食を含む生活环境が変化する中で増え続けるアレルギー性疾患を、尿を使って正确に诊断することに取り组む村田先生。
谁でも苦痛なく、家庭や病院で気軽に诊断できる検査キットの开発などの取り组みを绍介してもらいました。
アレルギー免疫&迟颈尘别蝉;尿
尿中の脂质でアレルギー疾患を诊断する
村田幸久
MURATA Takahisa
農学生命科学研究科 准教授
湿疹やかゆみを繰り返し、生活の质を低下させるアトピー性皮肤炎。乳幼児期に発症することが多く、その患者数は近年増加しています。症状をコントロールする上で大切なのは、皮肤の炎症の面积や深さを把握し、适切な治疗をすること。しかし目视での正确な判断は难しく、乳幼児の场合、症状を闻き取ることもできません。そこで、尿を使って皮肤の炎症の质や程度を评価できるバイオマーカーの开発に取り组んでいます。
尿中の代谢物を皮肤炎のマーカーに
私たちが注目したのは、尿中に排泄される脂质代谢物。体の中には数千种类もの脂质とその代谢物があると言われており、それらが大量に作られては生理活性を発挥し、排泄されていきます。この中から、アトピー皮肤炎が発症しているときに作られて、尿に排泄される安定的な代谢物を见つければ、皮肤の炎症を评価できるバイオマーカーとして使えると考えました。
质量分析装置を使ってアトピー性皮肤炎のモデル动物や患者の尿を分析したところ、プロスタグランジンという物质の脂质代谢产物の浓度が症状の悪化に伴って増加していることが分かりました。血圧や炎症などの调节で重要な働きをするプロスタグランジン。これが炎症を起こしている皮肤の上皮细胞で生产され、その代谢产物が尿中に溜まります。その浓度を测定することで皮肤の炎症状态を评価できる技术を开発したいと考えています。
アトピー性皮肤炎の指标となるバイオマーカーはいくつか存在しますが、いずれも採血が必要です。伦理的な観点から、ヨーロッパでは乳幼児からの採血は容易にできなくなっていますが、尿なら肉体的にも精神的にも苦痛なくいつでも採取することができます。
アトピーが発症のリスクになる
もともと私は食物アレルギーの研究をしていました。食物アレルギーの唯一の确定诊断法は、医师の前でアレルギーの原因の疑いがある食物を少しずつ食べ、症状が现れるかを判定する「経口抗原负荷试験」です。この検査にはアナフィラキシーを起こすリスクが伴い、体制が整った病院でしか行えないという课题があります。また治疗には、症状が出ない量の抗原食物を毎日食べ続け、少しずつ量を増やしながら克服していく「経口免疫疗法」がありますが、その効果をモニタリングできる数値指标はありません。尿を使って、安全に家庭でも食物アレルギーを検査でき、数値指标として使えるものを作りたいとの思いから、尿中の脂质解析に取り组み始めたのが约8年前。现在、実用化に向けた尿検査キットを开発しています。
この研究をする中で分かったのが、アトピー性皮肤炎などで起こる子供の皮肤の荒れが、食物アレルギーの引き金になるということ。枕や绒毯などに付着し、住环境中に漂っている小麦などのアレルゲンは、ダメージを受けた皮肤から体内に侵入してしまいます。そして抗体がつくられて食物アレルギーの発症につながります。アトピーでも同様の尿検査キットを开発して、両方をモニタリングすることで、免疫反応をコントロールしてアレルギーの患者を减らす方法の确立を目指しています。将来的には、おむつで脂质代谢物を検出できるようにしてアレルギーの状态が分かるようにしたいと考えています。