特别対谈 ウェルビーイングの追求 公司と大学にできることは何か
令和4年12月12日、樱田謙悟経済同友会代表幹事と藤井輝夫東京大学総長による対談が行われた。前半は東京大学が取り組む「春雨直播app Compass」ならびに、経済同友会が提唱する「生活者共創社会」を基に、通底する共通認識へと話を進めた。後半では新しい社会づくりに向けた考えを交わし、経済と国民の幸福度やウェルビーイングの向上を両立する将来へ共に踏み出すことの重要性を確認した。多様性や包摂性、あるいは学びの時間の多様化、という観点から、大学と産業界の連携可能性、今後の協働について意見交換された。
■ 問いを立て、未知なるものを知ろうとする対話がこれからの社会に欠かせない
――「春雨直播app Compass」について、藤井総长からご绍介いただけますか。
藤井 もともと、新しい成长や新しい価値を考える际には、コモンフィロソフィーが必要だというところからスタートしたものです。大学が进むべき方位を共有し、さまざまなステークホルダーの理解を得ながら、この先の数十年を见据えて歩みを进めていくための、自分たち自身に向けた共同の问い掛けとして策定しました。同时に、知を学外へと共有し、共に生み出していくという思いを込めています。
最も重視しているのは対話です。向き合って話すことも対話ですが、「春雨直播app Compass」では、未知なるものを知ろうとする実践としての対話を重視しています。知るためには問いを立て、その問いを共有して話をすることが必要になります。対話する中で、お互いの信頼感も醸成されていきます。学術の高みを目指す上でも、また社会課題のソ リューションを考える上でも、対話は欠かせません。
この「春雨直播app Compass」は、研究者や学生だけではなく、東大で働く職員やスタッフも含めた指針であり、皆で共有していくものです。「春雨直播app Compass」が基本理念として掲げる「多様性と包摂性」にも、生活者共創社会との共通性を見ることができます。
樱田 非常に共感します。イノベーションにとっても多様性は重要なキーワードです。先生のご専门と思いますが、実は先ほど、ある量子力学の専门家と话をしていました。そこで教えてもらったのは、例えばコンピューターを比较したときに、ある面においてはクオンタム(量子)の方が従来型のハイパフォーマンス?コンピューティング(贬笔颁)に胜るのは分かっているけれども、全てが胜ると立証できているわけではないと。また、仮に别の原理が见つかったとしたら、社会のクオンタムに対する热がぐっと冷める场合もあると。つまり最先端に绞った研究は突破口になり得るけれど、そこだけを见ていると他の変化に気付かない可能性もあるため、イノベーションのためには非常に难しいバランスを取る必要があるのだと理解しました。
藤井 おっしゃる通り、いくつかの多様性をきちんと残しておくことは重要だと思います。例えば计算という点から考えると、机械での手回し计算机から始まり、半导体が出てきて电卓ができ、贬笔颁といわれる计算処理机能へと进化してきました。一方で、それらと异なる计算原理としてクオンタムが出てきたわけです。
贬笔颁もクオンタムも相当のエネルギーを使うのですが、クオンタムでは问题を解く速度が圧倒的に速い分、エネルギーコストを圧缩できるといわれています。しかし、今ご指摘されたように、可能性として语られている部分も多いわけです。だからこそ、复数の技术を「横につないでいく」という発想も重要になります。例えば贬笔颁とクオンタムの间に础滨が位置しています。础滨はデータ駆动型の计算なので、また様式が违うわけです。これらをつなぐプラットフォームの用意が、本当に重要になってきているのではないかと思っています。
樱田 ハイブリッドということですね。公司としても、最先端をいくアカデミアの方々の意见をよく聴き、それぞれの専门の芽を摘まないようにしながら、しかし过度に集中し过ぎないという视座が必要だと感じます。
■ 誰もが主体的に参画する社会が新しい成長をもたらす
――「生活者共創社会」について、樱田代表幹事から簡単にご紹介いただけますか。
樱田 経済同友会では、生活者视点での日本再兴を社会に提言し、その実践に向けて取り组んでいます。生活者という言叶は、英訳するときにもそのままローマ字で使っています。日本在住が长い英语ネーティブの方に闻いたのですが、「生活者」に当てはまる英语はないと言われたのです。例えば私は経済同友会の代表干事で、自社の会长で、かつ家庭では父でもあり祖父でもあります。人は谁しも多面的な役割?立场を持っており、さまざまな要素を统合して判断し、行动しています。これを生活者と捉えています。こうした个人が集まって构成する组织も、多面性を内包した生活者といえます。社会のあらゆるステークホルダーである生活者が、多様な価値観に基づいて主体的に行动し选択することで、当事者として社会に参画していくのが「生活者共创社会」です。
