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本書の目的は、グローバル競争圧力の下で、企業がその能力と柔軟性を構築することで、持続的な产业競争力と大災害に対する頑強性のバランスをとる方法を探求することである。災害が工業製品のサプライチェーンに与える影響に焦点を当てる。
 
その主旨は、企業はいつか訪れるかもしれない災害のみならず、产业現場が常に直面し続けるグローバルな競争にも対処しなければならないということである。継続的改善と能力構築の原則の下で追求するならば、頑強性と競争力は連携できる。本書の実証的な事例研究は、地震、津波、火山噴火、台風、地滑り、洪水などの自然災害に見舞われることが極めて多い国の1つとして知られる日本の工業地帯で主に実施した。特に、2011年の東日本大震災 (東北地方太平洋沖地震) など、真にグローバルな競争の時代に発生した震災の事例を取り上げている。
 
第1章では、本書の全体的なテーマを示す。現在のグローバル競争の時代には、サプライチェーンの頑強性と競争力はバランスをとる必要があり、そしてそれは可能である。第2章では、災害によって引き起こされたサプライチェーンの混乱に関するフィールドベースの研究が不足していることを指摘する。この章では、本書がサプライチェーン管理 (SCM) と事業継続計画 (BCP) に関する既存の文献をどのように補完するかを示している。第3章では、サプライチェーンの潜在的な弱点を特定するための、本全体の基礎となる主要なフレームワークとして機能する製造業の設計情報の流れ図について説明する。この章では、企業が能力を構築する新たな方法として、「バーチャル?デュアル」について説明する。これによって、従来の対策のみを採用した場合に通常見られるサプライチェーンの頑強性 (継続性) と競争力の間のトレードオフを克服する。
 
第4章から第9章では、ケーススタディを紹介している。第4章では、2007年に日本の西海岸で地震 (新潟県中越沖地震) が発生した際の、リケンの現場での復旧について説明している。ここで注目すべき点は、代替生産ではなく、被災地における迅速な復旧である。第5章では、災害後の代替生産について分析している。1997年のアイシン精機では、火災で深刻な被害を受けた工場が供給できなくなった大量の自動車用ブレーキ部品を、多くの企業が迅速に介入して一時的に生産した。第6章では、2011年の東北地方太平洋沖地震にエプソンアトミックスが対応した事例を紹介している。これには、損傷した金属微粉の生産現場の6週間の復旧も含んでいる。第7章では、2011年にタイで発生した深刻な洪水に、ホンダとそのサプライヤーがどのように対応したかを示した。第8章と第9章では、トヨタの現在の災害対応能力と、過去40年間に日本のサプライチェーンで発生した多数の自然災害および人為的災害に対峙する中で、それらがどのように進化してきたかについて詳しく説明している。また、2011年の東北地方太平洋沖地震で甚大な被害を受けた大手半導体メーカーの復旧に向けた产业内貿易支援チームについても議論する。
 
第10章では、调査结果と実际的な影响について要约している。バーチャル?デュアル化は、设计と製造で高い调整力を必要とする复雑な製品のサプライチェーンの顽强性と竞争力の両方を実现するための手段として、再び论じている。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科?経済学部 名誉教授 藤本 隆宏 / 2024)