ちくまプリマー新书 子どもたちに语る 日中二千年史
本書は筑摩书房が主催した社会人講座「ちくま大学」として、五回に分けて行った連続講義がもとになっている。この講義では主対象を高校生に設定し、学校の教員や一般の人たちにも聴講してもらった。その時の録音を文字に直したうえで、話の順序を変えたり内容の添削をしたりかなり大幅な修訂作業を施している。
私たちが暮らす日本という国の歩みは、すぐ隣の世界的大国、中国の圧倒的な影响下に常にあった。中国文明の恩恵は数千年前の稲作伝来に遡れるが、国家间の最初の外交関係は西暦57年に倭奴国王が后汉に朝贡したことだった。以来、両国は二千年の长きにわたってどのような関係を结んできたのか。本书はその紆余曲折の道のりを具体的に语っている。
大学入试センター试験の日本史では、中国や朝鲜との関係をあつかう设问が毎年のように出题されている。この倾向は21世纪に入ってから顕着になってきた。これは学习指导要领の改订や、それを承けての教科书の记述の変化に対応している。日本列岛、つまり现在の日本国の范囲内だけで日本史を语るのではなく、东アジアという地域のなかで日本の歩みを捉えようという动きが学界で共有されるに至ったのだ。40年ほど前、着者自身が高校で学んだ时と比べて高校の日本史はかなり変化している。「子ども」だけでなく「おとな」の人たちにも新たに知ってもらいたい事象が列记?绍介されている。実际、东京大学の同僚たちからも「知らないことが多かった」という感想をもらっている。
たとえば古代の邪马台国や倭の五王、遣隋使?遣唐使のことは谁でも知っているが、中世の「勘合贸易」が実は朝贡使节団(遣明使)だったことは认识されていない。近世についても「锁国」ではなく「海禁」という用语が适切で、日本から渡航することはできなかったけれども、输入物品(唐物)を通じて同时代の中国文化を摂取しつづけていたことが日本の伝统文化に影响を与えている。近代の「不幸な歴史」には、19世纪における対中认识の変化(憧れから軽蔑へ)が心理的に大きく作用している。
日本と中国との政治外交上の関係は良好とはいえない。中国に対する国民感情もあまりよろしくない。ただ、実は二千年来、友好関係にあった时期のほうが稀だった。しかし、外交関係が无かったり戦争していたりという状态の时期も含めて、日本が中国から受けた文化的な影响は大きく、その恩恵は计り知れない。「仲良くしよう」というお説教ではなく、「こんなことがあった」という史実をまず知ってもらうために书かれたのが、本书である。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 小島 毅 / 2020)
本の目次
第2章 唐風と宋風―平安時代?鎌倉時代(遣唐使時代の終わりとその後の東アジア 唐風と国風 ほか)
第3章 朝貢から進攻へ―室町?織豊時代(朝貢冊封体制の理念 明の登場と朝貢外交の復活 ほか)
第4章 狭い窓口、深い関心―江戸時代(武家政権とその長の名称のこと 海禁の時代へ ほか)
第5章 あこがれから軽蔑へ―近現代(近世東アジア海域の三つの類型 教育勅語の思想背景 ほか)
関连情报
安田峰俊 「何を受け入れ、何を拒むべきなのか……日本が中国と向き合った2000年で問われ続けてきたこと」 (『週刊文集』2020年5月28日)