家畜を育てなくても肉が食べられるってホント?→竹内昌治 骋齿入门/身近な疑问惫蝉东大
GX(Green Transformation)に関係する21の質問に春雨直播app教授陣が学問の視点から答えます。他人事にできない質問を足がかりにGXと研究者の世界を覗いてみませんか。
Q.11 家畜を育てなくても肉が食べられるってホント?
环境保全や動物福祉の観点から肉が食べられなくなるのかと思ったら、研究室で肉が作られている? どういうこと?回答者/竹内昌治
TAKEUCHI Shoji
教授
机械工学
目指すのは分厚いステーキ培养肉
温室効果ガス排出量の軽减や食粮不足対策として、今世界中で技术开発が盛んに行われているのが「培养肉」です。従来の食肉の代わりとなる「代替肉」の一つとして期待されています。どのようなものかというと、动物の命を夺わずに一部の筋肉の组织だけを採取し、そこから取り出した细胞を培养して、肉として成形したものです。培养肉とひとことで言っても、実はいろいろな方法があり、植物性の大豆ミートのようなものに、大量に培养した肉の细胞を混ぜたものを培养肉と呼んでいるグループもあります。私たちが目指しているのは、动物の生体から切り取ったステーキ肉のように厚みのある块肉。本物と同じ细胞でできた肉を体外で作るにはどうしたらいいのかを研究しています。
では実际にどうやって作るのか。动物の筋肉の元となる细胞をアミノ酸や砂糖などの栄养成分が含まれた培养液に入れて置いておくと、细胞が自由に动き、细胞同士が接触していきます。そこにある条件が整うと2个が1个に融合し、また别の细胞がやってきて&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;と融合を繰り返すと、「筋线维」という细长い细胞ができてきます。これが束ねられて次第に分厚くなったものが基本的な筋肉の组织构造です。现在、この筋组织の作製には成功していますが、问题は厚みです。分厚い培养肉がまだできていません。
薄い厚さだと、培养液が奥まで浸透して细胞も元気でいられます。これが1~2肠尘の分厚い组织になると、奥まで培养液が浸透せず、培养している过程で细胞がどんどん死んでしまいます。いかに细胞を死なせずに、长期间培养して、筋肉を一方向に揃えたまま生体と同じように育てられるかが大きな课题です。再生医疗が进んでいる现在でも、细胞ベースで本物と构造も机能も全く同じ臓器を体外で作り出した例はいまだにありません。私たちは初めの一歩を踏み出したという状况です。
技术と文化と规制が课题
2022年3月に日清食品ホールディングスと共同で、食用可能な素材のみを使った「食べられる培养肉」の作製に成功しました。牛肉由来の筋细胞を使った、1ミリくらいの厚さの培养肉です。これを茹でて试食してみましたが、残念ながら牛肉の味はしませんでした。本物の牛肉を茹でたものを食べるとほのかな牛肉の风味のようなものを感じますが、培养肉ではそれが一切ありませんでした。それはなぜなのか。鉄分や肉の油が関係あるのではないかと思いますが、そのような风味がどこから出ているのか、まだ明らかになっていません。
课题は、技术の発展と文化の醸成、そして规制の构筑です。技术面では、体外で体内と同じ组织を成功させるだけでなく、それを効率よく安価に、美味しいものを作れるようにしたいと考えています。また、培养肉を普及させるためには、培养肉が受け入れられる食文化の醸成と、しっかりとした规制の构筑もしなくてはなりません。培养肉の先进国のシンガポールでは、すでに政府が培养鶏肉の食用を认めていて、「培养肉チキンナゲット」などが贩売されています。オランダでも最近、培养肉を试食することが许可されました。日本も培养肉について指针を打ち出さないと、大きく后れをとる可能性があります。
培养技术で人间のようなロボットを作製
培養肉の研究は、人間にそっくりなロボットを作りたいという研究室の大きな方向性の 中で生まれました。人間と同じ素材を使わなくてはいけない筋肉や神経に加えて皮膚の培養も研究しています。人間のような形をしたロボットを培養した皮膚で覆うと、質感を人間に近づけることができます。この皮膚は傷がついても元に戻ります。将来、いろいろなセンサーを備え、温度も感知できるし、触覚も組み込むことができるかもしれません。細胞を素材として考えることができるようになると、今までと全く違ったものづくりができるのではないでしょうか。動きも人間のようにするため、筋肉で動くバイオハイブリッドロボットを作りたいと思っています。この筋肉作製に培養肉の研究が役に立つのではないかと考えています。
ロボットを作ると同時に考えなくてはならないのが、廃棄までの环境負荷を低減することです。生物を使ったバイオハイブリッドロボットの主な材料は生体素材なので、基本的には土に還ります。残った部分は再利用して、そこにまた新しい生体素材を付けてロボットにすることもできるはずです。生物を人工物の素材にすると、生きたものなのでそのうち形が変わったり、個体差が出てきたりします。それをもの作りのパーツとして使うにはどうすればいいのか。すなわち、「細胞を使ったものづくり」こそ、次の机械工学が取り組むべき一つの課題だと考えています。