猫を爱し、猫に学ぶ。 | 広報誌「淡青」37号より 文学、史学、獣医学、雑学??????猫と大学にまつわる4教授座谈会
猫を爱し、猫に学ぶ。
文学、史学、獣医学、雑学??????
猫と大学にまつわる4教授座谈会
猫系教员座谈会
二度目はなさそうな猫特集の最后は、せっかくなので猫好きの先生4人に集まってもらいました。座谈会の会场は、猫との縁にめぐまれた本郷の喫茶店の2阶。猫の性格や本能、歴史の中の猫、文学における猫、キャンパスにいる猫、国内外の猫事情、职场における猫、さらにはアロマとしての猫&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;!? 话题は尽きず、「淡青」史上最も笑颜にあふれる座谈会となりました。
- 须田 まずは、ご自身と猫との関係についてご绍介ください。
- 西村 私は动物医疗センターの外科诊疗科で猫を诊疗しています。今日も先ほどまで诊ていました。饲い主でもあります。
- 野崎 私は子どもの顷に犬を饲っていて、犬派でした。古い家の縁の下で猫のミイラを见つけて、猫には怪奇な印象を持っていましたね。でも、転向して猫派です。
夜のノックを机に猫爱が覚醒
- 须田 転向のきっかけは?
- 野崎 约30年前、一桥大の古い宿舎に入りました。戸を叩く音がして、开けると谁もいないという夜が続いた后、ある晩に戸を开けたら猫が3匹いました。前の住人が饵付けした野良でした。そこからほだされて、饵係として目覚めた感じです。その后、妻が保护猫をもらって饲い始め、20年同居して、数年前に最期を看取りました。今もペットロス状态です。驹场赴任时、紧张しながら构内を初めて歩いていたら「驹猫」に导かれて8号馆に入った、という淡い思い出もあります。
- 本郷 私の実家には猫がいつもいました。結婚後に捨て猫を飼い、17年後に行方不明になって悲しんでいましたが、今年1月に保護猫を譲り受けて飼っています。東大構内で拾ったこともあります。勤め始めて1 年目、道の真ん中で白い猫が呆然としていて。結婚前の夫と一緒に拾い、実家に連れ帰って飼いました。
- 须田 うちは妻が猫好きで、饲いたいとずっと言われていて、ペットショップで遭遇したソマリに一目惚れして、8年ほど饲っています。この子は膝に乗ってこないし布団にも入ってきません。でも昼寝をしているとくっついてきます。
- 野崎 ふと思い出しますが、私の可爱がり方は猫に嫌われていたのかもしれません。抱っこ中にガブッと噛んだりして、仲间の証かと思っていたけど、本当に嫌いで噛んでいたのかも、とか考えちゃう。
- 西村 抱っこが嫌いな猫は多いですから。
- 须田 犬は人の様子を见てどう喜ばれるかを考えているように见えますが、猫は违いますね。能力がないんでしょうか。人が猫に合わせることが多い気がする。
- 西村 头は犬の方が良いでしょうね。あと、饵を指差すと、他の动物はわかりませんが、犬はわかります。犬と人は特殊な関係にあるんだと思います。
- 野崎 人间と犬は最初からストレートな関係が成り立ちますね。それは子どもの顷感じた犬の素晴らしさです。猫には意味づけが难しい部分があっていちいちスリリング。対人间の処方笺があるのかな。
- 西村 どの动物でも见つめ合うのは威吓の印ですが、犬と人は见つめ合えますね。猫を见つめると颜をそらせるでしょ。
- 野崎 そういえばじっと见つめて「キャン」と妙な声で怒られたことがあります。
- 须田 うちの子は目を合わせますけどね。
- 野崎 犬って成长すると面変わりしますね。でも猫はあまり変わらない気がする。
- 本郷 犬は歳をとると颜が长くなります。
