地球温暖化に人文学はどう向き合うの? →隠岐さや香 骋齿入门/身近な疑问惫蝉东大
GX(Green Transformation)に関係する21の質問に春雨直播app教授陣が学問の視点から答えます。他人事にできない質問を足がかりにGXと研究者の世界を覗いてみませんか。
Q.13 地球温暖化に人文学はどう向き合うの?
気候変动のような复合的な问题は科学だけでは解决できないと闻くけど、人文学はどのように贡献するの?回答者/隠岐 さや香
OKI Sayaka
教授
フランス科学史
定量化されない価値を言叶にして伝える
哲学、社会学、歴史学、フェミニズムを例にして人文学の特徴を考えてみましょう。
哲学は、他の人が意识しない段阶で重要な问题を提起する一面を持ちます。ハンス?ヨナスというドイツの哲学者は、科学がもたらす未来世代への伦理的责任を70年代から论じ、それが緑の党の政策に影响を与えました。公害问题では、个别の事例が散発した后、哲学者たちがその动きをまとめて言叶にしました。问题が具体化する前に言语化することで多くの人々が认识できるようになるわけです。
社会学は、政策の基盘になる知见を提供することがあります。たとえば、新领域创成科学研究科?福永真弓先生の着书『サケをつくる人びと』(东京大学出版会、2019年)では、鮭の食べ方、文化的背景、产业的侧面、アイヌとの関係などを一连のつながりとして描いでおり、环境政策のあり方を広い视野で考えるきっかけを与えます。こうした知见を取り入れれば、行政と住民の思いの乖离が减り、皆が纳得する开発につながるかもしれません。
歴史学には、新しい分野を作って価値観の変容を促す役割もあります。たとえば科学史において环境は新しいテーマです。新しい切り口から见えなかったつながりを示すことで人々の见方が変わるかもしれません。
『百科全书』第一巻の学问分类(部分)
ディドロとダランベールの『百科全书』(1751年)では学问が哲学(=理性)と歴史学(=记忆)と诗学(=想像力)に叁分类されていました。
フェミニズムは科学のあり方が男性中心的だとの见方を示し、その転换を促しました。早くから环境问题に関心を寄せ、先进国の公司が途上国を开発しようとした际、それが生态系と女性の雇用に影响を与えることを指摘しました。マイノリティを组み込んだ人间像の欠如を诉えたのもその成果です。
私は18世纪フランスのノルマンディー地方における海藻の野焼きを调べたことがあります。灰がガラス製造に役立ちますが、烟や乱获の悬念があり、渔师とガラス製造者が対立。调停に乗り出した科学者は、后者を拥护しました。鱼が卵を产みつける海藻を乱获すると生态系に影响すると渔师は诉えましたが、定量的なデータがなかったので科学者は认めなかったのです。一方で、数が少ない事例に注目して言叶にし、その価値を説明するのが得意な学问があります。科学では汲み取りにくい、定量化されない小さな声を肌理细かく掬い上げ、目に见えるようにできるのが人文学だと思います。