大国间竞争の中で世界はどこに向かうのか? 东京フォーラム2019パラレルセッション「非グローバリゼーション时代における人类全体の安全保障の追求」レポート

このシリーズでは、地球と人類社会が直面する課題について議論し意見交換するためにスタートした国际会議「Tokyo Forum(东京フォーラム)」について取り上げます。东京フォーラムは東京大学と韓国の学術振興財団Chey Institute for Advanced Studies (CIAS) が共催し、 毎年開催されます。2019年12月6日から8日、本郷キャンパスで開催された会議には、政治、経済、文化、環境などの分野のリーダー120人以上が世界中から集まり、「Shaping the Future(未来を形作る)」というテーマで議論に参加しました。

大国間競争は、地政学的にも通商的にも緊張を高めている Credit: Slay/Shutterstock.com
世界最大の経済大国である米国と、世界第2位の中国。加速する大国间竞争の中で、世界はどこに向かうのでしょうか?
「非グローバリゼーション时代における人类全体の安全保障の追求」と题したパラレルセッションに出席した専门家らは、地政学的にも通商的にも紧张を高め、関係を悪化させるばかりの両国间の対立に対し、実行可能な解决策を见出すことは容易でないとの认识で一致しました。

「东京フォーラム2019」の2日目にあたる2019年12月7日に行われた本セッションでは、东京大学の藤原帰一教授がオーガナイザーを务めました。
东京フォーラム2019の开催日は、米国とソ连の冷戦终结の要因となったベルリンの壁崩壊30周年を祝って何万人もの人々がベルリンに集まった、その约1ヵ月后にあたります。しかしながら、この日の演者らの间に祝福ムードは见られず、米国とその现在のライバルである中国との间で激しさを増す対立について多くの议论が交わされました。
最初のパネルセッションでは、はじめに东京大学のヘン?イークアン教授が人工知能(础滨)に着目した讲演を行いました。ヘン教授は、2017年のロシアのプーチン大统领の「この分野でリーダーになった者は谁でも世界の支配者になれる」という発言を引用したり、2019年に米国のトランプ大统领が発令した、础滨分野における米国のリーダーシップ维持を目的とした大统领令などを挙げ、各国が础滨分野における世界的な覇権の树立に関心を寄せていることを指摘しました。
ハイテク分野における大国间竞争の激化にもかかわらず、ヘン教授は、国际的なコミュニティにはまだヘルスケアをはじめとする多くの领域で协力する机会があると指摘し、技术开発が一方にだけ利益を、もう一方に不利益をもたらさないような方法で、础滨の応用を推进できると述べました。
続いて东京大学东洋文化研究所の佐桥亮准教授は、大国间竞争が东アジア地域秩序に与える影响について、日本の视点から解説しました。
新兴テクノロジー开発は制限されるべきでないが、米国の规制と政策はイノベーション空间における开放性に変化をもたらしていると佐桥准教授は述べ、米国は、中国との输出入取引、特に情报通信技术分野における贸易を制限している、と付け加えました。
佐桥准教授はまた、日本について、法规制に则った経済活动を求めるという意味で米国と立场を同じくするものの、経済的?技术的に中国と密接に関连しているため、米国のテクノロジー政策とは完全に一致しない、と述べました。安全保障上のテクノロジー分野の规制や输出管理はある程度必要であるにせよ、グローバル?バリュー?チェーン(製造业などの国际分业体制)を切り离すことは、日本を含む多くの国にとって困难だろう、と话しました。
エネルギー安全保障による地政学への影响
高丽大学のリ?ジェソン教授は、北东アジアにおけるエネルギー动向と地政学的な新局面について论じました。この讲演では、再生可能エネルギーの出力量の急激な増加や、微细な粉尘粒子による大気汚染への紧急対応の必要性などがトピックとして触れられました。
リ教授は、再生可能エネルギー开発がもたらす地政学的な影响を、大きく2つに分けて考察しました。化石燃料の供给竞争が缓和され、二国间政策によって当该国双方がエネルギー安全保障上の利益を得るなどのポジティブな面と、外交的紧张が増大し国家主导の协调関係が妨げられるなどのネガティブな面がみられると述べました。
また、リ教授はエネルギー関連の新たな競争分野に言及し、その一例として現在進行中の「一帯一路」構想と「Asia EDGE」間の競争を挙げました。一帯一路構想は2013年に中国が提唱した、陸と海の地域インフラ強化を目指す計画であり、Asia EDGEは2018年に米国が提唱した、インド太平洋地域全体における安全かつ持続可能なエネルギー市場の創出を目的とした構想です。

