讲谈社学术文库 <英国紳士> の生态学 ことばから暮らしまで
本书は2001年に中央公论新社から新书として出版された『阶级にとりつかれた人びと――英国ミドル?クラスの生活と意见』に加笔、修正して新たに刊行したものである。英国の文化、文学において「阶级」という要素がどのように表象されているかを、19世纪以降の小説、演剧、音楽剧、映画やテレビドラマを例に挙げて考察している。この本の特徴は、「阶级」の中でも、19世纪后半にその数と存在が急激に大きくなった「ロウアー?ミドル?クラス」に焦点を当てていることである。19世纪の终わり顷には特に都市部のホワイト?カラーの俸给生活者が急増した。ワーキング?クラス出身だが、両亲よりも高度な教育を受け、肉体労働ではなく、事务员などのデスクワークについた人びとである。当时の小説や演剧ではそのように新たに「ミドル?クラス」の仲间入りをしたロウアー?ミドル?クラスが滑稽に、时には亲爱をこめて、そして时には悪意を持って描かれている。彼らはその上の阶级に属する人びとにとって、哀れんだりみくだしたりする相手というだけでなく、その存在がどんどん大きくなるという意味で胁威でもあったのだ。
それまで周縁の存在だったロウアー?ミドル?クラスが新たな消費者として意識され、この階級を読者として想定した新聞『デイリー?メイル』が1896年に創刊された。この新聞は今では最も発行部数が多い新聞である。また、彼らを想定した雑誌も次々と創刊された。そのうちの一つはコナン?ドイルの「シャーロック?ホームズ」を掲載したことで有名な『ストランド?マガジン』である。また、鉄道が発達するにつれて、空気の良いところに住んで都市に通勤したいという事務員のために、郊外住宅地が次々と開発され、「郊外住宅地」=「ロウアー?ミドル?クラス」という図式ができあがる。急速に広がっていく郊外住宅地は小説、演劇、詩の題材にもなり、郊外出身のロウアー?ミドル?クラスの小説家H. G. ウェルズのSF小説『宇宙戦争』(1898年) で火星人に襲撃されて破壊されるのはロンドンの郊外住宅地なのである。
このように、英国の文学や文化において、「階級」の要素は重要なものなのだが、「ロウアー?ミドル?クラス」の独特なイメージやステレオタイプは他の文化に属する人間からはかなりわかりにくいといえるだろう。その理由の一つは、英国の文学や文化における「ロウアー?ミドル?クラス」の表象についての研究があまりなされていないということだ。「階級」や「ミドル?クラス」を扱った研究書やエッセーは英国では後をたたないが、「ロウアー?ミドル?クラス」に焦点を当てたものはほとんどない。「ミドル?クラス」の中でも「アッパー?ミドル?クラス」と「ロウアー?ミドル?クラス」はまったく違うものでありながら、「ミドル?クラス」として一緒くたにされている。なんらかのはっきりしたイメージ (ほとんどの場合はネガティヴな) を伴う言葉でありながら、その実態やイメージの研究がなされていない「ロウアー?ミドル?クラス」が、英国を理解する上での重要な存在であることを提示するのが本書の目的である。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 新井 潤美 / 2020)
本の目次
第二章 ヴィクトリア朝&尘诲补蝉丑;&尘诲补蝉丑;せせこましい道徳の时代
第三章 「リスペクタビリティ」という烙印 (スティグマ)
第四章 「校外」のマイホーム
第五章 ロウアー?ミドル?クラス内の近亲憎悪
第六章 贵族の憧れ、労働者への共感
第七章 阶级を超えるメアリー?ポピンズ
第八章 「クール?ブリタニア――「阶级のない社会」?
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村松友視 (評) SUNDAY LIBRARY (毎日新聞 2020年3月3日)