行政システムの透视図を描き出し、见えてきたものを社会に伝えたい。| UTOKYO VOICES 095
先端科学技术研究センター 教授 牧原 出
行政システムの透视図を描き出し、见えてきたものを社会に伝えたい。
日本の政治を见通せる第一线の政治学者として、マスメディアや国の重要な委员会から见解を求められることも多い。しかしもともと牧原は、こうした依頼があっても「自分のすべき仕事はあくまで『研究』だから」と断っていた。考えが変わったのは2011年だ。
「东日本大震灾を仙台で経験してからです」
勤务していた东北大学からわずか数キロ先で、津波によって多数の命が失われた。このとき牧原の中で、社会に生きる多くの人々と自身の人生が直に结びついた。自分に求められることがあるなら、できることは何でもしよう、と牧原は思った。
牧原の仕事は、日本の行政システムを実态に即して研究し、その姿を明らかにしていくことだ。
日本の政治は长く自民党の长期政権を特徴としてきた。ゆえに政治学の世界で自民党研究は盛んに行われている。しかし、自民党政権が踏袭してきた「官僚主导の行政」については、官邸研究や大蔵省研究といった各パーツの研究はあるものの、行政システムをトータルで见ようという研究はなかった。
「政党の意思决定过程はリーダーの决断や议员の集合行动から説明できるでしょう。しかし行政は『システム』としてのプロセスがまるで见えないんです。僕はそれを&濒诲辩耻辞;透视&谤诲辩耻辞;してみたかった」
省庁间の齟齬はどう调整されているのか、官邸と官僚の関係はどうなっているのか。日本の政治の根干に関わるところなのに、そのダイナミズムが研究されていない。
「なぜなら、研究として同时代的にそこに迫る术がないと思われていたからです」
牧原はそこで、第二次世界大戦中から戦后、とくに1950年代の行政の実态を探る研究からスタートした。过去の文书に目をつけたのだ。
「政治家や官僚などのオーラル?ヒストリー(口述记録)や省庁の内部文书から、その时代の行政の実态を読み解いていきました。注目したのは省庁间で合意を得るための『调整』、そして、各省庁とくに大蔵省から官邸に出向する『官房型官僚』です」
15年をかけたこの研究は『内阁政治と「大蔵省支配」』として出版され、政官関係と行政の构造を明らかにした力作としてきわめて高い评価を受けた。
ただ、牧原の研究は50年代を描き出すだけにはとどまらない。
「僕の研究では过去の点をつなぎ、経时的な『変化』を明らかにしようとしています。すると现在が见えてくる。さらに、少し先の未来も见える。その知见は、この国の官僚制や行政を社会が理解する助けにもなるのではないか。そういう思いから、メディアや国に求められた时には自分の见解を発信しているんです」
牧原は、ただ目を凝らすだけでは见ることができない、行政の内部构造を透视して社会に见せてくれる。一枚きりのレントゲン写真ではなく、时间にともなう変化をとらえる连続写真で。
外の光がさんさんと差し込む研究室には、まるでカフェのようにゆったりとしたソファと温かみのある大きな木のテーブルが。「椅子と机にはこだわりがあって(笑)。パソコン作业やゲラ校正はいつもここでしています」
「20世纪初めの社会学者惭?ヴェーバーのテクストの中『紧张』(厂辫补苍苍耻苍驳)という言叶に触発されるという読み方があります。20世纪后半の社会学者狈?ルーマンの『过剰』(&耻耻尘濒;产别谤)、21世纪の政治哲学者笔?ロザンヴァロンの『二重性』(诲耻补濒颈迟&别补肠耻迟别;)。目指すは気になる言叶を架桥することです」
Profile
牧原出(まきはら?いづる)
东京大学法学部卒业后、同大学法学部助手に。2011年に博士号取得。东北大学法学部助教授、法学研究科教授などを経て2013年より现职。省庁间の调整、官邸机能、官房型官僚に注目し、行政の内部构造を明らかにすることをテーマに研究を行ってきた。近年では裁判所や会计検査院など政権から独立した组织の行动様式の解明にも精力的に取り组んでいる。『内阁政治と「大蔵省支配」──政治主导の条件』(2003年サントリー学芸赏受赏)ほか着书多数。
取材日: 2019年12月6日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马