「一帯一路」は中国の対外戦略の中核を占める構想で、陸と海の地域インフラ整備を目指す Credit: YIUCHEUNG/ Shutterstock.com
こうした状况にもかかわらず、リ教授は、テクノロジーの进歩が长期的には相互依存および多国间プロジェクトのレベルを高め、市场の统合が进むと予想しています。「サイバーセキュリティ、デジタルインフラ、原子力安全保障、国境を越えた大気汚染といった课题に対しては、より全人类的な対応が求められます」
北京大学の雷少華准教授は発表の冒頭で、グローバル化の時代においては、グローバル?バリュー?チェーンと国际的な産業構造の拡大が国际関係の再構築をもたらしたと述べました。 その結果、安全保障の性質が変化し、重点が戦争の阻止から産業の保護に移行したと指摘しました。
雷准教授は、大国间竞争を再构筑するための最も重要な要素として、产业构造、最先端技术、市场规模の3つを挙げました。
そして、今后数年间の技术革新がこの竞争に刺激をもたらすと予测しました。
大国间竞争の新たなトレンド
雷准教授は、昨今の米中関係は2大国间の竞争の新しいトレンドを反映しており、両国はハイテク分野における覇権争いをしていると述べました。そして、中国の通信会社ファーウェイに対する米国の贸易禁止令は、中国による础滨や5骋などの情报処理?通信强化の新技术の商业化を止めるものではないと指摘しました。
雷准教授は、この2大国間の対立は、かつて米国とソビエトという超大国間で起きた冷戦の対立とは著しく対照的であるとの見解を示しました。 そして、今日の世界が直面している危険とは戦争ではなく、2つの異なる科学?技術標準システムが出現する可能性であると述べました。
雷准教授は、中国と米国は2008年の世界的な金融危机への対応に共同で取り组んだときと同様、互いに协力する必要があると强调しました。
後半のパネルセッションでは、はじめにシンガポール国立大学のカンティ?バジパイ教授が登壇し、過去30年間の東アジアにおける大国間競争は、勢力の不均衡や抑止力、経済的相互依存、 包括的な地域機関という3要素の組み合わせによって抑制されてきたと指摘しました。
バジパイ教授は、これら3要素から成る构造が现在、势力バランスの変化、経済的相互依存に対する不信感、既存组织の构造の不安定さによって揺らいでいると述べました。そして、安心感と信頼感を育む方法によって抑止力を强化し、さらにはコンピューター関连の课题と技术に関する包括的な取り决めの交渉を通じて、冷戦后期を制御したような强力な二极性の势力バランスが构筑されれば、地域の安定化をもたらしうると述べました。
具体的には、核、海事问题、サイバーセキュリティなどの大国间の问题を専门的に扱う全アジア的な组织の设立を提案しました。欧州には世界最大の地域安全保障组织である欧州安全保障协力机构がある一方で、アジアには东南アジア诸国连合(础厂贰础狈)が设立した础厂贰础狈地域フォーラム(础搁贵)があります。バジパイ教授は、础搁贵の活动は主に非军事的な胁威に注力する非伝统的安全保障に向けられていると指摘しました。
バジパイ教授は、大国间の安定を目的としたアジアの安全保障组织の必要性がますます高まっていると述べました。そして、米国、中国、ロシアなどの大国がそうした地域安全保障メカニズムに懐疑的であろうとも、激化する対立や、さらには最悪の场合の意図せぬ戦争を回避するためにも、各国にとって参加する意义はあると述べました。

东京フォーラム2019のパラレルセッションの中で、変化するテクノロジーと地域への影响について议论する専门家たち
北京大学の张清敏教授は、冷戦下の米国との対立の中で始まった、中国における3段阶の発展の道筋を示しました。そのうちの第2段阶は、1979年の米中の国交正常化から最近まで続き、両国ともに有益で安定した二国间関係を享受しました。そして、现在の第3段阶は、近年の米中関係における不穏な空気と不确実性の高まりとともに始まったと述べました。
张教授は、冷戦による分裂と対立が长引く事例として、北朝鲜と韩国を隔てる朝鲜戦争(1950-53)の停戦线「38度线」の存在を挙げ、东アジアにおける冷戦は决して终わっていないと述べました。
しかしながら张教授は、冷戦下の米中関係に起きた出来事が、将来に向けた手がかりになると考えています。米国は1979年に国交を正常化して中国を认めたように、现在の中国の台头に适応する必要があり、中国を平等に受け入れる準备をすべきであると主张しました。そして、このアプローチが両国の相互理解を促すであろうと述べました。
ロンドン?スクール?オブ?エコノミクスのピーター?トルボウィッツ教授は、碍翱贵スイス経済研究所が算出したグローバル化の指标を示し、1990年代まで西侧诸国の有権者は自国の政府に比べ、グローバル化に対してポジティブな姿势であったことを指摘しました。それ以降、西侧诸国の政府はグローバル化のプロセスを支援するようになったものの、逆に有権者は次第に関心を失っていったと述べました。
この议论に、プリンストン大学のジョン?アイケンベリー教授も加わりました。アイケンベリー教授は、英国と米国がこれまで国际自由主义の秩序の主要な担い手であったと指摘し、両国が过去2世纪にわたって、アジア?欧州のパートナーらとともに、市场の开放、多国间ルール、地域を超えた制度、普遍的な原则に基づいたグローバルシステムの构筑に贡献したと述べました。

英国の「ブレグジット」をめぐる国民投票とトランプ米国大统领の诞生は、米英が国际自由主义の秩序の主要な担い手であった时代の终わりを象徴づけた
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しかし、英国で行われたいわゆる「ブレグジット」をめぐる国民投票では、国民は欧州连合を离脱することを选択し、また米国のトランプ大统领の当选は、これら一连の努力を止めてしまったと述べました。
大国间竞争がもたらす课题は膨大であるものの、この日のセッションに参加した専门家らは、今后新しい、おそらく非欧米的な视点を取り入れた自由な国际秩序が生まれる可能性を示唆しました。佐桥准教授はイベント最终日のサマリーセッションの中で、それを実现するには、政府だけでなく市民も议论に巻き込むことが不可欠であるとの考えを示しました。
「したがって、私たちに课せられた真の课题は、(中略)グローバル化のメリットと、我々がどのような国际社会を自由主义に基づいて构筑したいのかという点について、人々を纳得させられるかだと思います」と佐桥准教授は结びました。
この記事は春雨直播app FOCUSに掲載された东京フォーラム2019についての英文記事の翻訳です。セッションの一部はにて视聴いただけます。