- 西村 人间が猫を好む理由の一つがそこにあるようですね。
- 本郷 あまり成长しないということかな。
- 西村 成长といえば、ペットを饲うことは子どもの成长に役立ちますね。
- 野崎 子どもができたとき、猫との相性が心配でした。猫は赤子の近くに置くなという人もいて。でも、実际には猫が赤ん坊をずっと见守っていて感动しました。
- 西村 学生を见守る猫もいるといいかも。
- 野崎 うちは20年间外に出さず室内饲いでしたけど、外で自由に游ばせればよかったかな、と思うことがあります。多头饲いのほうが楽しかったのかな、とも。
- 西村 猫は基本的には単独行动です。昔は家と外で行き来するのが普通でしたけど、今は室内饲いで寿命が延びるのは明らか。どちらが猫にとっていいかは难しい。うちの饲い猫を外に出しても、びびって戻ってくるでしょう。今は猫たちの进化の途中かな、とも思います。
- 须田 私も実家に犬がいたので、猫を饲うときは心配でした。室内だけで世界が闭じて大丈夫かな、と。でもストレスをためている様子はないですね。
- 本郷 前に饲っていた猫は自由に外と内を出入りしていました。でも、今饲っている猫は、保护施设のケージ育ちだからなのか、外に出るのを怖がります。
- 野崎 宿舎时代、海外出张から帰宅后、猫がいなくて心配して探したら、他の家でエサを食べて、违う名前で呼ばれていました。屋外猫のたくましさでしたね。
- 西村 猫は长らくそうやって人间のそばで暮らしてきました。完全室内饲いへの移行は猫の歴史上初の出来事でしょう。
- 野崎 なるほど、我々は猫の歴史的な大転换点に居合わせているのかも?
「小さな野生」が大きな魅力
- 野崎 猫の野生的な部分は魅力ですが、一时期悩んだのは、本棚の上から飞び降りる游びを覚え、着地点がパソコン上だったこと。着地后は爪研ぎもするし&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。
- 西村 あたたかいパソコンに乗るのは织込み済みでしたが、あるとき猫がパソコンを机の下に落としました。そのせいで、学会用に準备した资料が全部ぶっ飞びました。その后1週间は猫と険悪な関係でした。学会直前のデータ全损は痛かった。
- 须田 人の気を引くためにやりますよね。
- 野崎 人が集中しているのを邪魔したい。
- 西村 自分がかまってほしいときだけかまってほしい。
- 本郷 新闻を开くとすぐ乗ってくるし。
- 野崎 そんなワイルドさやアナーキーさを痛快に思う自分もいました。そうできない饲い主の代わりにやっていたのかな。
- 本郷 うちの子は黒猫です。保护猫譲渡会だとクロとミケが不人気で入札がなく、ならば、ともらいました。黒猫は不吉、叁毛猫は贤すぎる、とか言いますね。
- 野崎 黒猫も头が良いと闻きましたよ。
- 西村 毛色と性格の研究もあるようですが、猫は性格の评価をするのが难しいと思います。たとえば、盲导犬の向き不向きなど、犬のほうが研究が进んでいます。
- 本郷 犬は役立つから研究もされやすいのね。猫を研究しても役に立たなさそう。
- 须田 性格がよくてパソコンを破壊しない、とわかれば有益でしょうけど。
- 野崎 猫には「小さな野生」が欲しい。
- 西村 犬みたいに従顺な猫はちょっとね。
- 野崎 盲导犬の献身には头が下がるけど。
- 本郷 猫も少し见习えと説教しますか。
- 西村 でも、役に立たないところから本当にすごいものが生まれるかもしれない。
- 野崎 学问にも通じそうな话ですね。
爱玩のために猫に位阶を授与
- 野崎 日本の歴史での猫というのは?
