大学から公众卫生の现场へ 东大の研究者?院生约20人が都内の新型コロナウイルス対応を支援
2020年5月19日、东京都杉并区の杉并病院の会议室に、医师や看护师を中心とする病院职员约20名が集まりました。テーブルにはビニール製のガウン、手袋、ゴーグル、フェイスシールド、キャップ、そして狈95マスク、タイベックとよばれるつなぎの白い防护服など、个人防护具の数々が并べられています。
东京大学医学系研究科社会医学専攻(公众卫生学分野)の冨尾淳讲师は、看护师による防护具の着脱の実演中、次のように助言しました。
「皆さんは、この白い防护服を着ることを想定していたかもしれませんが、基本的には手袋、マスク、フェイスシールドと长袖のビニールガウンで大丈夫です。これらを正しく着脱できるようにしておきましょう」
その日の研修のテーマは新型コロナウイルスの感染予防対策。病院スタッフはメモを取りながら、冨尾先生と、共に讲师を务めた足利大学の村上弘之先生(看护学)が详细に手顺を指导する间、热心に耳を倾けました。特に力点が置かれたのが、新型コロナ感染者や感染の疑いのある患者をケアした后の脱衣についてでした。
冨尾先生は4月以降、杉并保健所の依頼を受け、区内の医疗机関を访れて院内感染防止研修を行っています。この日は研修に先立ち病院内を视察し、万が一感染が発生した场合に备え、患者やスタッフの安全な动线を确保するゾーニング(区域分け)についても助言を行いました。
日本では新型コロナウイルス感染症の第一波のピークはほぼ越えたと考えられていますが、感染终息には程远い状况です。どの医疗机関も、地域や种类に関わらず、医疗物资の供给が十分でない中でも、感染リスクを最少化するためのノウハウを身に付け、特に最前线で働く看护师やその他のスタッフへの感染を防ぐ必要に迫られています。?
この日の研修を含め、东京大学公共健康医学専攻?社会医学専攻の小林廉毅教授は3月下旬以降、学内で公众卫生を専门とする研究者?大学院生に声をかけ、保健所への応援活动の调整をしてきました。保健所の様々なニーズをヒヤリングし、学内メンバーのスキルや意向とマッチングさせるプロセスを経て、4月10日から応援活动を开始。东京大学のメンバー约20人は、これまで江东区、杉并区、世田谷区の3保健所と东京都健康安全研究センターに非常勤职员として勤务し、医疗机関での実地研修を行うほか、电话相谈の対応や患者データの入力、感染者の発生した医疗机関や介护施设での感染の広がりを调べる积极的疫学调査などの実务に従事しました。
これらの活动は、东京大学医学系研究科公共健康医学専攻(厂笔贬)のメンバーなど、学内の公众卫生関係者の多くが所属している日本公众卫生学会が、新型コロナウイルス対応で业务量が急激に増加した保健所に、何かできることはないかと働きかけたことから始まりました。东京大学だけでなく、都内の他の公众卫生大学院および医学部公众卫生系13校も连携して都内の保健所に応援人员を派遣しています。
「以前には教员や学生が个人ベースで东日本大震灾后の支援活动に参加したことはありましたが、今回、新型コロナウイルスに関して、东大の公众卫生関係者が组织的に保健所等支援に取り组んだという点でも意义があります」と小林先生は话します。
院生がシフトを组んで勤务
世田谷区では、4月10日から5月末まで、公共健康医学専攻长の桥本英树教授の指导の下、14人の院生が世田谷保健所に派遣され、业务に従事。院生の多くは医师、看护师、保健师などの有资格者です。保健师でもある世田谷保健所の虎谷彰子係长は、东大からの応援はちょうど保健所の业务が急増した时期に始まったと话します。
「3月から5月にかけ、一日平均で约200件と、普段より多い数の问い合わせがありました。4月13日の週には一日300件以上となり最高で350件以上に跳ね上がったんです。受话器を置くとすぐに次の电话が鸣る、という感じで、ひっきりなしにかかって来ました」
各地の保健所は新型コロナウイルス感染症対応の中心的な役割を担っています。一般市民からの相谈窓口であり、医疗机関と连络を取りながら笔颁搁検査を依頼し、検査结果が阳性だった场合には入院手続きも行います。
世田谷区は人口が92万人と都内で最も多く、新型コロナウイルスの感染者数も6月20日时点で累计で513人と、都内で二番目に多い数です。
厂笔贬メンバーが世田谷保健所で请け负った业务内容は多岐にわたりますが、有资格者のみが电话での応対を担当しました。その他に、行政文书の作成、阳性患者の健康状态についてのフォローアップ调査や患者情报のデータベース入力なども行いました。
厂笔贬メンバーを派遣するにあたり、桥本先生は全员のシフト表を作成し、3人から5人ずつチームに分け、有资格者が必ず毎日含まれるようにしました。また桥本先生自身も时间が许す日は保健所に赴き、支援にあたりました。
虎谷さんは、基礎疾患がある区民からの問い合わせで、症状がCOVID-19によるものか、基礎疾患の悪化によるものかの判断が難しいケースなど、慎重な対応が必要なとき、医師である橋本先生の助言に助けられた、と振り返ります。 14人もの学生が週に1日か2日ずつ働く状況で、業務内容についてのまとまった説明は初日のチームに行っただけ。業務内容が院生間でしっかりと引継ぎされていたので、2日目からは説明をする必要がなかったといいます。
「一番大変な时に来てくれてとても感谢しています」
一方、桥本先生は、院生による保健所支援は単なる「手伝い」ではなく、教室の授业では体験できない危机管理の现场での実务を通して、现状を知り、改善策を考えてもらうことが目的だったと振り返ります。
职员の不安を軽减する
杉并病院の职员は、研修の机会を得て安堵した様子でした。病床数97床の疗养型病院であるこの病院では、感染発生に备えて独自のゾーニング计画を立てていました。当初の计画では感染患者を病院の最上阶である4阶の病室に移动させる予定でしたが、施设を见学した冨尾先生らは、水道へのアクセスや脱衣のスペースを考虑して3阶の个室を割り振るほうがよいと助言しました。
杉并病院の洼井康彦事务长は研修后、病院ではもともと感染症患者は受け入れておらず、受け入れに関する知识も実地体験もこれまでなかったと话しました。
「我々の病院は、入院患者も高齢者ですが、职员も高齢者が多く、颁翱痴滨顿-19は高齢者が重症化しやすい特徴を持っているので、职员が非常に怖がっている状态でした。先生方が、基本的なステップをきちんと踏めば感染を抑えられるという话をしてくださったので、大変安心しました」
2014年から2015年にかけて西アフリカでエボラ出血热が流行した际、国内の医疗机関での患者受け入れ準备の助言をした経験がある冨尾先生。今回のパンデミックに関しては、感染症を専门としない中小の医疗机関では、教科书通りの対策が通用しないだろうと话し、狈95マスクや保护ガウンなどの医疗物资の供给が限られていたり、施设の状况が感染症専门の医疗机関と异なる中、今ある资源を最大限に活用してやりくりする方法を考えなければならないと述べます。
「恐怖から必要以上の対策をとろうとする医疗机関もあるようですが、惯れない操作や手顺が増えてかえって危険です。标準的なところをきちんと理解していただくことで、感染のリスクを低减し、スタッフの不安も軽减することができます。そういうことがとても重要だと思います」
取材?文/小竹朝子