下水に含まれるヒト肠管系ウイルスのゲノム解析研究に取り组んできた风间先生。
将来的に胁威になる可能性のある新规病原ウイルスを検出する试みや、途上国の水环境などについて绍介してもらいました。
下水疫学&迟颈尘别蝉;排泄物
下水中の遗伝子解析で感染症流行を予测する
风间しのぶ
KAZAMA Shinobu
新領域創成科学研究科 准教授
家庭排水は病原微生物情报の宝库
人の粪便を含む家庭から出る排水は、病原微生物情报の宝库です。最终的に下水処理场にたどり着くその排水を採取して、下水の疫学调査に取り组んできました。下水中には胃肠炎の原因になるノロウイルスをはじめとする様々なヒト肠管系ウイルスが在ります。その多様なウイルスを検出するため、次世代シークエンサーを使って复数のウイルスの塩基配列を同时に解読しました。结果は私たちがターゲットにしているヒト肠管系ウイルスはほんのわずかで、多くが大肠菌や植物に感染するウイルスでした。肠管系ウイルスが検出される确率は低いということです。
そこでヒト肠管系ウイルスの遗伝子が有する特徴を利用して选択的に検出する手法を使うことで、効率的に肠管系ウイルスを検出することができました。また、その他の検出されたゲノムを解析したところ、その62%が遗伝子配列データベースに登録されていない塩基配列でした。未知のウイルスである可能性があるということです。国际ウイルス分类委员会に登録されているウイルスは9000种以上。それ以外に地球上の未発见ウイルスは哺乳类に感染するウイルスだけでも32万种存在すると推定されています。その一种が含まれているかもしれません。このような遗伝子データを积み上げていくことで、今后起こりうる感染症に役立てられないかと考えています。
下水を使ってノロウイルス感染者数や、その割合を示す流行指标の开発にも取り组んでいます。しかし下水に含まれる雨水や工场排水量などは地域によって异なり、ウイルス浓度だけではそのような流行状况を推定することが难しいといった课题があります。その补正方法を考えているところです。指标を开発できれば、それに基づいて感染症警报を発出できるようになります。下水処理场でのウイルス除去には限界があります。除去できなかったウイルスが河川に排出され、海に入り、二枚贝に蓄积され、再び人体に取り込まれるという感染サイクルの胁威减少にも役立つと考えています。
インドネシアの水环境を改善する
発展途上国の水环境改善を担う留学生を受け入れ、修士论文の指导も行ってきました。その1つがインドネシアのジョグジャカルタ特别州の粪便汚染调査です。5割以上の住民が地下水を饮料水源として利用している地域です。各家庭には井戸があり、その近くに穴を掘った简易なトイレが设置されています。そこから屎尿が土壌へ浸透し、病原微生物などが地下水を汚染してしまいます。インドネシアでは下痢は日常的な症状で、地下水粪便汚染防止策が求められています。
简易下水道などの整备も进められていますが、大肠菌汚染の残存や、普及率の低さといった课题があります。地下水试料の一部からは、トリ由来の粪便汚染も検出されました。鶏を饲っている家庭が多いため、井戸に盖をするなど、环境自体も改善する必要があります。今后は下水や环境中のウイルスに関する研究だけでなく、途上国の水环境改善につながる研究にも取り组んでいけたらと考えています。