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研究者が荐める映画.2 『日本沉没』/地球物理学者?木下正高

掲载日:2022年5月31日

鲍罢辞办测辞映画祭2022
东大の様々な分野の研究者12人に、各々の専门分野の観点からお荐めする作品を绍介してもらいました。映画を鑑赏する际の手引きとして、また、各研究者が进める学术への兴味を高めるきっかけとしてご覧ください。
地球物理学者 お薦めの一本

『日本沉没』

木下正高
教授

KINOSHITA Masataka

 
©1973 TOHO CO., LTD.
1973年 监督:森谷司郎 出演:小林桂树、藤冈弘、いしだあゆみ 
〈東宝DVD名作セレクション〉 DVD 2,700円(税込) 発売?販売元:東宝 動画配信:Amazonなど

地震学への関心を高める优れた思考実験

本作を観たのは中学の顷です。小松左京の原作も読み、青云の志が滚りました。地球物理学を知ったのは大学に入ってから。私の师匠の上田诚也先生はプレートテクトニクスの第一人者で、日本で地震が多い原因はこれか、と沸き立ったのを思い出します。06年版はの航海中に船上で観ました。核爆弾を地中に埋め、プレートをちぎって沉没を防ぐという话で、主人公と「ちきゅう」が大活跃。21年の罢痴版は『シン?ゴジラ』的でしたね。総理役でいうと73年版の丹波哲郎が一番魅力的でした。

3作では沉没のメカニズムが违います。73年版ではマントル対流。対流の形が変わることで沉み込む场所が移るというチャンドラセカール説が下敷きです。06年版では地殻下部が分离して地球内部へ落ちる「デラミネーション」が键。21年版のキーワードは、地球温暖化と、プレート同士の结合が缓んでごくゆっくりずれる「スロースリップ」です。実はこの现象を约20年前に発见したのが地震研の小原一成先生。非常にゆっくり滑る地震なので普通の地震计ではわかりません。日本の优れた観测网あっての成果でした。近年は世界で観测が进み、巨大地震発生のヒントと目されます。映画が学问の时代ごとの进化を映しています。専门的には、スロースリップは「スロー地震」と総称される现象の一つですが、作品のおかげでスロースリップは広く知られました。地震研究にとって重要な作品です。

日本列島沈没は科学的にはありえないですが、そこを割り切れるのが映画の醍醐味。『日本沉没』は優れた思考実験です。日本人のアイデンティティが脅かされた際にどうするかが、一市民として面白い。災害や災害後の対策会議の表現も進化しています。20年後に最新版ができたらまた新しい知見が入るでしょう。海底ケーブルの光ファイバー網が発展し、地殻変動でわずかに伸び縮みするファイバーの歪みを計測できるようになりつつあります。これを使えば地震計を設置せずにスロースリップを検知できるかも。ケーブル自体をセンサーにする発想です。天気予報のような地殻変動予報が登場して……そんな想像も促す名作です。

 

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