谁も知らない香港现代思想史
香港という地名は谁でもご存じでしょう。しかし日本で暮らしている人间が香港を真の意味で理解するのは、とても难しいことです。その理由は、简単に言えば、香港の歴史が复雑で日本とはまったく异なるからですが、もう少し正确に言うと、香港の歴史の复雑さは、日本の歴史を基轴として考えるかぎり、ほとんど想像できないものだからです。香港を考えるために重要なことが、日本では経験されなかったのみならず、概念として考えられたことすらありません。
香港というとアジアにおける金融の中心地、あるいは商业都市としてよく知られ、近年は雨伞运动などの政治活动でも注目を集めています。しかしなぜ金融都市となったのでしょうか。あるいはなぜ近年急に政治运动が盛り上がったのでしょうか。政治と経済が分裂して先鋭化しているのでしょうか。それとも両者のあいだには内在的な関係があるのでしょうか。こうしたことを考える手がかりとして、思想のレベルにおいて香港の歴史をたどり直そうとしたのが、本书の试みです。
笔者の罗永生氏は、香港においてカルチュラル?スタディーズの立场から思想と実践の活动をしています。この本が出版されたときには岭南大学の教员でしたが、その后大学を辞め、在野の立场で思想を基盘とした実践活动を展开しています。
罗永生氏によると、香港の歴史を思想として理解するための键はイギリスによる植民地统治です。イギリスの植民地统治、とくに香港で二〇世纪后半に行われた植民地统治は、间接统治というべきもので、イギリス人と上流阶级の华人が结託して行う共犯的统治だったと言います。イギリス人は上流华人に一定の権限を与え、経済的な成功を「近代化」として崇高な目标にしました。上流华人たちは、その目标を追求することで、近代人になったと感じることができました。しかしそれはイギリスの植民地统治の枠内において许される限定的な「成功」でしかありませんでした。
罗永生氏がそれに対して求めるのは、香港で生きる人々の主体性の确立です。ただし主体性と言っても、排他的なアイデンティティのことを指すのではなく、まして香港独立を求めるのではありません。彼が求めるのは、植民地意识を脱して、自分のコミュニティのことに自分で责任を持つ意识を持つことです。
植民地统治を轴として香港の思想と歴史を考えるのは、罗永生氏独自の视点と言うべきもので、必ずしも香港の歴史を説明する唯一の见方ではありません。とはいえ本书は、香港を考えるための、日本の経験とはまったく异なる一つの轴を提供してくれます。香港の歴史と现在を、香港の経験に即して思索するための手がかりになるでしょう。
なお本书は、日本の読者に向けて编者が特别に编集した日本オリジナル论集です。本书を手に取り、东アジアの多様な思想に触れることの知的な刺激を味わってもらえたら何よりです。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 鈴木 将久 / 2018)
本の目次
【第1章】
香港现代思想史──「本土意识」の歩み
【第2章】
冷戦下の脱植民地化香港──「中文公用语化运动」の详论
六〇、七〇年代香港の返还言説
【第3章】
七?一をふりかえる──市民共和のポストコロニアルな主体性の议论とともに
香港は「国民教育运动に従わない」
勇士の凯旋に际して保钓をふりかえる
コンセンサスが崩れた新选挙文化
【第4章】
バーチャル?リベラリズムの终结
植民地主义一つの见失われた视野
主体性をもった本土性に向けて
香港现代史略年表
解説 方法としての香港 (丸川哲史)
関连情报
闘いは続く――植民地主義から脱出する方法とは何か (図書新聞3223号 2015年9月12日)
羅永生氏インタビュー (聞き手?池上善彦氏)
书评:
本橋哲也 (東京経済大学教員?カルチュラル?スタディーズ専攻) 評 (週刊読書人 2015年10月30日)
中村元哉 (津田塾大学教授) 評 (日本経済新聞 2015年10月4日)
(东京新闻/中日新闻 2015年9月27日)