能登半岛地震と日本海侧地域の断层──地形?地质?构造调査から分かること

2024年1月1日に石川県能登半岛で発生した地震では、最大震度7が観测され、沿岸部の海底が隆起しました。なぜ能登半岛で大规模な地震が発生したのか、地形?地质?构造调査を行う地震研究所日本列岛モニタリング研究センターの石山达也准教授に闻きました。

轮岛市门前町五十洲渔港(4.1尘隆起)で见られた海岸隆起(2024年1月4日撮影)出典:石山ほか(2024产)东京大学地震研究所〈*註1〉
日本列岛诞生にさかのぼる能登半岛の地形
―― 能登半島の地形の特徴を教えてください。
今回の能登半岛地震では、地震前と地震后の海岸地形を比较すると、地盘の隆起によって海岸や渔港が干上がったことが特徴的でした。また、いくつかの地点では海岸线が数百メートル前进していることが分かります。地震后の调査では、一番激しいところで4~5メートル程の隆起が确认されました。

藻类の种类と群集の分布高度等から地震时の海岸隆起量の计测を半岛北部の75地点で実施
奥尻岛、男鹿半岛、佐渡岛、能登半岛などが位置する日本海侧地域は、これまでも地殻活动が激しく、地震活动が活発な地域として知られてきました。なかでも多くの断层に囲まれた能登半岛は、とりわけ地殻活动が活発です。能登半岛には、12万年以上前の海岸地形が标高100メートル以上の高い位置にある「海成段丘」と呼ばれる地形がみられます。これにより、过去十数万年のあいだに100メートルほどの隆起(平均すると毎年およそ1ミリメートル)を続けてきたことが分かっています。これは他の地域と比べてかなり速いスピードと言えます。
日本海側地域で地殻活動が激しい理由については、解明されていない点も多くありますが、日本列島の成り立ちにさかのぼって考える必要があると思います。およそ2000万年~1500万年前、ユーラシア大陸から数百キロメートル引き裂かれて日本列島が形成されました。日本海が形成されたこのときの変動は、日本海拡大(英語ではSea of Japan Opening)と呼ばれています。日本海拡大のメカニズムについては諸説ありますが、その過程で大きく引っ張り力を受けたため、日本海沿岸には多くの断層が集中しています。日本海拡大の“古傷”であるこれらの断層は、現在では太平洋プレートなどの沈み込みによって東西に圧縮する力を受けており、そのために動きが活発だと考えられます。
―― これまで能登半島で、大規模な地震が起きた形跡はあったのでしょうか?
海岸线を丹念に観察すると、およそ数千年间で、海岸线が断続的に隆起をしてきた痕跡があります。また、海岸付近に栖むゴカイ类の痕跡が通常よりも高い位置に残っていることから、过去に地震が起きていたであろうということも分かっていました。しかし、陆域では、今回の能登半岛地震に匹敌するような大规模な地震が起きた明确な証拠はこれまで见つかっていませんでした。
これまで日本列岛の陆域で起きたマグニチュード7规模の地震のほとんどは、単独の断层あるいはいくつかの断层が连动して破壊して発生したものでした。また、これまで日本海侧では、积丹半岛冲地震(1940年)、新潟地震(1964年)、日本海中部地震(1983年)、北海道南西冲地震(1993年)など、マグニチュード7后半の地震が起きていますが、これらの多くの震源は冲合でした。つまり、地震による被害の主たるものは津波でした。
ところが今回の能登半岛地震は、陆地と海域にまたがって位置する断层が破壊する「海陆境界地震」であったため、津波と强震动が同时に発生することになり、人々が生活する陆地で大きな被害が出てしまったのです。
把握が难しい「海陆境界地震」
―― 海陸境界地震にはどのような特徴があるのでしょうか?

陆上の活断层は、过去の大地震の痕跡が比较的残っており、実际に现场で掘削调査などの方法で大地震の発生时期や规模を调べることができます。过去の地震に関して书き残された史料が残っていることもあります。一方で、日本海で过去に発生した地震に関する情报は、陆上の活断层や南海トラフ、日本海沟の巨大地震に比べてきわめて少ないと言えるでしょう。そもそも活断层の活动についての地形?地质记録は不完全であることが多く、解明されていないことが多くあります。さらに海域での调査は陆に比べてコストが大きく、容易ではありません。
普段、渔业活动が行われているような海と陆の境界では、なおさら调査が困难になります。浅い海では、地震计を设置しても潮流によるノイズが発生してしまうため、记録が取りにくいという特徴もあります。また、地震による隆起が激しいと、地震の痕跡が浸食されてしまう场合があるため、ますます过去の地震や地殻変动についての証拠が残りにくくなります。
―― 発災直後に現地入りされ、調査を続けてこられました。調査の目的はどのようなものでしょうか?

今回の地震が起こる前から、地下构造探査や変动地形调査のプロジェクトで、富山大学、冈山大学、信州大学などの研究者たちと一绪に能登半岛を访れて调査を进めてきました。今回の地震では、雪や土砂崩れですぐに立ち入れない地域もありましたが、富山大学のメンバーが车を手配してくれ、1月3日に现地入りしました。発灾后すぐに现地入りして、浸食や復旧工事などで痕跡が消えてしまう前に、地震が起きたときに海岸地形がどのように変化したのか、调査して记録をとる必要がありました。
政府が行っている地震の长期予测では、地形?地质学や歴史资料などから、过去数千年间の大地震の时期や规模を推定し、そこから今后30年间に地震が起きる确率を推定しています。一方で、私たちが地形地质学的に得られる痕跡は、ピースの欠けたパズルのように不完全なことが多いのです。実际に地震が起きたとき、これまでどのように海岸が変化し、それが数百年后にどのような姿になるのかを理解することで、欠けたピースを埋める努力をすることが非常に重要です。今回の地震も含めて、さまざまな规模やパターンの地震活动を把握することで、より现実的な地震像が推定できるようになります。能登半岛地震は、他の海陆境界地震や断层の理解にもつながる重要な実例となるでしょう。
今回の地震で被灾された方々、関係者の方々に、心よりお见舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。少しでも多くの过去の地震の资料を集め、地震现象の理解と将来の地震灾害への备えに繋がればと考えています。
〈*註1〉石山達也?廣内大助?松多信尚?立石 良?安江健一(2024b)令和6年能登半島地震(M7.6)で生じた海岸隆起【速報その2】
〈*註2〉安江健一?立石 良?石山達也?松多信尚?廣内大助?白濱吉起(2024)令和6年能登半島地震に伴う海岸変化.『緊急シンポジウム令和6年能登半島地震プログラム及び予稿集』p.11. .
〈*註3〉石山達也?立石 良?安江健一(2024d)令和6年能登半島地震(M7.6)で生じた海岸隆起【速報その4】

石山 達也
地震研究所日本列岛モニタリング研究センター准教授
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程修了、博士(理学)。(独)産業技術総合研究所?活断層研究センター 研究員、東北大学大学院理学研究科地学専攻助教、2011年より地震研究所地震予知研究センター助教、同准教授を経て、2024年より 現職。共著に『第四紀逆断層アトラス』(2002年、東京大学出版会)、共著論文になどがある。
取材日:2024年4月4日
取材:寺田悠纪、ハナ?ダールバーグ=ドッド