和歌文学大系50 物語二百番歌合/風葉和歌集 第50巻
本書は、明治书院から刊行中の全百冊の古典和歌のシリーズ『和歌文学大系』の第五十巻目である。『物語二百番歌合』および『風葉和歌集』の本文?注釈?作品解説に、作者名一覧?地名一覧?初句索引を付したものである。
『物语二百番歌合』は、藤原定家が异なる物语から类似する场面の歌を选んで、番えて编纂した物语歌合である。前百番は、『源氏物语』と『狭衣物语』とを左右に番える。后百番は『源氏物语』と『夜の寝覚』『御津の浜松』『参河にさける』『朝仓』『左も右も袖ぬらす』『心高き』『とりかへばや』『露の宿』『末叶の露』『海人の刈藻』といった十种の物语を番えている。前百番と后百番の成立は同时ではないともされるものの、いずれも十二世纪末から十叁世纪初头の成立と考えられる。歌合の优劣は示されていないが、『源氏物语』はすべて左方に据えられているため、より重んじられていることがうかがえる。藤原定家の物语観を知る上で、また当时享受された物语の形を知るうえで重要な资料である。
『風葉和歌集』は、十三世紀後半に成立した物語歌を集めた歌集である。文永八 (一二七一) 年、後嵯峨院皇后であり、後深草院?亀山院の母后であった大宮院姞子の命によって撰集された。本来二〇巻だったと考えられるが一八巻しか現存しない。作り物語の作中和歌一四〇〇首余りを、物語中の作歌状況などを詞書に添えつつ、勅撰集にならって春上?下、夏、秋上?下、冬、神祇、釈教、離別、羇旅、哀傷、賀、恋一~五、雑一~三といった部立に分類して編纂された。約二〇〇の物語の和歌が含まれ、『源氏物語』『うつほ物語』『狭衣物語』など現存する物語の歌が見えるほか、一八〇程度の散逸物語の和歌を含んでいる。古くから『無名草子』とならんで散逸物語の資料として注目されてきたが、近年はそれ自体の構造や配列など、歌集としての編纂意識にも注目されてきている。また『源氏物語』の歌として今日の本文には見られない歌を載せるなど、当時流布していた物語の形態を想像させる点で興味深い。
本書は三角洋一氏 (1948年生まれ、東京大学名誉教授、逝去時は大正大学教授) の単独の仕事として始められ、本文の校訂のすべてと、『物語二百番歌合』の注釈を終えられたが、『風葉和歌集』の注釈は道半ばのまま、二〇一六年五月四日に逝去された。そのため、手つかずだった末尾四分の一ほど、雑一以下の注釈と作品解説その他を高木が担当した。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 高木 和子 / 2019)
本の目次
物语二百番歌合
风叶和歌集
解説
物语二百番歌合
风叶和歌集
作者名一覧
地名一覧
初句索引