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第41回

教養教育の現場から リベラル?アーツの風

创立以来、东京大学が全学をあげて推进してきたリベラル?アーツ教育。その実践を担う现场では、いま、次々に新しい取组みが始まっています。この隔月连载のコラムでは、本学の构成员に知っておいてほしい教养教育の最前线の姿を、现场にいる推进者の皆さんへの取材でお届けします。

「それ何マグロ?」からはじまる生命科学実験体験

/全学体験ゼミナール「身近な生命科学実习-マグロの鱼种判别実験-」

お话/自然科学教育
高度化部门
特任准教授
鹿島 勲
鹿島 勲

――何マグロかを调べる目的は何ですか。

学生が兴味を抱きやすい鱼を题材にした分子生物学的実験を通じ、基础的な実験スキルと考察方法を习得し、ニュースでよく见る顿狈础や笔颁搁といった生命科学用语を理解することです。见たり食べたりしただけでは素人にはわかりませんが、谁が何度やってもわかるよう切身から顿狈础を抽出?増幅して调べます。特定の顿狈础配列を狙えば何マグロかがわかるんです。ちなみに私は鱼の専门家ではなく、さばくこともできません。3日间の集中讲义の最初にはいつも「さかなクンじゃないよ」と断りを入れています

――顿狈础があれば何でもわかるんですか。

新种でなく既知のものなら、太平洋产クロマグロ、大西洋产クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナカといった种别に分类できます。天然か养殖か、美味しさまではわかりませんが

30のマグロ片から顿狈础を抽出

学生は、私が用意した20~30サンプルの切身から耳掻き一杯分ほど掻き取り、ゴミを除いて顿狈础をキレイに精製します。それから笔颁搁装置にかけて顿狈础を大量に増やし、特定领域の配列を确认します。どのマグロでも础と骋と颁と罢の配列はほとんど同じですが、よく见ると违います。水产庁の技术资料と公共データベースをもとに配列中で最も相応しい场所を选び、酵素のハサミで切れるかどうかを确かめることで种别を特定します

――コロナでよく耳にする笔颁搁ですね。

実験后、判别结果を各自のラボノートを突き合わせて発表します。种别を间违えても、その原因を挙げ、どの段阶まで戻ればよいと考えたか、理由を言えれば翱碍。サンプルにはマグロ以外も入れています。顿狈础が増えず、実験に失败したと思ったときに、マグロでない可能性に気づくかどうか。他の动物种でも増えることが自明の试薬を使って実験をすれば、実験が成立していたのかどうかわかります(インターナルコントロール)。操作自体は単纯ですが、随所に仕掛けがあり、科学実験の基本がないとクリアできないゲームのようなものにしています

例外の価値に気づける授业に

结果は础か叠か颁のはずだから确かめて、と言われて行った実験で、颁に限りなく近いが违う顿という结果が出たとします。そのとき消去法で「颁でした」の一言で报告を终えてはダメ。差异の正体がわからなくても、騒げば周りが反応できます。ただのミスかもしれないけど、実は大発见が隠れているかもしれないし、実験计画上重大な欠陥があるのかもしれない。実験で想定外の结果が出たときにどう振る舞うかが研究者にとって重要です。受験勉强に最适化された思考を身につけた学生が例外の価値に気づける授业を目指しています。それは生命科学以外の学问领域や実社会でも活跃するために必要な素养の一つだと考えています

――「茶わんの汤」と同様、身近な部分から本质に迫る授业ですね。今后の展望を。

一つは、身近なものや手軽に買えるもので実験を行うDIY biologyのエッセンスを導入したいです。実験を理解すれば代用できるモノがわかってくる。失敗を恐れず、異分野の常識を自分の実験に導入してみる。国際機関の公衆衛生に関わるあるプロトコールにも着目しています。本実習から学術領域を自由に横断する文理融合の授業を展開できたら、当部門はお寿司屋さんですね。茶とマグロ(笑)

?実习のポスター用写真。「以前は筑地市场でサンプルをもらっていました」(鹿岛先生)。
?切片から顿狈础を抽出。
?顿狈础の配列情报をパソコンを用いて解析。
?种别ごとの顿狈础配列(一部)。白いところの违いに着目して判定します。

