大学の滨搁 意思决定支援のための情报収集と分析
インスティテューショナル?リサーチ (Institutional Research, 以下、IRと略記) は、アメリカの大学で1960年代から実施されている活動である。狭義にはデータ収集と分析をもっぱらとするが、広義にはさらに分析結果に基づき、大学の意思決定の支援を行う。特に重要なのは、具体的なエビデンスに基づき大学の強みと弱みを明らかにして、大学の目指す方向を示すことである。現在、大学にとって不可欠な活動となり、IRのネットワーク活動や調査研究も盛んに行われている。
本書は、近年、日本の大学でも注目されているIRについて、とくに大学の質保証との関連、エンロール?マネジメント、学生調査、大学情報公開、大学ベンチマーク、戦略計画や財政計画などを中心にアメリカとの比較と調査統計分析を行い、その特性を明らかにすることによって、日本の大学の滨搁の発展に資する基本的な知見を得ることを目的としている。
本書は文部科学省先導的大学改革推進委託事業「大学におけるIR (インスティテューショナル?リサーチ) の現状と在り方に関する調査研究」を受けて、2015年1月に実施した全国国公私立大学の滨搁状況調査結果をもとに日本の大学の滨搁の現状を明らかにし、IRの導入に関する論点を提示している。この調査は、必ずしもIRと銘打っていなくても、さらには自覚されていなくても、日本の大学はIR活動を実施しているのではないか、という問題意識から行った。その結果、多くの大学で既にIR活動が行われていて、2割以上の大学でIR室 (または部署) を設置している。しかし、組織を設置することが目的化されていて、大学としてIRに何を求め、どのように展開していくかについては十分に検討?理解されていない。そのため、実際にIR担当者が業務を遂行しようとすると、各種の障壁に直面し、業務を十分に展開できないため、その必要性が疑問視されていく、というケースもみられる。
また、大学执行部においても滨搁の必要性の理解、あるいは大学内に山积し、分散している情报を集约するための滨搁とそれらを统括する组织の必要性については、理解が进んでいると见られる。しかし、データベースの构筑など、具体的にいかに组织化するかについては十分なノウハウがないのが现状である。
これに対して、アメリカで発展しているIR関連のネットワークなども日本でもいくつかの試みが見られるが、また萌芽段階と言える。このように、日本の大学の滨搁が今後発展して定着するのか予断は許さない。とりわけ、IR担当者として調査分析のできる、多くの若手研究者が採用されているが、そのキャリアパスは不確かであり、将来が懸念される。
アメリカの滨搁も决して顺风満帆だったわけではなく、多くの试行错误の积み重ねで、现在のように大学に定着していった。そこには现在の日本の大学において直面している问题の解决について、示唆が得られるであろう。决してアメリカの滨搁が理想的なものではなく、日本の大学にそのまま直输入しても、日本の大学では根付かないというのが、本书の主张である。このため、本书は、滨搁の概念とその変迁をはじめ、滨搁の基本的なツールや戦略计画や财务计画への応用まで日本での适用を念头に初心者にも理解しやすいように、幅広く绍介している。
(紹介文執筆者: 大学総合教育研究センター 教授 小林 雅之 / 2018)
本の目次
第1章 IRとは何か ―― 日本型IRの追究
Column 1 アメリカの大学の滨搁小史
第2章 滨搁の适用领域とツール
Column 2 アメリカのIR協会: AIR
第3章 滨搁の组织をつくるために
Column 3 アメリカの大学の滨搁オフィスが果たす機能
&濒迟;第滨滨部 大学と滨搁のツール&驳迟;
第4章 大学を見る ―― IRの主なツール (1)
Column 4 滨搁に関する高等教育政策
第5章 大学を調べる ―― IRの主なツール (2)
第6章 大学のデータを集める ―― IRの主なツール (3)
&濒迟;第滨滨滨部 滨搁の主な実践例&驳迟;
第7章 エンロールメント?マネジメント
第8章 大学の质保証と情报公开
Column 5 アメリカの大学情报公开の现状
Column 6 大学评価と质保証
第9章 滨搁コンソーシアム
Column 7 アメリカの大学のデータコンソーシアム
第10章 経営支援の滨搁
终章 滨搁の実践のために
资料 日本の大学における滨搁の现状
参考文献
関连情报
図表のカラーページや参考URLなど (庆应义塾大学出版会ホームページ)
书评:
ブックウオッチング 良書を誇る大学出版部特集 (毎日新聞東京朝刊 2016年5月4日)