藤原道长事典 御堂関白记からみる贵族社会
本书は、藤原道长が生き见ていた十世纪末から十一世纪初めの贵族社会のあり方を、いくつかのテーマにわけ事典の形をとって具体的に明らかにする试みである。1985年以来、30年近くかけて完成した山中裕编『御堂関白记全註釈』全16册の成果を継承して、1000项目をめどに『全註釈』の频度の多い项目を选んで解説した。それを「政务?仪礼」以下「御堂関白记の表现」にいたる11のテーマに项目を分类し、それぞれのテーマの冒头には摂関期における特色を明らかにする解説をおき、また巻头に编者の大津透と池田尚隆による歴史?文学の立场から道长の役割や実像に迫る総论「藤原道长のめざしたもの」「文学作品に描かれた道长」を载せた。摂関期に存在した制度や官职であっても、『御堂関白记』には出てこない项目は立っていないので、道长にとって现実に意味があったことを取り上げている。事典というと、公正だが无味乾燥な叙述になりがちだが、道长にとっての意味や人间関係、贵族社会における意味を中心に叙述しており、道长が生き见た世界を描くことをめざしているので、読んでおもしろい事典になっているのが特徴である。
この20年ほどで摂関期を中心とする平安时代の研究は制度や仪礼研究を中心におおきく进歩した。本书はそうした最新の研究成果を取り込み、また参考文献に関係する论文をあげているので、とくに「政务?仪礼」「官司?官职」などの项目解説は、辞书的説明だけで分からない具体的な事例も示していて大きな意义があると思う。仏教?神事?学问?芸能などの章でも、道长の文化史上での歴史的贡献や进歩性は特笔すべきものがあり、そうした分野での道长の実像にも迫っている。
また実際に平安時代の古記録 (貴族の日記) を読む上で、よくわからないこと、しばしば見えるが辞書には説明がないことはきわめて多い。本事典では、普通の事典には立てられない項目が多く立項されており、これから平安時代の研究に取り組もうとする若い人々のためになるのではないかと考えている。また歴史専門の研究者と文学専門の研究者が共同して執筆を行っているが、これは学界では希少な事例といえ、本事典の特色であるが、道長の多面性を見せることにもなっている。この事典を読むことによって、道長の全体像が浮き上がってくるといえるだろう。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 大津 透 / 2018)
本の目次
【道长の世界をさぐる】
藤原道長のめざしたもの (大津 透)
文学作品に描かれた道長 (池田尚隆)
【政務?儀礼】 [磐下 徹?大隅清陽?大津 透?黒須友里江]
藤原道長と政務?儀礼 (解説: 磐下 徹)
【官司?官職】 [大津透?武井紀子]
摂関期の官職構造 (解説: 大津 透)
【道長をめぐる人びと】 [植村眞知子?木村由美子?倉本一宏?黒須友里江?中村康夫?福長 進?吉田小百合]
藤原道長の人間関係 (解説: 黒須 (林) 友里江)
【邸宅?地名】摆松野彩?吉田干生闭
平安京と邸宅 (解説: 松野 彩)
【神事?神社】 [武井紀子?丸山裕美子]
平安時代の神祇祭祀 (解説: 武井紀子)
【仏事?寺院】 [磐下 徹?藤本勝義?松岡智之?松野 彩?吉田幹生]
藤原道長と仏事?寺院 (解説: 池田尚隆)
【風俗?信仰】 [中島和歌子]
貴族の風俗と信仰 (解説: 中島和歌子)
【学問?芸能】 [佐藤信一?妹尾好信?塚原明弘?吉田幹生]
藤原道長と学問?芸能 (解説: 吉田幹生)
【衣食住】 [近藤好和?松野 彩]
貴族の衣食住 (解説: 近藤好和)
【病と医療】 [丸山裕美子]
藤原道長の病と医療 (解説:丸山裕美子)
【御堂関白記の表現】 [池田尚隆]
『御堂関白記』の伝来 (解説: 倉本一宏)
藤原道長年表 (木村由美子)
参考付図 ([1] 平安宮内裏図 / [2] 平安宮清涼殿図 / [3] 東三条殿復原図 / [4] 土御門第想定図)
藤原道长略系図
项目索引
関连情报
「京都新闻」(2017年9月22日)
「夕刊 読売新闻」(2017年10月19日)
「中外日报」(2017年10月20日)
「古代文化」第69巻第4号 (2018年3月30日)
「ヒストリア」第267号 (2018年4月20日)