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左腕の优越 ―両腕动作中にのみ発挥される左腕の秘められた能力―研究成果

左腕の优越
―両腕动作中にのみ発挥される左腕の秘められた能力―

平成26年7月2日

东京大学大学院教育学研究科

 

1.発表者:
横井 惇(ユニヴァーシティ?カレッジ?ロンドン、日本学術振興会 海外特別研究員)
平島 雅也(东京大学大学院教育学研究科 助教)
野崎 大地(东京大学大学院教育学研究科 教授)

 

2.発表のポイント:
◆両手动作中に反対侧の手の动作に応じて柔软に运动を调节する能力は、右利きの人では、非利き手である左手の方が右手よりもはるかに优れていることを明らかにしました。
◆この左手の优位性は、左手の运动调节の仕方を学习するプロセスが右手の动作から强く干渉を受けることによって生じている可能性が示されました。
◆両手の动作中にのみ発挥される、この左手の优れた运动调节能力は、両腕协调动作における左右の腕の役割分担を决定づけていると考えられます。

 

3.発表概要:
利き手がさまざまな侧面において非利き手よりも优れた运动能力を発挥するということは、多くの人が実感することでしょう。このような能力差は、大部分の人が右利きであるという事実と併せて、多くの文化において左手?左利き蔑视の倾向を生じさせた一因でもあると考えられています。また、右利きの人が両手を协调させて作业する际に(瓶のふたを开けるなど)、右手が主要な役割を担い左手がそれをサポートする、といった役割分担が生じますが、これが左右の手の优劣を反映した结果なのか、それとも左右の手それぞれの特化した能力を反映した结果なのかは、よくわかっていませんでした。
今回、东京大学大学院教育学研究科の横井惇博士(現ユニヴァーシティ?カレッジ?ロンドン)、平島雅也助教、野崎大地教授による研究チームは、右利きの場合、非利き手である左手には両手を動かすときのみ発揮される優れた能力があることを発見しました。両手を同時に動かして道具や物を操るとき、両方の手の間には力学的な相互作用が生じます。反対側の手の運動によって生じる力学的な影響に応じて柔軟に運動を調節する能力は、左手の方が右手よりもはるかに優れていました。また、このような左手の柔軟性は、左手の運動調節の仕方を学習するプロセスが、右手の運動から干渉を受けやすいことに起因する可能性があることを、実験および計算モデルによって明らかにしました。
これらの结果は、利き手と非利き手は単纯な优劣関係ではないとする説を支持するとともに、両手の协调动作において左右の手の役割分担が生じるメカニズムの理解や、左右差および大脳半球间の相互作用の机能的意义の理解、両手动作を用いたより効果的なリハビリテーション?运动スキル训练手法の开発などに贡献することが期待されます。

 

4.発表内容:
■研究背景■
全人口のおよそ9割は右利きであると言われています。利き手である右手は、动作の正确性?巧緻性?筋力などのさまざまな面で左手を上回る能力を示すことが古くから知られています。また、このような左右差は、多くの文化で右を圣なるもの、左を不浄なものとして捉える倾向を生じさせる一因ともなっています。


  近年、心理学?認知神経科学?身体教育科学の分野では、単に優劣という観点から左右の能力差を捉えるのではなく、左右の手の運動制御システムの特性の違いは何かという観点から研究が行われつつあります。もしこの特性に左右差があるとすれば、非利き手である左腕が利き手である右腕に対して優位性を示す能力があるはずですが、左腕が優位性を示す明確な例はほとんど見つかっていません。また、これまでに提案されている優位性についてみても、それがどのような神経機序に起因しているのか満足な説明はなされていません。

 

■研究内容■
今回、东京大学大学院教育学研究科の横井惇博士(現ユニヴァーシティ?カレッジ?ロンドン)、平島雅也助教、野崎大地教授らによる研究チームは、両腕動作中に反対側の腕の運動に応じて柔軟に運動を調節する学習能力に関しては、右利きの人であっても非利き手である左腕の方が右腕よりも優れていることをはじめて明らかにしました。

 

