别册太阳 日本のこころ 288 鸟獣戯画 决定版 「絵の原点」にふれる
美术史家にとって最も楽しい时间とは、好きな作品ゆっくりと见る时间、そして、その作品について他の美术史家と语り合う时间でしょう。作品を见るためにはどんな场所にも行きますし、作品を见た経験は、その场所と不可分なものとして记忆されます。私の専门からいえば、欧米の美术馆やコレクターの邸宅で日本絵画を见る。中国の深い山の中の石窟で仏教美术を调査する。インドの古い博物馆で仏教美术の源流を感じる、ということになります。そして、见たものを语り合うことで、自分の理解がより深まる。他の研究者が同じ作品をどのように见ているのか、自分との违いを知ることができる。
美术作品を见て、论じることを职业に选んだプロたちが、作品をどのように见て、见たことから何をどのように考えてゆくのか。そのような研究のあり方、その最先端をわかりやすい形で伝えられないだろうか。そのような思いから企画されたのが、作品を见ながら叁人の美术史家が语り合ったことをそのまま本にするという形でした。
京都の郊外、栂尾の高山寺に伝わる国宝「鸟獣戯画」四巻は、日本絵画の中でも最も有名な作品の一つです。名前を闻いたことがなくても「カエルとウサギが相扑をとっている絵」、「ウサギとサルが追いかけっこをしている絵」といえば、どこかでその姿を见たことを思い出すはずです。それは教科书の中、またお茶碗や手拭いやトートバッグといったグッズの上でかもしれません。このようにその形のイメージは広く知られている作品ですが、実は、「何を描いたものなのか」「いつ描かれたものなのか」「谁が描いたものなのか」「何を目的に描かれたものなのか」、こういった作品をめぐる基本的な情报が全く分からない作品なのです。日本美术史上最大の难物と言っても良いでしょう。では、その难物にどのように取り组むのか。それは、作品に正面から向き合って、よく见ることから始まります。そして、见たことを自分の记忆の中にある様々な作品や先行する研究者の意见などと比较しながら考え、この作品の特徴がどこにあるのかに迫ってゆきます。今回は、东京国立博物馆の学芸员として絵巻を研究し、「鸟獣戯画」の展覧会を企画された土屋贵裕さん、京都国立博物馆の学芸员として日顷「鸟獣戯画」を管理されている井并林太郎さん、二人の気鋭の研究者とともに、「鸟獣戯画」四巻を见尽くし、语り尽くしました。同じ作品を见て、意见が一致するところ、相违するところ、相违するところから议论が深まってゆく様子。研究対象に真剣に向き合い、それぞれの知を総动员して対象を解釈する、といった人文学研究の一つのあり方を実况中継するように本を作りました。
美术史とはどんな学问なのか。美术史家とはどんなことを考えている人たちなのか。そして、「鸟獣戯画」とは何か。そんな疑问を持つみなさんの入り口になる本が出来上がったと思います。一度、お手にとってご覧いただけたら幸いです。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 准教授 増記 隆介 / 2021)
本の目次
鸟獣戯画 全図 辫.8
鑑赏のポイント 鸟獣戯画を见る前に 増记隆介 辫.16
「鸟獣戯画」全四巻を见る 増记隆介?土屋贵裕?井并林太郎 辫.30
明恵上人と仏画 伊藤久美 辫.128
珠玉の絵巻を楽しむ 上野友爱 辫.136
関连情报
連続講座「鳥獣戯画研究の最前線」 (東京国立博物館 2021年4月23日~4月24日)