岸田文雄首相が唱えている「新しい資本主義」の実現には、新しい成長、新しい分配、そして新しい価値が必要だと思っています。しかしその全体像はまだクリアに見えていません。経済同友会では、この「生活者共創社会」を軸にして 10年後の社会をイメージしました。若い人たちにどうありたいかを聞いて、それを動画にしています。例えば「安心して周りを頼って子育てができる」のも一つのイメージですし、「誰でも、いくつになっても大学で学べる」というのもその一つです。若い世代の声がきちんと政治に届き、皆が責任を持って一票を投じている。そして人生100年時代を楽しく豊かに過ごしている。こうしたイメージを全て包含していく社会づくりを、多くのステークホルダーと共に進めていきたいと私たちは考えています。
実はこの动画は岸田首相にも见ていただきました。ここに描かれている姿は、现时点では梦に见えるかもしれません。しかし、描かないと実现しないものですし、首相にもそのようにお伝えしました。「失われた30年」という言叶がありますが、その背景には私たち経営者が「分かっていながら着手しなかった」ことによって、失ったものもあったと考えています。仮に、10年后も何も変わっていなかったとしたら、それは「変われなかった」のではなく「変わりたくなかった」结果ということになるでしょう。民间が率先して変わり、民间からイノベーションが起こることが、新しい社会成长をもたらす上で大いに重要だと考えています。
藤井 今のお話には、東京大学が目指すべき理念や方向性を巡る基本方針である「春雨直播app Compass」と共通項があると感じました。この30年間で起こった最大の転換は、視点の転換だったと思っています。以前はモノやサービスを「提供する側」の目線で多くが決まっていきましたが、今は「使う側」の目線で決まります。デジタル化の進展がそれを後押しし、GAFAのような企業はいち早く使う側視点のサービスを具現化しました。一人ひとりが発信者になり得る時代ということもあいまって、自分自身の目線から見るという転換が起こっています。
そうした事象から私が思うのは、公的な领域でも、今后は视点の転换が求められていくだろうということです。その一つが教育です。従来は教える侧が学ぶ环境をつくり、学ぶべき内容を设定していましたが、これからは学生が学びたいと思うことを学べる环境をいかにつくっていくかが、极めて重要となります。一人ひとりに个别最适な学びの环境を整えることが、学校教育全般に求められています。こうした価値転换の観点は、「生活者共创社会」とも重なる部分があるのではないかと思いながら、お话を伺っていました。
■ 一人ひとりの経験知や視点を集合させることがソーシャルグッドを生み出す
――多様性?包摂性というキーワードが出ましたが、特にどのような点から重视されていますでしょうか。
藤井 例えば社会课题は、一般に単一の専门性だけで解决できるものではありません。人が集まって対话する中から、共感性の高いソリューションが生まれてきます。つまり、ソーシャルグッドを目指す上では、多様な人々がチームアップして何かに取り组む场が必须と言えるでしょう。その意味では产业界の方々とご一绪することができれば、自ずと多様性が生まれます。ぜひ、大学に来ていただく、あるいは大学から赴く形で、一绪にアクティビティを进めていきたいものです。またジェンダーダイバーシティも重要な観点です。例えば本学では、まだ女性教员の数が十分ではありませんので、目标を设定して取り组んでいるところです。
以前の大学は、もしかすると敷居が高く思われたかもしれません。また学問領域ごとの縦割り構造も生まれがちでした。「春雨直播app Compass」では、そうしたイメージを払拭していくことも目指しています。おそらく産業界と共に共通の課題に取り組んでいくためには、いろいろな専門分野の先生を集めてチームアップしないとうまくいかないでしょう。実際、事業会社との協働を積極的に進めていますが、そこでは多岐にわたる専門領域の先生方にかかわってもらっています。
樱田 大学と产业界との连携について、「产学共同」や、官も交えた「产学官连携」の取り组みは昔からあり、さまざまな工夫が行われてきたはずです。一方で、欧米の活発な形に比べると、日本はまだまだと见る向きもあります。
「生活者共创社会」を议论してきた背景には、今のグローバルキャピタリズムが格差や环境问题などの课题を生んできたという问题意识があります。そのため、欧米の真似をして追いつこうという発想ではなく、日本ならではの新たな価値を生み出す発想が必要だと思っています。产学连携についても、日本ならではの连携のあり方が考えられるものでしょうか。
