ちくま新书 行政学讲义 日本官僚制を解剖する
本書は、一般読者向けに、日本の行政と官僚制を紹介するものである。タイトルは、「行政学讲义」となっているが、学界の標準的な教科書とは言えない。従って、大学の講義で教科書として利用することは、講義する者が相当程度に標準的な知識を補足することがなければ困難である。本書は筆者自身の固有の行政学である。もちろん、本書で書かれている内容は、事実であると確信している。ただ、描く者によって、同じ事実をもとにした日本行政や官僚制も、多様な姿として表現されるだろう。
统治者と被治者の同一性を想定する民主主义でも、支配の契机は消えない。実体的な支配の作用を担うのが為政者であるが、その中心は行政であり官僚制である。しかし、自由主义的民主主义においては、行政や官僚制を民主的统制する政治や自治や、民众の直接的な参加や、个人の自由が重要である。これを扱うのが第1章である。
為政者による支配を制约するのが、第2章で採り上げる外界の存在である。自然や社会?家族などは、行政が支配を目指す対象であるともに、支配の限界を画する环境であり、非常に大事である。特に、外国?国际関係と资本主义市场経済の制约は大きい。また、败戦国日本では、特殊な外国としての米国を无视できない。
支配の担い手が、第3章で扱う官僚制を中心とする支配集団たる身内である。身内のなかの身内が、行政组织と官僚集団である。そして、行政组织と官僚集団は、一部の外界と结合して為政者集団を形成する。全ての被治者が身内となることはない。政界?业界?学界?报道界?地方界と结合した六角形の身内集団が形成される。そして、この六角形の结合は、様々な人脉によって形成され、また、六角形が人脉を再生产する。统治者と被治者の同一性を标榜する民主主义の理念はあるものの、现実には、為政者侧の身内にもなる被治者と、身内から排除される被治者とが、分化する。
為政者は、被治者に対して支配の作用を及ぼす。その回路が、第4章で扱う実力、法力、财力、知力の4つである。実力は支配の最も赤裸々な姿であるが、法的里付けという法力や正しい情报?知识という知力が必要である。また、支配を强制するよりは、财力や知力で被治者の同意を得る方が望ましいし、财力や知力で支配をある程度达成することが、実力や法力を助ける。4つの力は、相互に补完し合ながら、為政者による支配を実现する。
以上のような実态を踏まえ、民众の行政とのつきあい方を终章では模索する。全ての被治者が為政者の身内になることは可能ではないが、為政者の身内は全ての被治者に対して开放的であるべきである。また、全ての民众が為政者侧の身内になることは、為政者目线の内面化であって、现実の支配の民众に対する不条理を隠蔽することでしかないから、身内になればよいことではない。むしろ、為政者の身内にならない被治者民众の人生を保障することも、健全な支配のためには必要である。包摂と保障の双方が求められる。
(紹介文執筆者: 法学政治学研究科?法学部 教授 金井 利之 / 2018)
本の目次
第1章 支配と行政
第2章 外界と行政
第3章 身内と行政
第4章 権力と行政
終 章 行政とのつきあい方