世界から运动不足をなくすために──アクティブな社会を“共创”する

现代社会に生きる人々の运动不足が深刻化しています。人々が健康に过ごしやすい社会と环境づくりについて、「世界から运动不足をなくすこと」をミッションに研究活动を行う鎌田真光先生(医学系研究科)に闻きました。

「普及」と「実装」の科学
── 私たちの運動不足の現状と、現在の研究について教えてください。
人々の生活习惯と健康に関する研究では、身体活动の不足、つまり体を动かさないこと(运动不足)がさまざまな疾病のリスクを高めることがわかっています。ここでいう身体活动とは、スポーツに限らず、农作业から子供の世话まで、日常生活の仕事?移动?家事の场面におけるさまざまな活动を含みます。现代の日本人の死亡原因をリスク要因で见てみると、3位が身体活动の不足です。身体活动は、障害の有无にかかわらず、全ての人々に推奨されていますが、私たちはさまざまな理由で実行に移すことが难しい现実に直面しています。
日本をはじめ、世界の多くの国で、人々の身体活动不足の状况が悪化していると报告されています。职业上の身体活动强度については、日本では过去50~60年のあいだに、平均で1割减少しています。日本人の平均歩数は世界でもトップレベルに高いといった报告もありますが、経年的には减少倾向にあります。さらに、さまざまな调査から、运动不足の状态にある国民も多数いることがわかっています。

そこで、私自身は、世界から运动不足をなくすことをミッションに掲げ、一人一人が自分に合ったアクティブな生活を送れるような社会を作ることを目指してさまざまな活动と研究を行っています。私の専门の1つである「普及」と「実装」の科学の目的は、社会で身体活动という行动を広げ、また、そのための事业や取り组みを実现する上で键になるものは何か明らかにすることです。私たちの行动様式には、个人の意识だけでなく、物理的?社会的环境、政策的背景などさまざまな要因が影响します。したがって、一人一人の行动変容を促すためには、国や自治体、公司などがどのように介入することが有効か、検讨する必要があります。身体活动促进に向けた取り组みの社会での実装のため、いろいろな立场の方々とともに议论し、戦略を立てた上で政策や事业を実施?评価しています。
── どのようなデータを分析されていますか?データから分かることは何でしょうか?
まず、歩数と健康や死亡リスクの関係について调べた研究では、歩数が多い人ほど长生きしていることがわかっていますが、その量については、例えば1日4千歩くらいでも、1日の歩数がもっと少ない人と比べれば、健康上の意义があることが明らかになっています1。そして、毎日の积み重ねは、长期的に大きな差を生みます。世界保健机関(奥贬翱)のガイドラインでも、こうした知见の蓄积を受けて、近年は、少し体を动かすだけでも健康には意义があるという、ハードルを下げたメッセージをより强调するように変化してきました。
日本における身体活动の详细な现状を把握するため、公司と行っている共同研究では、移动距离などに応じてポイントが贮まるアプリの歩数データを分析しています。日本全国のアプリ利用者约120万人のデータ分析から、国の全国调査(国民健康?栄养调査)ではわからなかった市区町村レベルの地域差の実态が见えてきています。例えば、日本の中でも20~64歳の平均歩数が最も多いのは、东京都特别区(23区)などの大都市であり、1日约7千5百歩です。主な移动手段として公共交通机関を利用する机会の多い都内では、最寄り駅まで歩くことで必然的に歩数が増えます。一方で、车社会の影响が大きい地方都市では、自ずと平均歩数が少なくなります。最も少ない自治体では平均が约4千歩と、同年齢层で比べても、自治体间の平均値に大きな差があります。この结果は、身体活动不足(运动不足)の対策を进める上で、都市计画や交通政策を含めた环境に焦点を当てた対策も必须であることを改めて强调するものであり、また、特に地方において、様々な普及施策に取り组む必要性が高いことを意味します。
「からだを动かしたくなる」プロジェクト
── 運動不足の解決に向けては、どのような取り組みが有効なのでしょうか?
非常に难しい课题ですが、科学的に有効な取り组みはいろいろとわかってきています。歩きやすいまちづくりを含め、多面的に取り组むことが求められています。例えば、私たちが岛根県云南市で実施してきたプロジェクトでは、地域ランダム化比较试験という非常に厳格な検証方法を用いた上で、地域の运动実施率が多面的な取り组みによって高められることを世界で初めて示しました2。云南市は人口4万人ほどの自治体ですが、2006年に速水雄一市长(当时)のもと市立の「身体教育医学研究所うんなん」が设立されました。私自身もこの研究所の立ち上げに研究员として関わり、市の职员として地域の様々な保健活动に取り组みました。行政内外の多様な部门とも连携し、教育?保健活动とともに、评価?研究活动が行われています。その一环として、先ほど述べたような运动促进の地域介入研究を実施し、どれだけ実际に运动习惯を持つ人を増やせるか検証しました。最初の数年间はなかなか成果が出ず、5年経过したところでようやく运动実施率の増加を确认できました。