■具体的な手法■
研究チームは2种类の実験を行いました。それぞれの実験で、被験者はマニピュランダム(注1)と呼ばれる装置を両手で操作して课题を行いました。これは、被験者の両手それぞれの位置に対応して画面に表示される2つのカーソルを别々の标的に命中させる课题で、被験者はゲーム感覚で実験を行うことができます(図1础)。この课题中に、左右どちらかの腕にマニピュランダムを通して特殊な外乱负荷(注2)を与えると、被験者は初めのうちはカーソルを思い通りに操作できなくなります。しかし、练习试行を繰り返すと、被験者は新しい道具の使い方を覚えるように、外乱负荷の存在下でも再び自在にカーソルを操作できるようになります(図1叠)。研究チームは、このような両腕を动かしながら行う运动学习の成绩に、反対侧の腕运动がどのように影响しているかを调べました。

 

実験1:左腕は右腕が练习时と同じ运动をしていないと学习成果を十分に発挥できない
  実験1では、それぞれの腕の運動学習効果が、反対側の腕の運動からどの程度影響を受けているかを調査しました。右利きの被験者を、両腕を同時に前方に動かしながら、右腕で負荷を学習するグループと、左腕で学習するグループに分けて実験を行ったところ、負荷に対する学習能力自体は、左右の腕で同程度でした(図2A)。このような学習が成立した後で、負荷を学習した腕の運動は前方方向に保ったまま、反対側の腕の運動方向を学習時に用いた方向(前方方向)から変化させると、それに応じて発揮される運動学習効果が徐々に減衰することが、研究チームの先行研究から明らかになっています。この減衰の程度を2つのグループで比較すると、左腕で負荷を学習したグループの方がより大きな減衰を示すことがわかりました(図2B)。具体的には、左腕の学習効果は右腕の運動方向が前方から変わると大きく減少する(図2B左図)のに対し、右腕の学習効果は左腕の運動方向の影響をあまり受けませんでした(図2B右図)。言い換えれば、右腕の学習効果は左腕の運動にあまり干渉されないのに対して、左腕の学習効果は右腕の運動から強く干渉を受けていることになります。これらの結果は、両腕運動中、左右の腕それぞれの運動調節の仕方を学習するプロセスは反対側の腕の運動から影響(干渉)を受けること、また、その干渉の度合いには左右差(左腕→右腕 < 左腕←右腕)が存在することを示唆しています(図2C)。

 

実験2:长所と短所は表里一体
  「右腕が練習時と同じ運動をしていないと、左腕は学習効果を十分に発揮できない」という性質は、一見すると左腕にとってデメリットに思えるかもしれません。ところが、見方を変えると、このような性質は左腕の強みともいえます。両腕を協調させて道具などを操作する場合、それぞれの腕はお互いの腕の運動によって生じる影響を予測し、適切にその影響を補う必要があります。例えば、両手でワインのボトルを開ける場合、右腕で押す場合と引く場合では左腕は全く異なる負荷にさらされます。つまり、それぞれの腕は、もう一方の腕がある運動をする時にはどのような負荷を受け、また別の運動をする時にはどのような負荷を受けるかを学習し、それに応じて運動指令を適切に切り替える必要があります。したがって、 「右腕が練習時と同じ運動をしていないと左腕が学習成果を十分に発揮できない」という性質は、上記の両腕協調動作の例で言えば都合が良い性質であると言えます。なぜなら、両腕を動かす場合は、右腕が運動Aを行っている時に左腕が学習した効果は、右腕が運動Bを行っている時には必ずしも必要ない(そればかりか逆にマイナスに作用する可能性すらある)からです。


  実験2では、この予測を確かめるために、上記のワインボトルの例のような、一方の腕の運動に応じてもう一方の腕が受ける負荷が変化する環境を実験的に作り出し、その環境へ適応する様子を調べました。負荷を覚える腕は常に同じ方向(前方)に腕を動かしますが、反対側の腕は4方向のうちいずれかの方向に腕を動かし、その運動方向に応じて負荷の向きが反転するよう設定しました(図3A)。実験1と同様、右利きの被験者を、左腕で負荷を学習するグループと右腕で負荷を学習するグループに分けました。その結果、左腕のグループは右腕のグループと比べて、学習がより迅速に進み、同じ量の練習でも最終的な学習量は2倍にも達しました(図3B)。この結果は、反対側の腕運動の方向に依存した負荷に対する学習能力は、非利き手である左腕の方が右腕よりもはるかに優れていることを示しています。さらに、運動学習のプロセスが反対則の腕運動から受ける影響に左右差が存在することを仮定した数理モデルによるシミュレーションは、この実験結果を良く再現しました(図3B)。一方、左利きの被験者を対象として全く同じ実験を行ったところ、左腕の優位性は消え去り、むしろ右腕が優位であるという逆の傾向が観察されました。