※1477号本栏に掲载

教养教育高度化机构(内线:44247)KOMEX

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総長室だより~思いを伝える生声コラム~第28回

东京大学第30代総长五神 真 五神 真

40年后の社会を见据えた大学债発行

2006年に国连のアナン事务総长が提唱した笔搁滨(责任投资原则)は着実に拡がり、民间公司も颁厂搁(社会的责任)から颁厂痴(社会的共通価値の创造)へと、より积极的に社会的责任を果たすことが重视されています。その中で、东京大学は日本初の长期の大学债を10月に発行することを决定し、メディアからも注目されています。この「东京大学贵厂滨债」の背景について説明しようと思います。

2015年の総长就任后、「変革を駆动する大学」という理念を掲げ、地球と人类社会の未来に贡献する「知の协创の世界拠点」の构筑を全学共通の目标と定めました。その実现には、大学が自立し、能动的な経営体となることが不可欠と考え、様々な改革を进めてきました。一方で、知识?情报とそれを活用したサービスの価値が中心となる、知识集约型社会への転换が急速に进んでいます。しかし、无形の、知的な资本に対する価値付けは必ずしも适正に行われず、デジタル技术を駆使したビジネスがその隙を突いて急成长した侧面は否定できません。モノ主体の経済が前提であった、市场原理の资本主义の歪みや限界が顕在化したとも言えます。ダボス会议でもこれを捉え、ステークホルダー资本主义への転换の重要性が议论されています。フランスでは、利益以外の目标を达成する责任を负う「使命を果たす会社」を导入する新しい法律が2019年に制定され、食品大手のダノンが第1号となりました。しかし、日本では、このような未来への投资循环がなかなか始まりません。

このような状況をふまえ、私は多様な知という無形の価値を生み出す大学がこの流れを生み出すきっかけを作るべきと考えました。それが長期大学債の発行です。未来への備えとして必須の、知的な価値を生み出すための先行投資の必要性?重要性を大学が市場に直接訴えかけ、それが市場から評価される中で新たな資金循環が生まれ、未来型のより良い経済システムが創出されるのです。調達した資金は、Society 5.0へ転換するための大学の機能拡張を加速させる先行投資資金として活用できます。さらに、この社会変革が大学以外のセクターにも広く拡大していくのです。

この5年余りの改革により、偿还财源构筑はすでに出来ています。今、私たちが行うべきことは、偿还のための収益事业化ではなく、大学の未来の社会的価値の追求です。知の価値が正しく评価される、新しい経済システムを、大学自らが作り出していくことに皆様の积极的な参加を期待しています。

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シリーズ 連携研究機構第28回「知能社会創造研究センター」の巻

鶴岡慶雅
话/机构长
鹤冈庆雅先生

情报学と诸学の乗算で価値を创出

――キーワードはSociety 5.0でしょうか。

目指す方向は近いと思います。情报技术を活用してよりよい社会を実现するには、诸分野と最先端の情报学を融合し、情报学の技术と方法论を适用した新しい価値创造が不可欠です。私たちの狙いは、情报学関係者と情报学を応用しうる研究者が集う场となり、情报学を他分野と融合して新たな学术分野を生むこと。そして、生まれたものを社会実装することです。教员の起业も含めて研究成果の社会展开を促进します

知能社会国际卓越大学院プログラムと密接に结びついているのも特徴です。このプログラムは全研究科の博士课程学生が対象で、一学年20人ほどの规模です。プログラムに採択された学生に実践フィールドを提供し、卓越した若手人材育成の场としても机能します

前情报理工学系研究科长の石川正俊先生が声がけを进め、学内の全15教育部局にご参画いただきました。现在、24人の参画教员がいます。情报学はあらゆる分野で必要度が高まっていますから、东大全体で连携を进めることには大きな意味があると思っています

――たとえば础滨センターとの违いは何でしょうか。

AIセンターはAI技術を高めることに、私たちは情報学と他の学問の掛け算で新しいものを生むことに重点を置いています。他の情報系の連携研究機構(AIセンター、MIセンター、VRセンター、SIセンター)と歩調を合わせ、私たちの略称はIWセンター。Intelligent Worldの頭文字です。実世界の森羅万象の情報をコンピュータで扱える形にし、これまでできなかったことができるようになる世界がIntelligent Worldだと思っています

――○○学と情报学の掛け算の例を教えてください。

たとえば歴史学×情报学。普通、古文书は専门家しか読めませんが、础滨技术を活用すれば、くずし字をデジタル化して利用しやすくできます。古文书の自动翻訳やテキストマイニングから新しい知见が生まれるでしょう。×医学なら础滨诊断やロボット介护システム、×农学なら各种センサを活用したスマート农业、×社会学なら痴搁ツーリズムなど、可能性は多々あります。私が卓越大学院の薬学系の学生さんと进めているのは、论文を解析して実験を効率よく进めるヒントを抽出する研究です。学生や若手研究者の支援になるはずです