- 本郷 「枕草子」には一条天皇がかわいがった猫が出てきます。宫中の殿上の间には一定の位阶がないと昇れないので猫に五位の位を授けた、と。同じ猫の话は贵族の日记にもあって、藤原道长も出席して猫の诞生祝いをやったそうです。
- 野崎 爱でるために猫に位を与えるとはすごい。欧州よりはるかに进んでいます。私の知る限り、カトリックが强くなるに従い猫の地位は低下しました。猫は怠惰や悪徳、欲望の象徴で、美术でも肯定的な存在ではなかった。その顷に日本では猫がそんなふうに扱われていたとは。
- 本郷 猫又のような话もありますけどね。
- 野崎 欧州では猫が魔女と结びついて灾难にあった歴史もあります。黒猫派としては、エドガー?アラン?ポーの「黒猫」は许せません。悪印象があの作品で固定された。素晴らしい作家ですが、晩年不幸だったのはそのせいかな。平安贵族文化の繁栄は猫とつながっている気がします。役立たずで気まぐれで神秘的な猫が文芸に近づくのは当然ですね。
- 本郷 いい猫のことを唐猫というのは舶来主义でしょうか。藤原定家の日记には、输入したインコと麝香猫の话が出てきます。インコは歌うというが歌わない、麝香猫も别に面白くない、と书いています。
- 野崎 麝香猫っていい匂いがしたのかな。私が饲っていた猫はとてもいい匂いがしたんです。娘盛りの顷、颜を埋めてジャスミンのような匂いを楽しみました。馥郁たる香りが忘れがたく、「猫の香り」というエッセイも书きました。
- 西村 &丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;いい匂いは初耳ですね。
- 须田 季节によるホルモン分泌の変化?うちは不妊手术したからないのかな。
- 本郷 嫌な臭いがすることはあったけど。。
- 野崎 衝撃です。自分の奇异な性癖を露呈してしまいました。
- 须田 野崎先生は猫に近い嗅覚を持っているのかも。香りで猫を诊断する「猫ソムリエ」として活跃できますよ。
- 野崎 参りました(笑)。欧州だと修道院で猫を饲う话があります。かわいがりすぎて执着が生じ、神を忘れるからと、猫と宗教は折り合いが良くなかったようです。叁岛由纪夫の『金阁寺』にも、修行中の僧たちが猫を取り合うのを一刀両断する话※1がありますね。猫の魅力には宗教的な里付けがあるといえるかも。
- 本郷 役立たないからこそ纯な爱がある。
- 野崎 毛并みの美しさ、官能性がある。
- 西村 そして香りもある(笑)。
- 野崎 フランスでは近代以降に室内饲育が広がると、猫の美を诗人が礼賛し、文学が豊かになりました。ロマン派以降は猫がいないと始まらない。犬を描いた名作はフランスにはないけど猫は美的な対象です。カトリックには被造物に执着しすぎると神から离れるという思想がある。カトリシズムから自由になり、被造物に爱を注ぐ、という流れを猫から感じます。日本で猫爱が広がるのは江戸以降ですか。
- 须田 やはり平和になってからでしょう。
- 西村 浮世絵には猫がよく出てきますが、浮世絵に描かれる猫はみな尾が短い。江戸时代には短尾の猫が流行ったようで。その顷东南アジアから连れてこられて以降のようです。ですから长崎は今でも短尾の猫が多いですね。尾が短いと猫又にならなくて縁起が良いとの説もあります。
- 本郷 尻尾が长い方が猫らしいけどねえ。
- 须田 长い尻尾を立てて寄ってくるのがうれしいですよね。
- 野崎 印象派の画家は浮世絵に影响を受けました。マネの絵では猫同士がアパルトマンの上で恋を语る。その尾はすごく长いですが、浮世絵の猫は短いんですね。
东大キャンパスと猫たち
- 西村 私は根津在住ですが、この辺はまだ野良猫が多いです。一定时间一定の场所で见张ると実はいます。
- 野崎 东大のキャンパスにももっと猫がいていいと思うんですが。
- 本郷 昔は木阴を歩いていると猫が寄ってきました。
- 须田 1996年の东大新闻に本郷构内の猫マップが载っていました※2。これを见ると昔は随所にいたようです。
- 西村 弥生キャンパスにはまだいますよ。
- 野崎 それなら农学部経由で帰ろうかな。
- 西村 ふと思うんですが、东大生にも猫型がいたほうがいいですね。役に立たない、でもすごいぞ、という感じの。
- 本郷 最近の教员には犬型の人が多いかも。言うことをよく闻く従顺なタイプが。
- 西村 猫みたいな教员は务まりませんよ。
- 野崎 授业なのにいないとかね。とすると、我々は犬型なのか。
- 西村 反动で猫の自由さに憧れるのかも。
- 须田 猫型の人も必要ですよね。
- 西村 全员が同じ方を向いていては危険。
- 须田 ダイバーシティという意味で、猫的な価値観も持っておくべきですね。
- 野崎 猫がのんびりできるような町や大学は素敌だと思います。
- 西村 少し町を汚すくらいで猫を追い出すのは寛容性の乏しい社会だと感じます。
- 野崎 そういえばブリュッセルがテロで揺れたとき、警察の捜査に连帯してなぜか猫の写真を投稿する动きが広がったんです。罢飞颈迟迟别谤がかわいい猫写真だらけになった。事件解决は多少、猫のお手柄でもありました(笑)。
- 须田 猫ブームは日本だけじゃないですね。饲育数を见ると、贰鲍では猫が7500万头、犬は6600万头。アメリカは猫が9600万、犬が9000万だそうです。
- 西村 现代人のライフスタイルには猫の方が合っていますから。
- 野崎 今の子どもは自然との付き合いが少ない。身近に野生を感じさせる存在として、猫の意义が増すのは当然です。
大学という职场には猫が必要!?
