10年目の福岛で、「现在进行形」の灾害をどう伝えるかを学ぶ
东北地方太平洋冲地震、东京电力福岛第一原子力発电所事故から10年が経过しました。しかし、福岛は津波に加えて放射性物质による汚染の被害が大きかったことから、他の东北の被灾地とはこの10年の歩み方が异なり、「现在进行形」の课题に直面し続けています。
情报学环総合防灾情报研究センターの関谷直也准教授(东日本大震灾?原子力灾害伝承馆上级研究员を兼务)は、原子力灾害や自然灾害に関する社会心理やリスク?コミュニケーションの研究を行ってきました。
関谷先生は、「10年経っても、福岛では避难や除染、原発の廃炉作业や汚染水処理、风评被害など、多くの问题が现在进行形で続いています」と话し、「原子爆弾を投下された広岛?长崎や、水质汚浊による公害に苦しめられた熊本県水俣市は、长い时间をかけて、平和や环境というメッセージを発する存在となりました。被害が过去のものでない福岛には、まだそのような明确な『教训』のようなものが见えない状况です」と指摘します。
このような现在进行中の灾害をいかにコミュニケートしていくかを学ぶため、関谷先生は、2020年11月20日(金)~22日(日)の2泊3日で、福岛県双叶町と浪江町を访れるフィールドワーク型の授业を実施しました。
今が重要なタイミング
関谷先生は、今が、社会问题やジャーナリズムに関心のある学生が福岛を访れる非常に重要なタイミングだと话します。
「原子力灾害の课题は今后数十年続いていくことになりますし、现在の10年の课题を理解しておくことは、福岛原発事故や东日本大震灾の教训をどう伝え、今も残る课题にどう対処すべきか、今后の灾害や危机を考える上で基础として、さかのぼって広岛?长崎の原爆、冲縄问题などをどう考えていくべきかを考える契机にもなります」
被灾地の视察に参加したのは、学际情报学府「原子力灾害论滨滨滨」を受讲する大学院生と情报学环教育部「メディア?ジャーナリズム研究指导」を受讲する教育部研究生の计17名です。
参加学生は、东京电力福岛第一原子力発电所を访问して1~4号机や汚染水のタンクを目の当たりにし、东京电力廃炉资料馆の见学も通じて、事故と廃炉作业について理解を深めました。その后、将来に教训を残していく目的で昨年9月に开馆した东日本大震灾?原子力灾害伝承馆、震灾遗构の请戸小学校、津波発生时は请戸小学校の児童や教职员などが避难して现在は霊园がある大平山を见学しました。昨年3月の闯搁常磐线全线开通に合わせて営业を再开した双叶駅周辺や、復兴のシンボルであり町の人びとが集う「道の駅なみえ」も访れました。
さらに、东日本大震灾?原子力灾害伝承馆にて福岛大学の天野和彦特任教授、テレビユー福岛记者、浪江町住民の方の讲义を受讲しました。この授业を通じて「灾害を伝承していくこと」や「灾害をコミュニケートしていくこと」を考えました。
なお、このフィールドワークは、东京大学贵厂滨事业「次世代リスクコミュニケーション研究?教育拠点」の一环で実施されました。また、コロナ下のため、东京大学アイソトープ総合センターの研究协力のもと、参加者全员に事前の自宅での隔离と笔颁搁検査等を実施して现地に向かいました。
なぜ复雑なのか
学生らは、视察を终え、オンラインで成果报告会を行いました。「复雑性という特徴がある」と発表した学生に関谷先生は、「色々な课题があって复雑だというのはその通りだが、何が复雑なのか。なぜ复雑に感じるのか、実际どう复雑なのかを考えなければならないのではないか」と问いました。学生らは、现地で関わった様々な関係者のそれぞれの発言や思いを振り返りつつ、どのように现状を理解すればよいのか悩みました。
この原子力灾害は、中长期的に被害が続くという点でこれまでの自然灾害とは异なり、立场によって评価が异なる特殊性があるため、社会全体で共通理解を持つためのコミュニケーションが特に难しいと、関谷先生は指摘します。
「原子力灾害について考える际、広域避难、区域外避难、甲状腺がんなどの健康影响、放射线に対する不安感、赔偿など、原子力発电所事故の影响や放射线の影响をより大きくみようとする方向性と、地域再生、帰还、农林水产业や観光业の回復、风评被害、リスク?コミュニケーション、コミュニティ再生など、福岛県の復兴をより重视する方向性、二つの方向性があります」と先生は説明します。「前者は事故の影响や放射线の影响をより大きくみようとする考え方、后者はより小さくみようとする考え方と结びつき、放射线について不安の大小、原子力発电の推进ないしは再稼働の反対/賛成、福岛県の农产物消费に対する消极的姿势/积极的姿势などと结びついてしまっています。これらの课题群は、同じ原子力灾害、放射线灾害による被害であるがゆえに密接に「连関」していますし、それらを総体としてみようとしないと理解できません」
研究者は「なぜ複雑か」「どのように複雑か」を解明する仕事を担います。 原子力災害を総体的に学び、原子力災害の課題について一つ一つ読み解く努力が求められる中、適切に課題を認識するために、実際に現地を訪れて現状を目の当たりにし、地元の人々にお話を伺うフィールドワークが重要だ、と関谷先生は強調します。
今后、当时の灾害の记忆がほとんどない若者が大学生になっていくでしょう。この东日本大震灾から何を学ぶべきなのか、何を次の世代に伝えていくのか、大学教育もマスメディアも博物馆も検讨の余地がある、と関谷先生は话します。コロナ下でも学びを止めず、东日本大震灾?原子力灾害の课题を考えていくべく、来年度以降も同様の授业を开讲して学生とともに被灾地を访れ、课题に向き合っていく、と决意を述べました。
津波被害を受けたが、当时在校していた児童と教职员が全员无事に避难できた福岛県浪江町立请戸小学校の震灾遗构を见学
东日本大震灾?原子力灾害伝承馆にて福岛大学の天野和彦特任教授による灾害対応と避难所运営についてのワークショップを受讲
文:情报学环教育部 森下瑠里花(広报课インターン)
写真提供:関谷直也准教授 森下瑠里花(トップ画像)