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世界を见渡し、日本を见つめる「戦略的コミュケーション」の研究者。| UTOKYO VOICES 094

掲载日:2020年7月30日

UTOKYO VOICES 036 - 公共政策大学院 教授 青井千由纪

公共政策大学院 教授 青井千由纪

世界を见渡し、日本を见つめる「戦略的コミュケーション」の研究者。

1991年、东西冷戦の终焉とともに旧ユーゴスラビアで内戦が勃発。莫大な数の市民が犠牲となったことから、西侧主要国は平和支援部队の投入による介入に踏み切った。

ちょうどその顷、国际政治の研究者を志してアメリカ?コロンビア大学の大学院に通っていた青井は、一时休学してジュネーブの国连机関で働いていた。

「それ以前の军事力はもっぱら自国の戦争のためのものでした。しかし旧ユーゴや同时期に同じく内戦で飢饿が起こったソマリアなどでは、人道目的で各国の军队が派遣された。冷戦后の世界で武力行使の目的や意味が変质していく局面を、私はたまたま间近で见ることになりました」

それが研究のフォーカスを定める契机となり、以来、青井は国际政治学?安全保障学の立场から武力行使の正当性について研究してきた。

「ただ、いま研究时间の9割以上を注いでいるテーマは『戦略的コミュニケーション』ですが」

武力という物理的な力の行使と、コミュニケーションという外交的な力の行使。両者はまるで対极の存在に思えるが、青井はどちらも、「国家が外部に及ぼす影响」の一形态だと见ている。

「安全保障戦略といえばまず军事力に目がいきますが、いまはどの国も他国に対してそう简単には武力行使ができない时代。その分、国の外交政策を有利に进める『コミュニケーション』の重要性が非常に大きくなってきています」

青井が特に注目しているのはイギリスの「戦略的な」コミュニケーションだ。

「戦略的コミュニケーションとは、国家の『戦略』、すなわち目标や优先事项を実现するために明确な意図をもって行う情报発信のこと。単なる広报活动とは异なります。自国の行动の意図を后追いで説明するだけのものでもありません。戦略的コミュニケーションとは、ときに政策を规定したり行动そのものにもなるほど、国家にとって重要な活动なのです」

たとえばイギリス国内でロシア人の元スパイが狙われ、一般市民が巻き添えとなって死亡した2018年のノビチョク事件。主権が侵される大事件だったが、イギリス政府は性急にロシアと対立することなく、法と手続きにしたがって行动した。まず、この事件で使われた化学物质がノビチョクであることを突き止め、国际社会と自国民にその事実を公开してロシアの関与を明らかにしたのだ。

「イギリスが最重要视しているのは『ルールに基づく秩序』。そこでイギリスは、违法行為を许さないというメッセージを世界に伝え、结果としてロシアを强く牵制した。この时、コミュニケーションは、戦略を効果的に実现するための『行动』だったのです」

戦略的コミュニケーションの多层的な面白さに惹かれて研究してきた青井だが、その一方でずっと気にかかっていることがある。

「日本の対外コミュニケーションはまだ、大局的な戦略のない発信や全方位的な広报にとどまっているように见えます。しかしそれでは、国际社会でリーダーシップを発挥するどころか日本に対する误解や无知を覆すこともできず、结果的に国益の达成に不利になります」

だから、戦略的コミュニケーションの重要性とその効果を理解し、専门的な知识を备えた人材を育成したい、と语る言叶に热がこもる。

安全保障におけるコミュニケーションの役割を理论的に解き明かしてきた研究者として、青井は、日本の将来のためにできることは何かを考え続けている。

写真:DCDCの記念品

Memento

「研究の性质上、さまざまな国の机関や研究机関の协力をいただきながら研究を进めています。反対に、国から委託されて行う研究もあります。これは、イギリス政府の平和支援ドクトリンを研究していた时にご协力いただいた机関の方からもらった记念品です」

直筆コメント

Maxim

「恩師に言われた言葉です。国際政治の研究では理論やドグマに縛られるよりも、 ‘make sense’すること(わかりやすく、理にかなっていること)のほうが重要であると考えます。国際政治の現実は科学の実験室ではなく、また、複雑ですから」

Profile
青井千由纪(あおい?ちゆき)

上智大学卒业后、マサチューセッツ工科大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取得。国连大学平和とガバナンスプログラム学术研究官、青山学院大学教授を経て、2016年より现职。2008~2009年にロンドン大学キングス?カレッジ戦争学部客员研究员、2019年より客员教授も务める。政府?国际机関の委託研究や各国研究机関との共同研究も多く、2018年、防卫大纲策定のための「安全保障と防卫力に関する恳谈会」メンバー。日英ともに论文および着作多数。

取材日: 2020年1月15日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马

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