- 西村 私は日本ペットサミットという団体の会长として、职场で动物を饲おうという提案をしています。动物とともに働き方改革をという话です。
- 野崎 职场に动物がいたら最高ですね。
- 西村 犬がいると生产性が高まるというデータがあります。ただ、猫はいたずらばかりしてカチンとくるかも。
- 须田 先日、研究栋で鼠が出たんです。駆除业者を呼びましたが、猫を置くという选択肢もあったなと后から思いました。
- 本郷 猫がいると鼠がこないですか?
- 西村 満腹でも动く姿を见れば捕えようとするから、鼠には胁威だと思います。
- 须田 本を囓る鼠の駆除という建前なら、猫は大学にとって有益では?
- 本郷 歴史的には鼠除けの猫のお札とかありますね。ただ、まじめに考えると、猫も本を伤つけそう。
- 西村 猫の爪とぎのせいで、うちの本はぼろぼろです。
- 野崎 以前、谷崎润一郎のことを书こうと全集30巻を入手したら、猫が全集で爪を研いでめちゃくちゃに&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。谷崎は猫好きだったから、と自分を慰めました。
- 须田 イギリス首相官邸には昔から猫が鼠とり队长として任命されています※3。东大でも雇ったらいいのでは?。
- 西村 総长室で癒し係として饲うとか。
- 本郷 いっそ、猫を総长にしたら?
- 野崎 一时的に受験生が増えるか(笑)。
- 西村 猫の自由さを大学も取り入れられたらいいですよね。
- 野崎 平安时代に官位を授けたんだから、猫に免状出したらどうかな。研究者の论文を精神的に支えた功绩で表彰、とか。
- 本郷 猫を农学部の研究员にしては?。
- 西村 自由に部局内を移动してエサをもらえると猫は喜ぶでしょうね。
- 本郷 地域猫ならぬ部局猫ですね。
- 须田 寛容性や多様性を根付かせるには猫がヒントになりそう。
- 西村 総长室がダメなら広报室に猫扉を。
- 须田 広报室に部屋はないんですよ&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;。
(脚注) ※1 禅宗の有名な公案。僧たちが猫で言い争うのを见た和尚は、「この猫について言いたいことがあれば言え。さもなくば猫を斩る」と言った。僧たちが何も言えなかったので、和尚は鎌で猫を斩った。その夜帰ってきた高弟は、その话を闻くと黙って头に草履を载せて部屋を出た。和尚は「彼がいれば猫を救えたろう」と言った。叁岛を含む多くの人が问答の解説を试みてきた。 ※2 1996年9月17日付の第1934号。弥生门、工学部、安田讲堂、病院、医学部図书馆、山上会馆、叁四郎池で撮った12匹の猫写真付地図を见开きで掲载。特に探さなくても猫に会えたことがわかる。 ※3 官邸付近の鼠を取るのが役目の公务员。1924年から12匹が任に就いてきた。给料は年100ポンド。现职は茶白のトラ猫?ラリー。 |
写真/贝塚纯一