具体的な取り组みとしては、公司が行っているようなマーケティングの技术を様々な行动変容に応用させる「ソーシャルマーケティング」を用いて、优先ターゲット层を明确にした上で普及戦略を立て、チラシ、ポスター、音声放送を使った情报提供から教育机会、そして口コミ戦略を用いて、地域の中でメッセージや运动の行动が広がっていくよう、普及に努めました。口コミ戦略では、その地域で核になりそうな住民の方を见つけて、「インフルエンサー」の役割を担っていただきました(地域のなかでは、「○○地区运动広め队」などの亲しみやすい呼び名)。各地域では、住民の皆さんの発案で様々な活动が行われ、そうした活动を行政がサポートするといった「共创」の形で取り组みが进められました。なかには自らタスキをかけて町を歩く活动をしてくださった方々もいらっしゃり、こうした活动のおかげで住民の皆さんに口コミで情报や行动が広まりました。
结果的に、人口の少ない中山间地域でも、住民の皆さんやいろいろな団体と一绪に地域全体で戦略的に草の根的な活动を続ければ、性别や年齢にかかわらず运动実施率を上げられることが実証されました。现在も、石飞厚志市长のもと、市のさまざまな保健事业とともに、市役所多部门や他机関、住民の皆さんが连携して全市に拡大した普及プロジェクトが进められています。この研究は、研究の质(バイアス?リスクの低さ)やソーシャルマーケティングの丁寧さなどが评価されており、地域レベルでの身体活动の向上に成功した世界初の厳格な検証事例として、米国政府の身体活动に関するガイドラインのレビューや国际学会の公式声明にも取り上げられました。また、人口约40万人と、より人口规模の大きな神奈川県藤沢市でも、云南市のプロジェクトも参考にした多面的地域介入が実施され、こちらも5年后の评価で运动実施率の増加が确认されています。
── 他には、どのような取り組みがあるのでしょうか?

©Pacific League Marketing Corporation
プロ野球のパシフィック?リーグ(パ?リーグ)と连携して、スマートフォンのアプリ上で、「ゲーミフィケーション」と呼ばれるゲーム要素を行动変容に活用した取り组みも行ってきました。パ?リーグ6球団の公式アプリ「パ?リーグウォーク」は、野球ファンの方々が自然とアクティブになれるようさまざまな机能が设けられたアプリです(47都道府県から7万ダウンロード超)。
1日1万歩を达成した日に、応援する球団からランダムに选ばれた选手の画像がもらえる「选手図鑑」机能や、野球の试合日に、対戦球団のファン同士で1日の合计歩数を竞う歩数合戦などがあります。応援するチームや选手とのつながりを大切にするファンの心理や仲间意识?帰属意识を核とした设计になっています。匿名データを用いた検証の结果、アプリ利用者の歩数が利用开始后に増加したことが确认されました3。
调査により、アプリ利用者の约4分の1は、アプリをダウンロードした时点では、近い将来运动を始めるつもりはないと考えていたことも分かりました。プロ野球というチャンネルを介することによって、通常の运动教室等ではアプローチが困难な人々にも働きかけられ、行动変容を促せたことは注目に値します。また、性别、年齢、学歴、収入、叠惭滨(体格指标)といった属性にかかわらず、歩数の増加が见られたことがわかっています。パ?リーグウォークの登场以降、类似したプロジェクトが、サッカーの闯リーグでも始まっています。これから、スポーツビジネスに留まらず、音楽など他のエンターテインメントや领域とのコラボレーションで、楽しみながら自然と身体を动かしたくなるような取り组みをさらに创出していきたいと考えています。
生涯を通してアクティブに
── 子ども世代については、国际的にみて日本の状況はどのように評価できますか?
世界57ヵ国の子どもたちの身体活动の状况を示した国别の「レポートカード」()において、日本の状况は世界のトップクラスであることが示されています。体育の授业が必修であることに加えて、特笔すべき点として、日本では学校まで徒歩や自転车などの活动的な移动手段で通学している小?中学生の割合が、レポートカード评価対象国の中で世界一です。日本では、长きにわたって、子どもたちの安全な徒歩通学を守るためのさまざまな取り组みが行われてきました。例えば、教育行政上では、学校の配置について通学距离の目安が中央教育审议会の答申で示されているほか、地域住民等による交通安全见守りの取り组みがなされ、道路交通法によってスクールゾーンが设定されるなど、安全面にも配虑されています。また、日本では多くの地域で、「登校班」と呼ばれる集団登校が长年実施されてきました。アメリカなどの国々では、不活発な登下校の状况を解决する手段として、「ウォーキングスクールバス」と呼ばれる登校班が导入されつつあり、注目を集めています。

