女性が発芽する大学になるために |ダイバーシティと东大 06|高桥美保先生の巻 男女共同参画室 进学促进部会长
このシリーズでは、東京大学のダイバーシティ(多様性)に関する課題や取り組みを、教員たちへのインタヴューを通して紹介していきます。 東京大学は多様な背景をもった人たちが、活き活きと活動できる場の実現を目指します。
东京大学への进学を选択肢の一つとして、一度考えてみてほしい。そう话すのは、2019年から男女共同参画室の进学促进部会长を务め、女子高生に东大に目を向けてもらう取り组みを行ってきた高桥美保教授です。さまざまな女子学生向けの企画を行ってきた中で先生が感じてきたのが、学力があっても、「选ぶ前に东大を选択肢から外してしまっている」のではないかということです。
「私はそれがもったいないなと思っていて。一度吟味してほしい。そして吟味するために、东大に触れてほしいと思っています」
「リアル」な东大に触れてもらおうと、高桥先生が特に力を入れてきたと话すのが、男女共同参画室が毎年开催している「女子高校生のための东京大学説明会」です。2006年に始まったこの説明会では、女子学生への家赁补助などの具体的な支援策の説明や、在学生が経験谈などのプレゼンテーションを行っています。近年では、一方的な情报提供だけにならないように、小グループに分かれてのディスカッションの时间も设けています。女子高生4,5名と在学生2人くらいのグループで、気軽に话せる机会は参加者にとても好评だそうです。
「リアルな东大生と话をすることによって、『普通の人なんだ』と感じたり、いろんな人と触れ合うことによって、东大を地続きのものとして体感できるような」场にしたいと、构成を考えてきました。
これまではキャンパスで开催してきましたが、コロナ祸のため2020年からはオンラインで行われています。直接会うことはできないものの、オンラインで行うことで、「东京まで行かなくてはいけない」という物理的ハードルが取り払われ、全国からも気軽に参加できるようになったことが最大のメリットだ、と高桥先生は言います。昨年10月に开催した説明会には、録画での视聴も含むと、日本全国だけでなく海外在住者も含めて计463人の中高生が参加しました。対面で行った2019年秋の説明会の292人から大幅の増加です。
「ぜひ颜を出してほしい。それで违うなと思えばそれはそれでいいと思います。でも、颜を出してみないと、自分の中で何が起こるかはわからないのではないでしょうか」
価値観の影响
进学先として东大を除外する倾向は、地方在住の女子学生に特に强い、と高桥先生は话します。そこには「女の子だから东京は駄目、できれば国立、しかも现役で」といった「自己呪缚」のようなものがあると指摘します。岐阜県出身の高桥先生自身、选択肢として东大は考えもしなかったそうで、実はその感覚がよく分かると话します。
この呪缚に大きく影响しているのは、家族や社会や学校といった周囲の価値観です。「保护者からすると、东大にまで行って、『嫁に行けなくなったらどうする』といったような感覚がいまだにあるようです。女性が、高学歴やすぐれた学びを得ることに対して、マイナスの『何か』がついているのかもしれないなと思うこともあります」
「大人も、好きで女子学生に呪缚をかけているのではありません。大人自身が呪缚をかけられたまま大人になったのであれば、呪缚の存在に気づけないかもしれませんし、呪缚を否定することが自己否定につながる気がするかもしれません。でも、その呪缚から目覚めた大人には、次の世代の呪缚を意识的に解いていく责任があると思います」
高桥先生が临床心理学研究の道を歩み始めたのは、大学を卒业し、5年ほど民间公司に勤めた后に、「自分が自分らしく生きるようになってから」だったそうです。その时「初めて、本当に自分がやりたいことをやっていい、という感覚を持った」と当时を振り返ります。巡り巡って、博士课程で东京大学に入学した高桥先生は、「东大がすべての人にとって一番いいとは思いません。でも、东大という选択肢を持ってみる権利は谁にでもあるんだよ、ということは今の学生に伝えたいです」
先生が女子高生にいつも伝えているメッセージが「迷ったら、まずは今后の自分の选択肢を増やす选択をする」ということです。自分のやりたいことがはっきりしないのであれば、将来の人生のチャンスや、豊かな人间関係を与えてくれるような大学を选んだほうがいいとアドバイスしているそうです。「东大がすごくいいのは、入学してから进学选択ができること。入学してから何がいいかを选ぶチャンスが十分あります」
なぜ女性を増やすべきか
东大全体で见ると学部学生の女子比率は2割程度ですが、高桥先生のゼミでは男女比が逆転しているそうです。「学内でもばらつきがあって、教育学部は东大で一番女子が多い学部なんです。私の専门としている临床心理学は圧倒的に女性が多い分野なんです。私のゼミには2割しか男性がいない。东大にもそういう世界ってあるんです」と话します。そのような女性が活跃する学问を増やしていくことも大切なのでは、と先生は考えています。
そもそも学问体系自体が男性中心に作られ、発展してきたのではないか、と话す高桥先生。もしそうであれば、女性が活跃する新しい领域を开拓し、アカデミアにしていくべきではないかと言います。
「今の学问体系を超えていくものを作っていくときには、それを生み出せる人たちが必要です。その时に、女性が2割だと少ないと思います。そういう意味で私は女子学生を増やす必要があると考えています」
学问の世界を広げていけるような仲间が増えてほしいと话す高桥先生。これまでの、より多くの女性に进学してもらう取り组みは、「种をまいているようだ」と话します。「愿わくは东大に来てもらって、発芽してほしい。それだけの土壌がある大学だと思います。大学のためにも、社会のためにも、女子高校生のためにも、东大との良き出会いがありますように、と愿っています」