藤井 従来の产学连携の形态は、特定のトピックについて契约を结び、しっかりと成果を出すことを目指す形がスタンダードでした。一方、本学が取り组んでいるように、トップ同士が大きなビジョンを共有した上で组织対组织で连携することを决め、全体を合意した后に具体的な中身をデザインしていく方法もあります。何をやるか细かく决まっていない段阶から人が行き来し、対话を重ねる中で、アイデアを生み出していくのです。このスタイルは、あまり欧米では见られませんが、日本では可能な方法ではないかと思います。
樱田 确かに组织対组织による连携は大いに考えられますね。人が行き来する、时には相手先に常驻して、进め方から共に议论していくことも効果的でしょう。
藤井 大学に籍を置きつつ、公司でも仕事をする教员がいてもよいでしょうね。产业界と大学との间で、人の行き来がもっと増えるとよいと思います。例えば产业界で活跃している女性に一定期间大学で教えていただけるとよいのではないかと、最近考えているところです。女子学生にとってはロールモデルとなり得る人から直接话が闻ける、非常に良い机会になると思います。
樱田 おっしゃる通りですね。人材の交流の活性化は今后の社会にとって必须だと思っています。先ほどお话しいただいた中でもう1点掘り下げたいのが、イノベーションとダイバーシティの部分です。ダイバーシティによるイノベーション创出や业绩向上の効果は必ずあると确信しているのですが、明确な実証がないという见解もあります。藤井総长のような立场からは、どのように见えていますか。
藤井 确かなエビデンスと言われると答えにくいのですが、いろいろなものをデザインしたりプロジェクトを进めたりする际には明らかに影响します。男性だけのチームで灾害復兴住宅のデザインをしたらキッチンがない家ができた、という英国のジャーナリストのキャロライン?クリアド=ペレスが书いた『存在しない女たち』に挙げられていた话を大学院入学式の式辞で绍介したことがあります。さらには男性の体格を小型化して作られたマネキン人形を使ってシートベルトのデザインを考えたために、妊妇の运転时の安全まで発想が及んでいなかった、という话もあります。こうした事象は他にもたくさんあると思います。
樱田 学术の世界でもダイバーシティが成果につながった例はあるのでしょうか。
藤井 いろいろなケースがあると思いますが、よく知られているのは顿狈础の二重らせん构造の発见に、ロザリンド?フランクリンという女性研究者の大きな贡献があったというエピソードです。ジェンダーダイバーシティだけでなく、多様なバックグランドを持つ一人ひとりの経験知や视点を集合させた方が、どれだけビッグデータを集めて解析するよりも、良いものをつくれるだろうと思っています。
■ 社会にとっての良いインパクトを手掛かりに新しい価値を捉えていく
――大学と公司との连携には今后どのような可能性がありそうでしょうか。
樱田 経営をしていると、従来の経営学で论じられていたことだけでは解决できないものがたくさん出てきています。例えば人件费というのはコストなので、価値を生まないという前提で、最终利益から引いています。しかし、见方によったら赁金は人への投资とも言えます。投资対効果を説明できるなら、むしろ価値の方に入れるべきだという议论も出てきているわけです。また、暗黙知という価値もあるでしょう。ただし、なかなか可视化できていない。そういう面で大学の知にはぜひ頼りたいところです。方程式で示せたらどんなに楽だろうかと思うことは、ありますね。
藤井 新しい価値の捉え方には、まさにコモンフィロソフィーがかかわります。ソーシャルグッド、すなわち社会にとっての良いインパクトを考えていくことが新しい価値の実现と密接にかかわります。コモンフィロソフィーを纽解くところから始めると、见えてくるものがあるはずです。
樱田 経営学の野中郁次郎先生の着书にも、コモンソサエティーということが记されていました。「世のため人のため」という考えが利益重视のキャピタリズムを补うには必要であり、日本の强みはそこでこそ出せるだろうという一节を记忆しています。
藤井 その通りだと思います。昨年4月の本学入学式の式辞の中で渋沢栄一による「実业」の话を取り上げました。明治时代の起业家たちは「合本主义」という理念に沿って「业」を兴しました。つまり、皆で人材やリソースを持ち寄り、社会のためになることをしようという考えが先に立っていたわけです。自分だけの储けではありません。日本の近代国家のベースには、ソーシャルグッドのために业を兴すという発想がある。皆さんも社会のためになることへの一歩を踏み出してほしいという话をしました。结构反响があったと感じています。
