クジラの意外な生活様式を捕捉/青木かがり 吸盘を用いたバイオロギングで
すべての生命の故郷にかかわる研究?教育活动集
あらゆる生命の故郷であり、地球の生物の生存を支えている海に関する科学を世界で进めるための「国连海洋科学の10年」。2021年はこの大きなキャンペーンがスタートした年です。そして东大は今年、海とともに歩んできた科学者を新総长に迎えました。工学、物理学、生物学、农学、法学、経済学&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。様々な分野の事例が映し出す东大の海研究と海洋教育の活动について绍介します。
海生哺乳类学 |
クジラの意外な生活様式を捕捉
青木かがり/文 助教 AOKI Kagari |
动物の体に记録装置をつけて生态に迫るバイオロギング。巨大なクジラが相手だと捕まえて装置を付けるのは困难です。そこで青木先生は吸盘で装置を取り付け、谁も知らなかったクジラの行动の実态を捉えてきました。目指すのは海の动物との新たなつきあい方の创出です。
海でイルカやクジラを见たことがありますか? 讲演会などの际に、こう问いかけるのですが、手が上がることは稀です。日本の周辺海域には鲸类约90种のうち半数近くが生息しているのですが、私たちの日常からはかけ离れた存在です。
マッコウクジラはオスで体长16メートルにもなる巨大なクジラで、深さ1000メートル以上へ潜るダイバーです。深海生态系の高次捕食者で、1日に数百办驳から1トンもの头足类や鱼类を食べます。水面で丸太のようにぷかぷか浮かびながら息を整えた后、尾びれを高く持ち上げ、深海へと潜っていきます。ダイオウイカと格闘している(イカにとっては死闘ですが)と言われていますが、未だその姿を见たことがある人はいません。深海で何をしているのか?その答えを知りたいという衝动に突き动かされ、动物に行动记録计を取り付けるバイオロギング手法を用いて研究に取り组んできました。
バイオロギングとは、动物の体に小型の记録计をつけて、动物の行动や生理、あるいは取り巻く生息环境のデータを取得する研究手法で、1980年代に考案されました。バイオロギングという言叶は、実は日本で生まれました。徐々に世间に浸透し、最近では小学生や中学生の教科书にも登场します。鱼类?爬虫类?鸟类?哺乳类など様々な分类群の动物を対象とした调査が、极域から热帯に至る地域で展开されており、动物の生态を明らかにするだけでなく、海洋観测の手段としても用いられています。
バイオロギング手法を用いる际は、动物を捕まえて机器を装着する必要がありますが、マッコウクジラのような巨大な动物を生きたまま捕まえることはできません。そこで、私は吸盘を使って鲸类の体に机器を取り付ける装置を开発し、それを使って、これまで谜に満ちていた、深海でダッシュしながら急旋回する捕食行动や、水面直下で縦になって眠るという不思议な休息行动を捉えることができました。最近では、动物を伤つけずに、栄养状态を把握する手法の开発に取り组んでいます。鲸类の泳ぎ方から肥満度を推定し、饵の豊富な海域で太っていくさまや、妊娠や授乳などの繁殖状态による変化をモニタリングできるようになりました。また、ウェアラブルデバイスのように鲸类の活动度や心拍数をモニタリングできる装置を开発し、人间活动の影响を即时に评価することに取り组みたいと考えています。
海洋生態系における人為的な影響が強大な今、海を生活の場としている海生哺乳類やウミガメ類、海鳥、魚類などの多くの海洋生物は危機的な状況に直面しています。 “海洋市民”の生活が健全に営まれてこそ、人類共通の財産である海からの恵みを人間が享受することができるのではないでしょうか。バイオロギング研究は、私たち人間が普段見ることのできない海洋動物の暮らしを動物目線で見ることを可能にします。動物目線で得られたデータを通し、人間が海洋動物をより身近に感じられるシステムを構築することで、駆除、食料資源あるいは展示の対象でしかなかった海洋動物を共存する存在とする、新たな動物とのつきあい方を創出したいと考えています。