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こうした地域と学校教育との连携や、道路交通法制度も含めた多面的な日本の取り组みは、当たり前に実现していることではありません。近年では、少子化や过疎化の影响を受けた学校の统廃合により学区域が広がり、スクールバスを运行せざるを得ないケースが増えています。保护者や地域住民による毎朝の交通安全の见守りも、负担軽减を理由に廃止や缩小となってしまった地域もあり、私を含め、教育?健康(医学)?交通安全?防犯?都市计画など各领域の専门家が危机感を持って注视しています。
異なる立場の人々が集まり、知恵を出し合えばできることはたくさんあります。例えば、雲南市のある小学校では、スクールバスの下車位置を校門から500 mほど離れたところに設定し、他の徒歩通学の児童と同様のルートに徒歩区間が設けられています(英語圏では「リモートドロップオフ(remote drop-off)」や「パークアンドウォーク(park and walk)」と呼ばれる取り組み)。また、地域住民(成人?高齢者)の健康増進施策として、登下校中の時間に「見守りウォーキング」を推奨している地域もあります。
通学は、学校だけで取り组める课题ではありませんので、学校运営协议会(コミュニティスクール)を核として地域で支えていく必要があります。そうした活动を通して、地域の大人のためにもなるさまざまな活动が生まれています。私たち専门家も、各地域の良い事例を広く社会に発信し続けていかなければと思っています。子どもから高齢者まで、全ての人々が少しでもアクティブに生活しやすい社会を実现するため、当事者を含めたいろいろな立场の人々が协力する「共创」の取り组みが、これからますます重要になってくると考えています。
参考文献
1 Lee IM, Shiroma EJ, Kamada M, Bassett DR, Matthews CE, Buring JE. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Intern Med. 2019 Aug 1;179(8):1105-1112.
2 Kamada M, Kitayuguchi J, Abe T, Taguri M, Inoue S, Ishikawa Y, Bauman A, Lee IM, Miyachi M, Kawachi I. Community-wide intervention and population-level physical activity: a 5-year cluster randomized trial. Int J Epidemiol. 2018 Apr 1;47(2):642-653.
3 Kamada M, Hayashi H, Shiba K, Taguri M, Kondo N, Lee IM, Kawachi I. Large-Scale Fandom-based Gamification Intervention to Increase Physical Activity: A Quasi-experimental Study. Med Sci Sports Exerc. 2022 Jan 1;54(1):181-188.

鎌田 真光
医学系研究科 講師
宮崎県出身。2005年東京大学教育学部卒業、2007年同大学院教育学研究科修士課程修了、2013年島根大学大学院医学系研究科博士課程修了、博士(医学)。2006年より身体教育医学研究所うんなん(島根県雲南市立)研究員として地域の健康づくり事業等に従事。独立行政法人国立健康?栄養研究所流動研究員、ハーバード大学研究員、東京大学大学院医学系研究科保健社会行動学分野助教を経て、2020年より現職。宮崎市政策推進参与(スポーツ?健康分野)、香川県健康づくり政策推進アドバイザー、スポーツ庁?技術審査専門員を務める。共著論文にBauman AE, Kamada M, et al. An evidence-based assessment of the impact of the Olympic Games on population levels of physical activity. Lancet. 398(10298), 456-464, 2021. などがある。
取材日:2024年9月10日
取材:寺田悠纪、ハナ?ダールバーグ=ドッド