樱田 何かやりたいという気持ちは皆、どこかにあるでしょうね。
藤井 そう考える学生が増えていると思います。最近、工学系の一部の専攻では2、3割の人が起业しているとも闻いています。
樱田 社会课题解决を目指すスタートアップが増えて、しかも上场规模にまで成长していくことは歓迎すべきですし、私自身も関心があります。
というのは、私が代表を务める厂翱惭笔翱ホールディングスは日本で最大级の介护事业を行っています。10万人以上の高齢者との接点を持ち、働く介护士も2万6千人ほどに上ります。介护はまさに社会课题と密接にかかわる领域で、ここでの课题解决に役立つ技术は、切に期待するところです。例えば、プライバシーを侵害しないけれども何が起きているか分かるようなカメラやセンサーがあると现场の悩みを解决するのに役立つでしょうし、自动的に行动记録が取れるような础滨があれば、介护のみならず多様な领域で重宝されるでしょう。こうした社会に必要とされている技术の开発には、积极的な投资も考えるところです。
藤井 课题解决の観点から见ると、介护领域に応用できる技术もたくさんありますし、これから起业を考えている学生の中にも、困っている现场から発想する人がどんどん出てくると思っています。
■ 学びにおける時間的多様性を広げ、人材の交流を増やし、価値を追求するところに投資をしていく
――具体的に取り组むべきことへの示唆はありますか。
樱田 日本には安全さや四季折々の景色などソフトパワーといわれているものがありますが、これだけでは弱いと思っています。やはり骋顿笔3位という経済力は维持していくべきでしょう。ソフトパワーと経済力を组み合わせ、全体として国民の幸せ度が一番高い国家を目指すべきだということを、理想ですがやはり思うところです。自分が幸せだと感じている人が世界一多い国にできないか。そこで価値という観点が出てきます。幸せとは何かというところに、価値がかかわります。日本が大事にする価値はこれだと示すこと。そしてそれを追求していくところに公司は投资をし、大学には头脳を提供してもらって、共に取り组むことが必要だろうと思っています。
藤井 个々人のウェルビーイングを追求すると同时に、一人ひとりの人的资本の高度化も同时にやらないといけないと感じています。一人ひとりの力をより高度にしていくところに、教育や大学の役割が大きくかかわる。个々人にとっては、それぞれの自己実现が进む。そのための就业と学びのサイクルをどうやってうまくつくるかがこれからの课题です。その中で女性活跃も进んでいくはずです。
そのために一つ思うのは、个々人の学びにおける时间的多様性です。これまでは、大学を卒业して就职し、そのまま働き続ける人が大半でした。しかし昨今は、リスキリングの重要度も上がっています。ある期间は働き、ある期间は学ぶという形を持てるようになれば、もっとキャリア选択の幅が広がります。そのためには个々人の意识変化や、大学侧の変化も必要でしょう。一度社会に出てから入学したい方、社会人のままで学びたい方など、より多様な人が学べるように大学も进化していく必要があると思っています。
樱田 公司での社员教育も、従来型では限度が来ているように感じます。例えば当社の场合は、グループ全体で8万人ほどの职员がいて、そのうちの1割强は日本人ではありません。日本语での一律の教育が合わないのは言うまでもないわけです。现在は、个々人が自分で教育を选べるようにしつつ、选抜型で次世代干部人材を教育しています。さらに今后は、公司内だけで完结する必要もないでしょう。外の知恵を活かすという発想も大事です。例えば介护の现场はデータの宝库ですので、データ活用をするためには解析の専门家に来てもらって一绪に考えてもらうことができるはずです。社员が全部勉强して身に付けなくてもよい。问いを立てられる力を公司は持っているはずですから、それを受けて立ってくださる先生方とコラボレーションができるとよいと思っています。
藤井 可能であれば、そこに学生も参加できるとよいですね。クラスルームの中で学べることももちろんありますが、限度があります。私は「学びを社会と结び直す」と言っているのですが、现场を见ることによる学びは大きいと考えています。そこで新しい问いも生まれますし、自分に何が足りないかも分かってくるでしょう。もちろんただ见ているだけでは駄目で、自分ごとにしてもらう必要があります。学生や若手研究者にとって、経験すること自体にも効果があると感じます。実际には今、公司との组织间连携が复数件、进み始めましたので、まずはその中で人材の行き来が増えればと取り组んでいるところです。
■ 企業の問いを立てる力と大学の知とのコラボレーションを目指す
――これから目指す方向について、あらためて教えてください。
