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定説を疑え。イスラーム美术をひも解き、新たな事実を発见。| UTOKYO VOICES 098

掲载日:2021年2月17日

UTOKYO VOICES 098 - 东洋文化研究所 西アジア研究部門 教授 桝屋友子

东洋文化研究所 西アジア研究部門 教授 桝屋友子

定説を疑え。イスラーム美术をひも解き、新たな事実を発见。

日本とは驯染みが薄いと思われるイスラーム世界だが、明治时代からその美术品は徐々に蒐集されるようになった。现在、日本が东アジアで最大のイスラーム美术品のコレクションを有することはあまり知られていない。桝屋はこのイスラーム美术をテーマに、13~14世纪のモンゴル帝国が栄えた时代のイランにおける东西の文化交流をはじめとした研究を行っている。

生まれ育った港町长崎の土地柄、幼少から外国の文化や歴史に兴味があった。小学生の时にイギリスの童謡マザーグースの絵本を読んで以来、その虏に。「高校生になると、マザーグースの大家である东大の平野敬一先生の下で勉强したいと考えました」。

东大に入学すると、晴れて平野先生の全学自由研究ゼミナールに参加。しかし、先生の定年に伴い、さらなる指导を仰ぐことは叶わなかった。かわりに桝屋が専攻することにしたのが美术史だった。郷土の画家?山本森之助が祖父の叔父にあたる存在だったこともあり、子どもの顷から絵画に亲しんでいたのだ。

そして学部3年で大きな出会いが访れる。「ペルシア神秘主义文学の讲义がきっかけで初めてイスラーム美术に触れて、その鲜やかな絵画に引き込まれたんです」。

研究の道を歩み始めた桝屋は、大学院修士からニューヨーク大学美術研究所に留学し、博士号を取得。国立民族学博物館研究部助手を経て東大の东洋文化研究所へ。自ら「石橋を叩いて渡る」と例える地道なアプローチで美術史を読み解き、成果を上げている。

例えば、13世纪后半にモンゴル帝国の人々がイランに建立したタフテ?ソレイマーン宫殿。この宫殿のタイルには中国风の龙や凤凰が描かれたものと、ペルシア语叙事诗の引用文が书かれたものがあった。桝屋はその意义を探り、モンゴル人君主が考える王権の象徴と、タイルを作ったイラン人职人の考えるそれが、タイルのモチーフとして共存していたことを解き明かした。东西双方の文化に寄り添い、丁寧に调査対象に向き合った结果だった。

また、欧米の研究者の间では、13世纪以降のイスラームの写本絵画は中国絵画の影响を强く受けていると考えられていたが、その精度については详しく分かっていなかった。そこで、桝屋が『歴史集成』という写本のなかで中国古代史を题材にした部分を分析すると、同时代の中国絵画とは异なる笔致で描かれていることや、登场人物の身なりが误って表现されていることが分かった。中国を题材にしているにも関わらず、その理解や技法は実际の文化に忠実ではなかったのだ。これらを2014年の着书『イスラームの写本絵画』で発表し、2018年にはさらに详しく英文论考に発展させた。

「东西の文化交流について多くの人は东アジアとヨーロッパとの関係を考察しますが、その间の地にあって、双方と交流してきたイスラーム地域への认识に欠けている。この美术史を研究することで、文化交流の様相を雄弁に语れると思うのです。また、私自身日本で育った研究者として、东アジアの视点からイスラーム美术史研究に贡献できると自负しています」

研究対象となる地域も时代も、美术?工芸品もさまざま。雄大なイスラーム世界を探索する旅は続く。

「今后の目标は、大原美术馆(冈山県仓敷市)が所蔵しているエジプトで採集された陶器片のカタログをつくること。また、これまで扱えなかった时代や地域の写本絵画や、14世纪前半のとある歴史写本の挿絵について、研究をまとめたいと考えています」

小物:カナリヤ色のノートパッド

Memento

ニューヨーク大学美术研究所に留学して以来、1枚ずつ切れるカナリヤ色のノートパッドを爱用している。「気づいたことを何でも」记入して、后で必要な部分を切り取って论文执笔に役立てている。

直筆コメント

Maxim

定説をそのまま信じるのではなく、自分で丁寧に一から确かめることが大切と考えている。「大家の言うことが间违っていることもあります。先入観を排して先行研究を疑い、もういちど考え直すことが必要です」。

Profile
桝屋友子(ますや?ともこ)

1986年東京大学文学部美術史学専修課程卒業、1997年ニューヨーク大学美術研究所で博士号取得、同年国立民族学博物館研究部助手を経て1999年東京大学东洋文化研究所准教授、2007年より現職、2017~2020年东洋文化研究所長。著書に『Persian Tiles』(ステファノ?カルボニと共著、メトロポリタン美術館)、『すぐわかるイスラームの美術』(東京美術)、『イスラームの写本絵画』(名古屋大学出版会)、監修書にF?ラッグルズ『図説イスラーム庭園』(原書房)、真道洋子『イスラーム?ガラス』(名古屋大学出版会)。

取材日: 2020年11月16日
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬

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