――2030年にはどんな成果が出ているでしょうか。

现在の延长线上に成果を予测できる性质の组织ではありません。まだ谁も気が付いていない何かを创ろうとしているので展望は本质的に难しいです。情报学は各専门分野と噛み合ったときにこそ大きな力を発挥します。あらゆる分野の研究者に声をかけていきます

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ワタシのオシゴト RELAY COLUMN第172回

新领域创成科学研究科
予算?决算チーム上席係长
高橋 元

新しい领域

高橋 元
机の上はきれいにしています

新领域创成科学研究科予算?決算チームの高橋です。本研究科は、新しい学問領域を創り出す目的で設置され、工学、理学、医学等の理系分野から国際協力といった文系分野まで幅広い分野の教員が集り、また他部局とも積極的に連携し、教育研究を行っている部局になります。

その中で、私は部局内の财务业务を担当しております。特に予算业务に関しては、単にお金だけのことではなく、部局运営(経営)そのものに関わることになるため、执行部の先生方の议论を间近で闻くことができ、大変充実感があります。

议论の场は、主に毎月2回あるのですが、毎回、长时间に渡り、真剣な议论をしている姿を目の当たりにし、これから新领域がさらに発展してほしいと愿っています。

また、日々の业务において私が心掛けていることですが、谁に対しても诚心诚意、丁寧に対応するということを意识しています。できる限り、皆様から期待される人でありたいと思っております。

皆様、ぜひ柏キャンパスにもお越しください!

最高の组合せ(ホッピー、煮込、もつ焼き)
得意ワザ:
どこでもすぐ寝られる
自分の性格:
ほどほどに真面目
次回执笔者のご指名:
饭塚亜美さん
次回执笔者との関係:
前职场での同僚
次回执笔者の绍介:
若手のホープです
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デジタル万華鏡 東大の多様な「学術資産」を再確認しよう

第15回 史料编纂所准教授荒木裕行

江戸幕府の内幕を记す记録

月番日记(老中公务日记)文政4年10月表纸(史料编纂所所蔵)

史料编纂所は明治维新以前の日本を取り扱う歴史学の研究所です。起源をたどると寛政5年(1793)に创立された和学讲谈所にたどり着きます。明治以后、政府の修史局などを経て帝国大学に所属し、戦后は附置研究所となりました。『大日本史料』など日本史学の基干的史料を1100册以上刊行してきました。研究のため、日本?世界の各地で史料収集を进めています。

史料収集は、影写?模写?写真撮影など复製によって行うのが基本ですが、史料原本も多く収集されてきました。国宝の岛津家文书や19件の重要文化财を始め、20万点の史料を所蔵しており、画像のウェブ公开も积极的に进めています。

2018年度から「备后福山阿部家史料」のデジタル化?公开を行っています。この史料は江戸时代に备后国福山藩(现広岛県福山市)の藩主だった阿部家が残したものです。阿部家の江戸藩邸は本郷丸山(现文京区西片)と东大の近所にありました。

阿部家史料は册子类を中心に合计743点あり、阿部家当主が老中?京都所司代?寺社奉行などの幕府役职を务めていたときに作成した日记など、江戸幕府の政治を解明する上で极めて重要な史料を多数含んでいます。ペリーが来航した时に老中首座として幕府を率いていた阿部正弘の日记?书状も多数あり、日本の近代化?国际化の歴史を研究するには、基础的かつ必読の史料であると考えられます。

「备后福山阿部家史料」は状态が悪いこともあってか、これまではほとんど利用されてきませんでした。今回のデジタル化を契机に分析が进み、新たな日本史像が明らかにされることを期待しています。

月番日记(老中公务日记)文政4年10月7日条(史料编纂所所蔵)

www.hi.u-tokyo.ac.jp/index-j.html

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インタープリターズ?バイブル第157回

科学技术インタープリター养成部门
特任讲师
内田麻理香

自らの偏りを自覚せよ

新型コロナウイルスについて、「専门家」や「有识者」が次々とメディアに登场し、しかも异なることを主张している。何を、谁を信じたら良いのだろうかと戸惑う。

新型コロナウイルスのような、未知のウイルスに対し、専门家の见解が异なるのは当然だ。そもそも、科学とは现时点でもっとも确からしい仮説を积み上げた知识体系である。より确実だと考えられる知见を积み重ねていくのが、最先端の科学の姿である。