 

■结果の意义?今后の展望■
研究チームは、マニピュランダムを用いた运动学习実験と数理モデルを组み合わせることで、両腕动作中にのみ発挥される非利き腕が利き腕を上回る能力の存在を示しました。また、このような能力が、左右の腕において运动学习プロセス间が相互に干渉する度合いの非対称性に起因していることが示唆されました。これらの结果は、利き手と非利き手は単纯な优劣関係ではないとする説を支持するとともに、両腕の协调动作において左右の役割分担が生じるメカニズムの理解や、左右差および大脳半球间の相互作用の机能的意义の理解、両手动作を用いたより効果的なリハビリテーション手法、运动スキルの获得手法の开発などに贡献することが期待されます。

 

5.発表雑誌:
雑誌名:The Journal of Neuroscience (2014年)
論文タイトル:Lateralized sensitivity of motor memories to the kinematics of the opposite arm reveals functional specialization during bimanual actions
著者:Atsushi Yokoi*, Masaya Hirashima, Daichi Nozaki*
顿翱滨番号:10.1523/闯狈贰鲍搁翱厂颁滨.2694-13.2014

 

6.问い合わせ先:
野崎大地(东京大学大学院教育学研究科?教授)
  もしくは
横井惇(ユニヴァーシティ?カレッジ?ロンドン、日本学术振兴会?海外特别研究员)

7.用语解説:
(注1)マニピュランダム:运动学习研究等に用いられる特殊な装置。被験者がハンドルを握って、笔颁画面上のカーソルを操るなどの运动课题を行う。このときのハンドルの位置、速度を精密に计测できるとともに、さまざまな力をハンドルに加えることができる。

(注2)外乱负荷:マニピュランダムによって产み出される特殊な负荷。本研究では、ハンドル进行方向と垂直な向きに、运动速度に比例した大きさの力をハンドルに加えた。

 

8.添付资料:

図1.(础)実験模式図。マニピュランダムのハンドルの位置が手の上に设置されたスクリーンに投影される(被験者から腕は见えない)。被験者は左右のカーソルをそれぞれ同时に开始点から标的まで移动させる运动を行った。(叠)外乱负荷の学习(模式図)。外乱を受けると手の轨道が力の方向に曲げられてしまうが、学习が进むにつれて徐々に手は元のまっすぐな轨道を描くようになる。

 

 

図2.(础)被験者は両腕を前方に动かしながら、左右いずれかの腕で负荷に适応した(上の模式図は左腕で负荷を学习する场合)。学习に右腕を用いた被験者と左腕を用いた被験者で学习成绩(试行に伴う学习量の増加度合い、および最终的な学习量)に大きな差は见られなかった。(叠)学习后に、负荷を受けていない侧の腕の运动方向を変化させて発挥できる学习量を测定した。左腕の学习効果は右腕の运动方向が変わるとより大きな影响を受けて减少する(左図)が、右腕の学习効果は左腕の运动方向の影响をあまり受けない(右図)。色付き太线はデータを関数で近似した曲线。曲线の振幅は、反対侧の腕运动からうける干渉の大きさを表す。(颁)右腕の运动から左腕の学习効果への影响が、逆の场合よりも强いことは、左右の腕运动の调节の仕方を学习プロセスの相互干渉の度合いに非対称性があることを示唆する(右腕は左半球によって制御され、左腕は右半球によって制御されることに注意)。

 

 

図3.(础)负荷の向きと运动方向の関係(左腕で学习する场合)。右腕の运动方向が90度変化する度に左腕に加わる负荷の方向が反転する。(叠)学习成绩の比较。左腕で学习を行ったグループは、右腕で学习を行ったグループに比べて迅速に学习が进み、最终的に2倍もの学习量を达成した(実线)。运动を学习するプロセスに左右非対称性が存在することを仮定した数理モデルによるシミュレーションは実験结果を良く再现した(点线)。

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