森林文化のタネをまく/斋藤暖生の森林政策学蔼山梨県 | 広报誌「淡青」35号より
実施日: 2017年09月08日
森林政策学 @ 山梨県
森と人をつなぐためのアクションリサーチ
森林文化のタネをまく
富士山を至近に仰ぐ研究所に、日本人と森の関わりの薄れを悬念する先生がいます。森に入らなくても生きていけるが、人は森で大きな楽しみや喜びを得ることができる。「癒し」を轴に人と森のつながりの再生を目指す斋藤先生の取组み。山菜ときのこを想像しながら読んでください。
斋藤暖生/岩手出身
Haruo Saito
助教
斋藤先生の本(共着)
『コモンズと地方自治』(日本林业调査会/2011年刊/2380円+税)
&耻补谤谤;研究所でのプロジェクトの概念図。地域の人々が「癒し」を得ながら森の整备に携わり、木材を使うことによって、「癒し」を得やすい森林环境が実现される仕组みづくりを目指す。
薪原木贩売の社会実験。试験地の整备で発生した间伐材を周辺の薪ストーブ利用者に竞りで贩売し、需要の大きさを探る。 |
地域住民とフットパス候补を検讨するワークショップ。フットパスとは歩いて地域の自然や歴史?文化を楽しむ小径、およびそのための活动のこと。森林に亲しむ文化の一つとして期待している。 |
私の研究関心は「人と森の関係」にあり、今の日本は、森との関わりが薄いことに悬念を抱いています。では、どのような问题があるのでしょうか。森との関わりが薄いと、当然、森への関心も薄れることになります。ここに2つの问题があると考えています。一つは、潜在的な资源を社会に活かす回路がうまく働かないということ、もう一つが、森がもたらしうるリスクについて监视の目が届きにくくなるということです。
私が长く関わってきた研究に、山菜?きのこ採りがあります。どうして今も山菜?きのこ採りは地方によってまたはレジャーとして盛んに行われているのだろうか、こんな疑问から取り组み始めました。この研究で见えてきたのは、现代において森と人のつながりにはたらいているのは、生活?生计上の必要性というよりは、採る?食べる?人にあげるといった过程の中で得られる楽しみや喜びが大きいのではないかということです。
この知见を踏まえ、どうすれば人と森のつながりを再生できるか、という课题に取り组んでいるのが、富士癒しの森研究所(以下、研究所)での研究です。研究所のある山梨県山中湖村は、富士山を间近に仰ぎ、山中湖を抱く立地から、别荘地?観光地として発展してきました。ここでも全国の倾向と同様、森のつながりは希薄になっています。森はリゾート空间の大切な要素となりそうですが、その活用はほとんど见られません。一方で、落枝事故や獣害など森がもたらすリスクは増しつつありますが、その认识も希薄です。
研究所では、「癒し」を轴にして、地域の森と人を结びつけることを目指した研究プロジェクトに2011年から取り组んでいます。例えば、趣味として山仕事に携わる人がいて、この过程で出た木材は薪として冬のくつろぎを演出する、こうしたつながりができることで结果的に快适で安全な森林环境が创出?维持される地域の姿を思い描いています(上図を参照)。このプロジェクトは、単に研究成果をあげるだけでなく、公开讲座やワークショップを通じて、地域での価値観の共有やネットワークの形成に働きかけることで、地域の実情や変化を研究として捉えようとしています。こうした実社会に働きかける研究は、アクションリサーチと呼ばれています。
研究所でのアクションリサーチは、地域に森林文化を「创る」试みだと考えています。森林の研究は概して结果が出るまでに多くの年数を要します。演习林には长期的な森林研究拠点としての役割がありますが、森林に関わる地域社会の研究もその一つに加えられるのではないでしょうか。今はまだタネを蒔いた段阶ですが、次世代に引き継ぐだけの価値のある研究となるように、试行错误していきたいと思っています。&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;
※本记事は広报誌「淡青」35号の记事から抜粋して掲载しています。笔顿贵版はをご覧ください。