樱田 公司として、最も重要なのはイノベーションです。そのためには知が必要です。魅力的な大学の知に対して、市场原理と社会课题で动いている公司が问い掛けていく。そうした机会が増えることを目指したいと思います。产业界侧は、マーケットやお客さまという、ある种「わがままな」人を相手に日々试行错误しています。一方で、研究者の方は俯瞰的にその状况を见ることができるはずです。良い问いと、そこに反论するような生々しい议论が交わされるほど、共创に结び付いていくのではないかと思うところです。
藤井 実业の现场感というのは、大学での研究にとって大きな刺激です。両者の対话から、きっと生まれてくるものがあると思っています。
樱田 実は厂翱惭笔翱ホールディングスでは、产业技术総合研究所(产総研)と6年间で60亿円という大型のプロジェクトを立ち上げました。产総研から人を受け入れて、当社からも人を送り込んでいます。介护にかかわる大きな课题について、10以上のテーマを掲げ、优先度の高いものから共同研究を始めています。进捗は定期的に报告してもらっていますが、物足りないときにははっきり伝えます。やはり取缔役会に対して、将来生み出す価値を见せていかないといけませんからね。そうした紧张は、共同研究を建设的に进めるためにも必要だと思っています。
藤井 共同研究では何の问いに対して取り组んでいくか、最初にしっかりとチームで认识合わせをしておくことが大事でしょうね。そこでかかわってくるのが、コモンフィロソフィーです。最初から答えを探すというよりも、向かう方向をきちんと揃えていく。そういう対话から始めていくことに、意义があると思っています。
樱田 ジョイントベンチャーをつくった相手との対話を思い出しました。SOMPOホールディングスでは米国のソフトウエア会社のパランティアと業務提携しています。パランティアというのは、ベンチャーキャピタリストたちが立ち上げた会社なのですが、その1人、アレックス?カープが言っていました。彼の持論は、テクノロジーの究極の目的は社会のハピネスやウェルビーイングのために使うことだ。しかし、最近のシリコンバレーはfor moneyになってしまっていると。当社と組んでくれた理由を聞いたのですが、パーパスのところで共感し合えたことが実現に進んだ一つの理由だったのだろうと思っています。
――ちなみに、お二人にとってのハピネスとはどのようなものでしょうか。
樱田 个人の话ですが、孙が3人います。恰好よく言い过ぎかもしれませんが、ハピネスを考えると、この孙たちに残せる日本は何だろうかと考えるわけです。もしも、「良い日本を残してあげられた」と思えたなら、それは相当幸せなことです。世のため人のためというより、自分のためなのですが、シンプルにそういう発想からできることを考えたいと思いますね。
藤井 やはり若い人たちが、自在に自分の未来を思い描きそれを実现できるような社会にしたいですね。日本という范囲にとどめる必要もないと思っています。世界を视野に置きながら、日本にいる若い人が行动しやすい社会をつくっていけたらと思います。
――今日の対谈の感想をお闻かせください。
藤井 共感する観点がたくさんある中で、お互いの考えを交わすことができ、有意义でした。今后ぜひ、产业界とより深くかかわらせていただき、人的资本の高度化と申し上げたような教育の部分、そして研究の部分でご一绪できればと思います。本学ではそのために产学协创推进本部という组织を设けています。一绪に新しい未来の社会をつくっていくことができればと强く思います。
樱田 起业するときでも、1人で全てをやる必要はないはずです。自身がアイデアと技术を持っていて完结できる场合もあれば、技术のある人と组んでアイデアを事业にしてもいいわけです。今、日本に必要なのはイノベーションだというのは先に申し上げた通りですが、それは経営者の时代が来たと自分たちに言い闻かせることだとも思っています。何でも自分たちでやるのではなくて、いろいろな知恵を探すこともイノベーションを起こすために必要です。もっと贪欲に大学の知恵に目を向け、连携していけたらとあらためて感じました。
藤井 「春雨直播app Compass」では、大学が対話を通じて人と人、組織と組織をつないでいく存在になっていくことも指針に入れました。国内の各大学にも特色がありますし、海外の大学とのネットワークも広げているところです。私たちを介して多様なつながりができていくことを願っています。
樱田 各地の大学と公司が连携することもできますし、无数の可能性があることを感じています。大学と产业界で、それぞれの强みをぶつけ合いながら、より良い社会づくりに协力していけたらと思います。
(出所)公益社団法人経済同友会 2022年12月号-2023年1月号掲载