苍生のミャンマー 农村の暮らしからみた、変貌する国
1986年、当時「ビルマ連邦社会主義共和国」と呼ばれていた現在の「ミャンマー連邦」の農村を私は初めて訪ねた。それ以来、自らミャンマー (ビルマ) 語で作成した質問票を携えて、200を超える村々を訪ね、1万人を超える人々にインタビュー調査を行ってきた。そのような継続的かつ広範囲にわたる調査を続けている研究者は、ミャンマーに関しては世界中に私しかいない。
私の専門は経済学であるので、これまでに出版した著書や論文では、調査票に基づいた経済学的分析により、ミャンマー農村の土地制度、農業生産、農外就業、農家経済、雇用関係、経済階層、農業政策などについて、様々な発見と新解釈を公にしてきた。しかし本書は、そのような調査票の細かな数値を離れて、ミャンマーの農村に生きる人々の日々の暮らし (Everyday life) を、国家の政策、土地制度、宗教、民主化や近代化といった大きな流れの中で位置づけようという意図で書かれている。事前に用意された質問票の外にある、思いもよらなかった生の現実を、如何にミャンマー現代史に即して描出するか、という課題に取り組んだ研究成果の一部である。
第1章では、農業国であるにもかかわらずミャンマー農村には農家が少ないといった農村の基本構造、コメの重要度が落ちてきているという農業の変化、そしてようやく始まった農村の近代化の概要を解説する。第2章は村の政治の話。25年ぶりの村の選挙、農民組合、農村の民主化を支援するNGO、そしてNLD (全国民主連盟) の農業政策の批判的検討が行われる。第3章では、脱農化、動力化、電化、情報化、さらには人とモノの移動の自由化、観光化といった様々な近代化と村の社会経済変容を叙述する。第4章では、村からひとりの村人へと焦点を絞って、その生涯とミャンマー現代史との関わりを語る。
ミャンマーでは人口の90パーセントが上座部仏教徒である。第5章では、骋顿笔に计上されることのない、仏教が村にもたらす経済効果についての事例研究を行っている。第6章では、コメを中心に、マメ、タバコ、スイカなどミャンマーで生产される様々な农产物をめぐって展开する社会経済の态様が描かれる。第7章では、现在でも频発している内戦や大洪水に人々はどのように対応しているのか、私自身がそれらに巻き込まれながらも、极力客観的に记述してみた。
そして最后の第8章は、理论的考察の章である。相続、农业水利、土地制度史、组织、そして村とはこういったものだと考えられていた规制概念や常识にここでは疑义を呈する。细部に拘った绵密なフィールドワークを単なる地域の描写にとどめず、理论化していくことが、地域研究のだいご味であり责务でもあると考える。
(紹介文執筆者: 东洋文化研究所 教授 髙橋 昭雄 / 2019)
本の目次
II. 民主化と農業?農村
III. 近代化と村落社会
IV. 村で生きた人、村を出る人
V. 宗教と経済の連関
VI. 農産品からみる社会経済変容
VII. 治乱に向き合う
VIII. ミャンマーの村とは何か
関连情报
著者からの紹介 (东洋文化研究所ホームページ)
MJ Business Pick Up Info (MYANMAR JAPON BUSINESS vol.60, p.47 2018年6月)