集英社新书 0896础 ナチスの「手口」と紧急事态条项
宪法のたったひとつの条文が滥用されることで宪法自体が死文化するなどということがあり得るのだろうか。もしその条文が、非常时に権力を行政府の长に集中させ、国民の基本権を制限するという紧急事态条项であったとしたら????
本書は、自民党が日本国憲法に加えようとしている緊急事態条項をめぐって、長谷部恭男氏と語りあった対談の記録である。表題の「ナチスの手口」という表現は、現職の副総理で、財務大臣でもある麻生太郎氏が、改憲論議の進め方について公言した「あの手口学んだらどうかね」(二〇一三年七月二九日) に由来する。民主主義国なら決して真似してはならない政治手法に学べというこの言葉の真意は測りかねるが、ナチスが独裁樹立に向けて用いた「手口」のひとつが、ワイマール憲法に規定された緊急事態条項の濫用であったことは間違いない。自民党は、大規模災害?テロ対策、国民の生命と財産を守るために緊急事態条項は必要だというが、仮にこれが憲法に書き込まれ、為政者によって濫用された時、最悪どのような事態にいたるのか、20世紀のドイツで実際に起きた事例を正しく認識してほしい。対談の出発点にそんな思いがあった。
长谷部氏は着名な宪法学者で、ドイツ近现代史を専攻する私とは畑违いだが、ドイツ史にも通暁しておられる。対谈では事前に主题を决めて、レジメを交换した上で毎回数时间话し合った。その后、书き起こされた原稿に相互に手を入れ、多少顺序を変えたりはしたが、ほぼ话した通りの本になった。取り上げた主题は五つ。それが本书の章立てになった。どの主题も欠かせない论点を含むが、ここではその一部を绍介しよう。
「ナチスの手口」を取り上げた第一章では、緊急事態条項がもつ危険性を論じたが、ここで私が示唆したかったことのひとつは、緊急事態条項の濫用はヒトラーに始まったことではないということだ。ワイマール共和国末期、歴代の首相はそれぞれの思惑からこれを濫用し、議会制民主主義を骨抜きにしていった。やがて首相に任命されたヒトラーは、その「成果」の上にやはり緊急事態条項を濫用して、「授権法」(全権委任法) 制定への扉を開き、議会政治にとどめを刺したのだ。緊急事態条項は、ヒトラーのような極端な人物でなくとも、困難に直面した為政者が安易に手を出したくなる危険な代物なのである。
第三章では、それにも拘わらず、戦後のドイツでなぜ、憲法 (基本法) に緊急事態条項が書き込まれたのか。そして、そこには濫用を未然に防ぐためにどんな厳しい仕組みが作られたのか。基本法にはいかなる場合も変えられない「永久条項」が存在するという点を含めて、これこそ「学んだらどうかね」といいたくなるような論点を掘り下げた。第四章では、日本の緊急事態条項はドイツよりなぜ危険なのか。「高度に政治的な問題については、裁判所は司法審査権限を行使しない」という「統治行為論」がいまだに支配的な日本司法の問題点を検討した。この法理を退治しないで緊急事態条項を日本国憲法に加えるのは、危険極まりないということである。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科?教养学部 教授 石田 勇治 / 2019)
本の目次
第一章 緊急事態条項は「ナチスの手口」―大統領緊急令と授権法を知る
紧急事态条项の正体/「ナチスの手口」とは何だったのか/一九二九年の世界恐慌で机能不全に陥った国会/议会制民主主义の崩壊を招いた大统领紧急令/シュミットの议会制民主主义への絶望/名望家支配のあとの大众政治の限界/大统领紧急令の滥発と国会の形骸化/ナチ党を第一党にした运命の选挙/政権が画策していたワイマール宪法解体计画/独裁がとりうる形态―「委任独裁」と「主権独裁」/暴力に里打ちされる「主権独裁」/なぜ紧急事态条项から「主権独裁」が导かれたのか/保守派が利用しようとして生んだヒトラー首相/ヒトラーの叁つの道具/「议事堂炎上事件」でついに国家の紧急事态を宣言/新事実! 议事堂炎上事件はナチスの自作自演/「合法革命」というプロパガンダ/公法学がなぜナチスに対して无力だったか/共产党议员を拘束して成立させた授権法/授権法は宪法改正法だった!/ヒトラーの「决められる政治」を受け入れた世论/紧急事态条项がナチ独裁を可能にした/宪法优位の大原则が确立していなかった?/宪法改正には限界があると主张したシュミット
第二章 なぜドイツ国民はナチスに惹き付けられたのか
共产主义が、ナチスか/ナチ党は「労働者のための党」ではない/ワイマール末期と似た现代日本の政治/议会制民主主义の限界とどう向き合うのか/ナチ党の纲领を読み解く/再定义された「国民」/「难民问题」がナチ党支持を広げた/中间层の不満につけ込んだナチ党/个人主义を否定するナチ党纲领/民族共同体が阶级意识を打破する/若き知识层を魅了した「保守革命」/ワイマール宪法を否定したかった新保守/保守革命とナチズムを架桥した知识人
