エンドレスエイトの惊愕 ハルヒ@人间原理を考える
「人間原理」という科学方法論の芸术学的応用を模索してきた私にとって、人間原理を下敷きにしたライトノベルSF『涼宮ハルヒシリーズ』は、気になる作品でした。しかも『ハルヒ』のアニメ版は、オタク文化史上最悪とも言える事件を起こしていました。「エンドレスエイト」という同一のエピソードを、ほぼ同じセリフ?同じ展開で、8週繰り返し放送したのです。夏休みの時間ループを忠実に描くという実験的試みでしたが、反復回数が予告されなかったこともあり、ファンは困惑し、ネット実況板は炎上し、視聴率も急落しました。
たしかにエンタテイメントとしては非常识でしたが、アニメ全体のクオリティに照らすと、当该8回分だけ失败作と切り捨てるのは踌躇されます。そこで私は「エンドレスエイト」再评価の道を探るべく、専门とする分析哲学の流仪で考察に取り组みました。
物語展開を故意に妨げる演出だったので、モダニズムアート的な「細部の表現」を評価できないか。あるいは、視聴者の反応を含めた「ミニマルアート」や「参加型プロジェクト」として有意義かも。……次々とカテゴリ変換を試みたあげく、各カテゴリの規範そのものを問い直す芸术、すなわち「コンセプチュアルアート」という見立てが最も有望と思われました。作品原物をあえて見ずとも、伝聞によって理屈を把握すれば鑑賞完遂――そういった種類の、意識高い系のメタ芸术。そう、デュシャンのあの便器の仲間というわけです。
実际、コンセプチュアルアート视を催促する手掛かりが作品のあちこちに见つかりました。ループ日数がジョン?ケージの音楽の演奏时间をなぞっていたり、キャラクターが自作映画のジャンルを操作したり。しかしそうした証拠固めのためには、当然ながら作品をよく见て、物语と表现を味わい直さねばなりません。こうして私は、物语&谤补谤谤;表现&谤补谤谤;プロジェクト&谤补谤谤;コンセプト&谤补谤谤;物语&谤补谤谤;&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;というカテゴリループに巻き込まれました。とくに、长门有希という无机的ヒューマノイドが人间的感情に目覚めてゆく有様には「普通の物语アニメへ戻して!」と叱责されたように感じ、『ハルヒ』の鲜烈な自己言及ループ属性に鸟肌が立ったほどです。
物语外のカテゴリループは物语内の时间ループと共振し、ループへの解釈を煽り、诸解釈のループを生み出しました。なぜバタフライ効果のない単调な反復になったのか。なぜ长门はシークエンス回数を数え间违えたか。人间原理や诸々の形而上学説を駆使して、谜の多くを解き明かし、関係づけることができたと自负しています。
本書の究極の目標は、第10章で粗描した「人間原理芸术学」でした。自意識過剰な前衛演出が古典的萌えアニメに新たな生命を吹き込む顛末を辿った本書は、メタ芸术の歴史的意義を人間原理視点で書き換える大構想の第一歩です。『ハルヒ』の制作陣が登場人物たちとともに抱いたシニカルな誇大妄想こそ、我が芸术学研究のお手本であり続けるでしょう。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科?文学部 教授 三浦 俊彦 / 2018)
本の目次
第1章 エンドレスエイトの惊愕 (前) 「なにこれ!」
第2章 エンドレスエイトの憂鬱 「やりきれんな……」
第3章 エンドレスエイトの溜息 「やれやれ……」
第4章 エンドレスエイトの退屈 「いいかげんにもう……」
第5章 エンドレスエイトの消失 「どうしてこんなことに……」
第6章 エンドレスエイトの暴走 「やりすぎでしょ……」
第7章 エンドレスエイトの動揺 「いや、まだまだでしょ……」
第8章 エンドレスエイトの陰謀 「この手でどうだ……?」
第9章 エンドレスエイトの憤慨 「その手にのるか!」
第10章 エンドレスエイトの分裂 「それだけじゃないだろ?」
第11章 エンドレスエイトの惊愕 (後) 「まさかこれほどとは!」
あとがき …………エンドレスエイトの秘話
参考文献索引
関连情报
トカナ 全3回 (稲田豊史)
鼎谈:
ゲンロンカフェ
「『エンドレスエイトの惊愕』の驚愕」 2018/05/29 (坂上秋成 × 三浦俊彦 × 村上裕一)
当日のスライド资料
书评:
ヌートン 新たな情報未発見メディア (ダ?ヴィンチ?恐山)
Book News|ブックニュース (永田 希)
図書新聞 2018年5月19日 (小池隆太)
koratta4545
节、小见出し入りの详细な目次:
参考文献表: