録音した自分の声はどうして変に闻こえる?→米村美纪|素朴な疑问惫蝉东大
「なぜ?」から始まる学术入门
言われてみれば気になる21の质问をリストアップし、その分野に详しそうな鲍罢辞办测辞教授阵に学问の视点から答えてもらいました。知った気でいるけどいざ闻かれると答えにくい身近な疑问を足がかりに、研究の世界を覗いてみませんか。
Q.11 録音した自分の声はどうして変な感じに聞こえるの?
録音した自分の声を聞いて、「あれ?」と感じたことがある人は多いのではないでしょうか。 自分が認識している声となぜ違うの?YONEMURA Miki
助教
建筑环境工学 |
「気导音」と「骨导音」の违い
音の伝达経路には、空気の振动が鼓膜に伝わる「気导音」と、骨の振动が伝わる「骨导音」があります。私たちが普段闻いている自分の声は、この2つの経路から伝わる音が混ざって闻こえています。一方で、録音された声は、気导音だけなので违って闻こえます。他人が闻いている私たちの声も気导音で、録音された音と同じです。
私たちが闻いている他人の声や音楽、騒音など、あらゆる外部の音は空気の振动として耳へ届きます。その空気の振动が外耳道と呼ばれる耳の穴に入り、その奥の鼓膜を振动させます。そして、さらに奥にある3つの耳小骨を経由して、蜗牛というカタツムリのような形をした器官に入力され、电気信号に変わって聴神経に伝わります。これが気导音です。骨导音は、侧头骨(头盖骨の一つ)の振动が直接蜗牛に伝わって闻こえる音。耳を塞いで声を出すと、自分の声が闻こえますよね。それは主に骨导音です。
人间の耳は低音に対して感度が悪い
この「音」の領域で、私が研究しているのは建筑环境工学の音響分野です。「環境」というと、地球温暖化などのグローバルなスケールのものを想像するかもしれませんが、私の研究対象は半径5メートル、広くて100メートルくらいの身近な音環境です。私たちの生活空間には、家電や空調設備など様々な音が溢れていますが、それらがどのような音でなぜ発生しているのか、また私たちはそれを許容できるのか、といった騒音の課題に取り組んできました。
人间に闻こえる周波数は20~20,000ヘルツ(贬锄)くらいだといわれます。数値は1秒あたりの振动の回数を表していて、小さければ低音、大きいと高音になります。冷蔵库だと50贬锄ぐらいの低音が「ブーン」と鸣ったり、パソコンのファンが时おり「ウィーン」という音を鸣らしますが、そこに1,000贬锄以上の高い音が强く入っていたりすることがあります。それらの音は、大きくなくても耳について気持ち悪い、と感じることがあります。それがどのくらい不快なのか&尘颈苍耻蝉;&尘颈苍耻蝉;细かく分解すると、音の高さや、音量という物理的な特徴によって、不快感という心理量がどれくらい违ってくるのか&尘颈苍耻蝉;&尘颈苍耻蝉;という観点で音の评価実験を行っています。
この身近な音の中でも、私が特に注目してきたのが低い音。人间の耳は低音に対して感度が悪いという特徴があります。環境省から出ている「」に使われている騒音の指标を计算するときも、低い音はエネルギーとして考虑されにくいことが多いです。普通の騒音はそれで问题ないのですが、低い音も目立って闻こえれば音色に影响するし、不快に感じられる、というところに问题意识をもってきました。
例えば、エアコンの室外机からは50贬锄から100贬锄くらいの低周波音が出ることがあります。それが夜中ずっと鸣っていると、睡眠を妨げたり、近隣との騒音トラブルのもとになったりもします。この騒音问题の対処のためには、どの高さの音がどれだけ强く出ていると不快に感じるのかを、定量的に调べておくことに意义があります。何が许容できないのかが分かれば、例えば、その騒音源となる製品の开発段阶で、騒音を抑制する目标値のようなものも提示できると考えています。
心地よく过ごせる音环境を整える
騒音の研究で目指すところは、不快な音をなくし、快适な音环境を整えるということです。最近はノイズキャンセリング机能がついたイヤホンで自分の耳元だけ不快な音を軽减することもできますが、建筑音响的にはそのようなものを使わなくても快适に过ごせる空间を増やしたいと思います。例えば、案内放送が多いといわれる日本の駅。エスカレーターで注意唤起が再生されたり、発着の放送があったり、その环境で话すために话し声が大きくなったり、と音が重なることで非常にうるさくなります。案内放送は、情报伝达や安全性という観点から不可欠なものですが、放送の仕方や建筑材料の选択によって音を制御することで、もっと静かな环境にできると考えています。
音は建筑の図面に见えない分、后回しにされがちです。しかし、もう少し静かだとこんなに快适になる、ということを皆さんに感じていただきたいですし、空间の设计や意思决定をする人たちに、音の重要性を発信したいと思っています。建筑の形や材料を変えると音环境も変わります。现実にはコストなどの事情もありますが、音の観点も取り入れてもらえたらと思います。
人间が総合的にどう音を受け取り、どのような要素に影响されて音环境の良し悪しを判断するのか、という部分はまだブラックボックスです。例えば、音がどのような周波数特性を持っていて、时间の経过でどう変动するか。あるいは、物理现象としての音は同じでも、友人が出しているのか知らない人が出しているのかでも、印象が违ってきます。私たちが音环境を评価するルートは、おそらく状况ごとに多数ありますが、そのうちの1つか2つでも理解できればと思っています。