史学会シンポジウム丛书 戦后史のなかの「国家神道」
「国家神道」という言叶を闻いたことがあるだろうか? 日本で教育を受ければ、高等学校の教科书などで一度は必ず目にしたはずの言叶ではある。しかしそれについて説明せよと言われても、「戦前日本の神道やそれにまつわる仕组み」という以上に、具体的な答えを返せる人は稀だろう。それも当然である。研究者の见解からして区々なのだから。
この本は、そうした「国家神道」について、いったいこれは何であるのかと、一度でも疑问を抱いたことのあるすべての人のために、编まれた。その意味で、本书は、「国家神道」について考えようとした本である。だが、「国家神道」とは何かという问いに答えることを目的とはしていない。そもそもそうした问いに答える必要があるのか、という次元から问い直したものだからである。なぜわざわざそんなことをするのか? それは、「国家神道」という考え方が、主に戦前の在り方を指すものであるにもかかわらず、基本的には、戦后の产物であるという理解に立っているためである。
少数ながらも、「国家神道」ないしそれに近い用例は戦前にもあり、それらが戦后の政策に影响を及ぼしてもいる。しかし「国家神道」という言叶が広く知られるようになったきっかけは、1945年末に骋贬蚕が発したいわゆる神道指令であり、これが関连する领域の议论に决定的な影响力を及ぼした。占领が终わると、やがて靖国神社国家护持运动とそれへの反対运动が起き、そのなかで「国家神道」は、占领期のそれを踏まえつつも独自の定式化がなされていく。そしてそれが一般书や判例?宪法学説などを介して定着していく。つまり「国家神道」は、たとえそれが戦前のものであったとしても、戦后日本における政策や社会运动?宗教运动と切り离して理解することの难しいものなのであり、そしてまさにこのことが、「国家神道」をめぐる混迷を生み出している面がある。
こうした理解をおおむね共有しながら、専门や立场を异にする第一线の研究者を集め、2017年の史学会大会にてシンポジウムを开催した。好评を博したこのシンポジウムを受け、その时の报告をもとにした6本の论文に、10本のコラムと充実した资料编を配したのが本书である。「国家神道」についてどう考えたらよいのか、各自で判断するための共通の基盘となることを目指した一册である。
刊行后、関係する主要な学会誌等において、本格的な书评で取り上げられ、賛否さまざまな议论が展开されている。编者としては、それに逐一答えるのはなく、本书の成果を踏まえながら、自らの考えをより分かりやすい形で提示することを、次の课题としていきたい。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 准教授 山口 輝臣 / 2020)
本の目次
I部「国家神道」まで
1章 「国家神道」概念の近現代史 藤田大誠
2章 「国家神道」と南原繁 苅部 直
神道指令と公葬 前田修輔
歴史教科書のなかの「国家神道」 朴 輪貞
象徴天皇制と「国家神道」 河西秀哉
II部「国家神道」をつくる
3章 村上重良「国家神道」論再考 昆野伸幸
4章 戦後憲法学における「国家神道」像の形成 須賀博志
藤谷俊雄の「国家神道」研究 佐々木政文
新宗教研究と「国家神道」 寺田喜朗
浄土真宗と「国家神道」研究 辻岡健志
国家仏教と「国家神道」 北 康宏
III部「国家神道」のこれから
5章 「国家神道」論の現状をどう見るか 谷川 穣
6章 「国家神道」をどうするか 山口輝臣
初詣と「国家神道」 平山 昇
近世史のなかの「国家神道」 三ツ松誠
「国家神道」の余白に 小野 将
附録 「国家神道」関连年表/「国家神道」主要文献抜粋/「国家神道」研究主要参考文献
(藤田大诚+入仓滉太?木村悠之介)
関连情报
歴史から见る天皇制 桐山桂一?论説委员が闻く (中日新闻 2019年4月27日)
书评:
金子宗徳 評 (『国体文化』1153 2020年6月)
青井哲人 評 (『神園』23 2020年5月)
長谷川亮一 評 (『ピープルズ?プラン』88 2020年)
阪本是丸 評 (『史学雑誌』128 (12) 2019年12月)
新田均 評 (『宗教法』38 2019年11月)
島薗進 評 (『宗教研究』93巻2号 2019年9月)
小川原正道 評 (『日本歴史』856 2019年9月)
藤本頼生 評 (『国学院雑誌』120(4) 2019年4月)
书籍绍介 (『明治圣徳记念学会纪要』復刊第55号 2018年11月3日)
研究会:
「国家神道と国体论に関する学际的研究―宗教とナショナリズムをめぐる「知」の再検讨―」 (国学院大学たまプラーザキャンパス 2017年12月16日)