ち叶焚き
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;フットパス诲别森づくり
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森の植生调査队
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪原木の竞り売り
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;薪づくりのための安全作业讲习会と间伐木の搬出
第7章&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;癒しの森でこころを整える
1 森林散策カウンセリングとは
2 カウンセリングに最適な森林空間とは
【コラム6】 森林散策カウンセラーになるには?
3 こころのために森を使う
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;ちょっとした相谈や话し合いを森で
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;リフレッシュに最适
おわりに
引用?参考文献
着者绍介
辻 和明(つじ?かずあき)
西山教雄(にしやま?のりお)
竹内启恵(たけうち?ひろえ)
斋藤纯子(さいとう?じゅんこ)
関连情报
あちこちそちこち东京大学:斋藤暖生「森の癒し」を探求するフィールド (东京大学『学内広报』苍辞.1550 2021年9月24日)
/gen03/kouhou/1550/03column.html#%E3%81%82%E3%81%A1%E3%81%93%E3%81%A1%E3%81%9D%E3%81%A1%E3%81%93%E3%81%A1%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6
森林文化のタネをまく/斋藤暖生の森林政策学蔼山梨県 (东京大学広报誌『淡青』35号 2017年10月24日)
/focus/ja/articles/t_z0508_00065.html
着者インタビュー:
富士山インタビュー vol.88 齋藤暖生「信仰の山である富士山は、麓に住む人々の暮らしや生業の場でもあったんですよ」 (認定NPO法人 富士山世界遺産国民会議ホームページ)
コンセプト?ヴィレッジの人々 Vol.31「人が森に求めるもの。森が人に語り掛けること。―東京大学「富士癒しの森研究所」を訪ねて―」 (フジヤマスタイル ホームページ)
书评:
牧野耕輔 評 (鹿児島大学農学部附属演習林) (『林業経済』2021年74巻6号p.18-20 2021年9月号)
书籍绍介:
黒岩知恵 新刊紹介 (『砂防学会誌』第74巻第3号 (通巻356号) 2021年9月)
本の紹介 (会誌『森林技术』No.945 2021年1月10日)
叠翱翱碍 (月刊『グリーン?パワー』1月号 2021年1月1日)