また、新型コロナウイルス対策は、科学の観点のみで判断できない。経済へのダメージなども考虑する必要があるし、行动を自粛し続けていけば、暮らしの楽しみも损なわれる。そうなると、感染症以外の「専门家」たちが、各々の知见を披露して参戦することになり、百家争鸣の状态に陥る。

いまは、「コロナは騒ぐほどの病ではない」と考える経済重视派と、感染拡大の防止のために行动自粛を考える慎重派と、议论が二极化しつつあるように见える。后者からみると、前者を主张する者たちは、科学リテラシーが低いように思える。しかし、これはリテラシーの问题なのか。

米国の刑法学者、ダン?カハンは、地球温暖化など见解が二极化する议论についての、科学コミュニケーション研究をしている。彼の研究结果によれば、地球温暖化は人间活动の结果ではないと考える「地球温暖化懐疑论」を支持する者は、経済活动を重视する共和党支持者に多いという。彼らは、科学リテラシーが低いわけではなく、「科学的知识」が増えれば増えるほど、地球温暖化懐疑论を支持する倾向があるという。

情报量が多くなるほど、自らの见解を正しいと考える「フィルターバブル」现象は、科学に関わる场合でも起こる。例えば、私は自粛が苦にならないから、自粛を是とする「科学的知识」を集め、自分の信念を强めているかもしれない。仮に、私がいま大学1年生だと想像してみよう。キャンパスライフを楽しめない不満から、授业をオンラインで进める大学に対し、过剰にコロナ対策をしていると考えるかもしれない。そして、「コロナは騒ぐほどの病ではない」とみなす见解に一票を投じ、そのような情报を収集していくだろう。

谁しも、自らの信念や思い込みから自由になることはできない。大事なのはその自分の偏りを自覚することだ。巷にあふれる「エビデンス」も、それを説く者の背景を考えて见直す必要がある。そう考えると、今の分断した言论の状况に対し、少し冷静になれるのではないか。

science-interpreter.c.u-tokyo.ac.jp

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専門知と地域をつなぐ架け橋に FSレポート!

第8回
工学系研究科博士课程1年桑原佑典

「ジオ」から见つめる十和田の魅力

贵厂青森県担当班(十和田湖畔にて)

私は昨年度贵厂青森県担当班として、「人口急减地域における地域コミュニティの作り方」をテーマに十和田湖周辺地域で活动しました。自分は幼少期より地球科学が好きで、现在も地质学を研究しているということもあり、この地域の「大地(=ジオ)」に注目しつつ活动を进めました。现地では十和田湖や、コケの森で有名な奥入瀬渓流、八甲田山や秋田県の小坂鉱山を访れ、雄大な自然の背景にある「ジオ」の営みを感じました。例えば、十和田湖は喷火でできたカルデラ湖ですし、小坂鉱山は太古の海底热水活动が生み出した鉱床です。こうした「ジオ」の恵みの上にこの地域の自然や文化が成り立っていることを実感し、「ジオ」をキーワードに十和田湖周辺地域の振兴を図ろうと考えました。

しかし、「ジオの魅力」が豊富な地でありながら、地元ではそれが见过ごされ、十分に活用できていない现状にも気づきました。そこで、地学研究を行う立场を活かし、「ジオ」の活用の秘诀を知るべく、学会でジオパーク関係者や、地学教育の専门家の话を伺い、地学教育による若者の大地への関心の醸成と、研究者と住民の间のつながりが键となることを学びました。さらに、地学教育の実践として、地元の中学校で実験教室を行いました。私が幼少期に博物馆のイベントでいただいた十和田の岩石标本を用いた解説や、十和田湖の形成を再现したココアパウダーによるカルデラ形成実験は生徒たちに大変好评で、地元の大地について兴味を持ってもらえた手応えを感じました。

现地の中学校での実験教室の様子

本活动の成果は2月に现地の住民の方に报告したほか、今年の7月には日本最大规模の地学系の学会である日本地球惑星科学连合大会にてオンラインポスター発表を行いました。学会で発表できたことは、贵厂の成果を社会に还元するという点で意义深いのではと思います。私たちの贵厂での活动期间は短く、自分达にできることは限られていました。しかし、私たちの活动をきっかけに十和田湖周辺地域で「地域おこしにおけるジオの活用」の気运が高まればいいなと考えています。

www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/special-activities/h002.html