第三章 いかに戦後ドイツは防波堤をつくったか―似て非なるボン基本法の「緊急事態条項」
「主権独裁」という诱惑/一度は削除された紧急事态条项/「ドイツの主権回復のため」は建前?/东西冷戦が紧急事态条项を復活させた/いかにして暴走を避けるか/紧急事态を绞り込む/行政府にも个人にも権力を集中させない/肝心なのは中央と地方の连携/紧急事态条项は宪法の根本を変えてはならない/宪法を守るための「戦う民主主义」/なぜドイツでは宪法改正を何度も行っているのか/缚りがなければ「紧急事态」の范囲は拡大する
第四章 日本の緊急事態条項はドイツよりなぜ危険か―「統治行為論」という落とし穴
フランスの非常事态宣言への误解/厳格な要件で缚られたフランス紧急事态条项/戒厳令がまとう歴史/规定の少ないアメリカの紧急事态条项/総理が决めればいつでも紧急事态となる自民党改宪草案/日本に「主権独裁」があらわれる?/紧急事态条项は本当に必要なのか/どうしても紧急事态条项をつくるなら/「统治行為论」という落とし穴/戦后ドイツに「统治行為论」は存在しない/司法が优位に立つアメリカ/「统治行為论」の母国フランスでは/内阁の人事権限という日本司法の大问题/不安を煽って権力集中をはかったのが「ナチスの手口」/天赋人権説を捨てたい自民党
第五章 「過去の克服」がドイツの憲法を強くした
どんな记忆を伝承するのか/戦后初期は犠牲者の追悼どころではなかった/外圧と独立のためのユダヤ人补偿问题/アウシュヴィッツすら语らなかった西ドイツ/分岐点となったアイヒマン裁判/时効との闘い/「私たちにも罪がある」/変わる若者と戦后初の政権交代/一本のドラマが国民の心を动かした/保守派の反动的な动きとヴァイツゼッカ―大统领の演説/ハーバーマスの宪法爱国主义/谢罪は终わるのか/歴史も宪法も「向き合いたくないもの」/「向き合わねばならぬ」という市民の力を/安全保障とは宪法の基本原理を守ること
おわりに―宪法の歴史に学ぶ意味 长谷部恭男
参考资料 ボン基本法における紧急事态条项及び関连条项
参考?引用文献
関连情报
ナチ独裁への入り口となった「大統領緊急令」と「緊急事態条項」の共通性。政権が自由に法律を作り、国民の基本権は停止される?!―石田勇治さんに聞く (THE BIG ISSUE ONLINE 2018年12月7日)
「危険な自民党の『紧急事态条项』宪法に新设されたら日本もナチス前夜に」 (季刊『社会运动』430号 2018年4月)
ナチ党台头に学ぶ宪法改正 熊仓逸男?论説委员が闻く (东京新闻 2018年2月17日)
奥别产连载&补尘辫;记事:长谷部恭男 宪法学の虫眼镜「その12 プロイセン宪法争议」 (羽鸟书店ホームページ 2018年2月7日)
闻き手:星彻 石田勇治?东京大学教授に闻く「ナチスの手口と安倍政治の危険性」 (週刊金曜日1154号 2017年9月29日)
ナチ研究の第一人者が看破 自民案「紧急事态条项」の正体 (日刊ゲンダイ 2017年9月19日)
トークイベント、讲演、ラジオ出演:
改宪のねらいカンガエル 26日から武蔵野市で 50回目の上映会 (东京新闻 2019年4月24日)
宪法特别讲演「ナチスの『手口』と紧急事态条项~ヒトラー独裁の歴史から学ぶ」 (2018年11月24日)
憲法便り#2671 『ナチスの「手口」と紧急事态条项』講師:石田勇治 (2018年10月7日)
講師:石田勇治《芸术と憲法を考える連続講座》第8回 「ナチスの手口」と芸术 (2018年7月24日)
早稲田エクステンションセンター 講師:石田勇治 ナチスの「手口」と紧急事态条项 (2018年5月)
【音声配信アリ】「改めて知る “ナチスの手口”~ヒトラーは実際何を目指し、何を行ったのか?」
石田勇治虫荻上チキ (罢叠厂ラジオ「荻上チキ?厂别蝉蝉颈辞苍-22」 2017年9月7日)
独裁「前夜」の危うさ ナチスの手口と紧急事态状况 (社会神奈川新闻 2017年8月31日)
【動画配信アリ】『ナチスの「手口」と紧急事态条项』刊行記念 長谷部恭男先生×石田勇治先生 (2017年8月24日)
トークイベント 前半
トークイベント 后半
【第266-274号】岩上安身のIWJ特報! 「改憲勢力3分の2」で現実化する「ナチスの手口」 ヴァイマル末期と酷似する現代日本 東京大学教授?石田勇治氏インタビュー (岩上安身のIWJ特報! 2016年9月11日)
书评:
霧山昴 評 「弁護士会の読書」 (福岡県弁護士会 2018年4月17日)
书籍绍介 ナチスの手口と紧急事态条项 (北海道民医连新闻 2017年10月12日)
齋藤純一 (早稲田大学教授?政治学) 評 (朝日新聞 2017年10月1日)
(日刊ゲンダイ 2017年9月28日)
書籍『ナチスの「手口」と紧急事态条项』」 (法学館憲法研究所 2017年9月25日)