一枚の絵画から、人と人の结びつきや文化の多様性が见えてくる。| UTOKYO VOICES 091
东洋文化研究所 東アジア第二部門 准教授 塚本麿充
一枚の絵画から、人と人の结びつきや文化の多様性が见えてくる。
东北大学3年の夏、集中讲义に来ていた小川裕充先生(东京大学名誉教授)が投影したスライド『早春図』(山水画家?郭煕)を见て、「世の中がひっくり返えるほどの衝撃を受けました」と、塚本は当时を振り返る。
「墨だけで表现された立体感の凄さは、先生に指摘されなければわかりませんでした。初めてアジアに出会ったという惊きと、こういう絵を知らずに生きてきたことが恐いと思ったのです」
骨董屋だった父亲の影响で古美术に触れていたこともあり、小学生の顷から仏像が好きで美术家に憧れていた。「ところが、高3の时に受験デッサンの勉强をしていたら、先生が『美术史という选択もあるから』と囁いたのです。デッサンが下手だったからでしょうね」。
そこで、通っていた博物馆の学芸员に相谈したところ、仏像が好きなら九州大学か东北大学の仏教美术がいいと言われ、东北大学に进んだ。そこで、人生の航路を决める『早春図』に出会うことになる。
学芸员になりたいと思っていた塚本は、博物馆で働くには修士号が必要だからと大学院に进んだ。一时は研究に行き詰まって大学院も辞めようと思ったこともあったが、「観念的な研究はしていても実际のアジアを全く知らないことに気が付いたのです。それで博士课程1年目に南京と台湾に留学し、暮らしの中に絵画が生きていることを体験して感动しました。モノに出会い、人に出会い、絵画にもアジアに対する见方も大きく変わりました」。
その后、大和文华馆や东京国立博物馆の学芸员として働きながら博士论文『北宋叁馆秘阁における文物の収集?公开活动と「北宋絵画史」の成立』(2011年)を执笔。その后、博士论文をベースに、北宋时代に成立した文物の収蔵?公开机関である叁馆秘阁を中心に、北宋絵画史の成立に至るまでの过程を明らかにした『北宋絵画史の成立』を2016年に上梓した。
絵画のライフサイクルという新しい视点から、北宋美术が内包する时代と地域を越えた文化的多様性を検証した论文だ。「今までの研究は様式论で终わっていたのですが、一枚の絵画というモノを通して人と人がどう结びつくのか、どういう文化をつくるかを実証的に追究しました。博物馆での経験がないと书けなかった论文です」
「最初は谁でも絵画の见方はわからない」と塚本は言う。「小川先生に教えてもらい、中国で教えてもらい、博物馆で教えてもらってわかるようになりました」。絵画の见方は时代意识に大きく规定される。しかし、単なる好き嫌いとも异なる。「新しい価値を见出し、自分の目で见た経験をベースに伝えることが大事だと考えています」。
2015年に东洋文化研究所に入り、鈴木敬先生が始めた世界中の中国絵画のすべてを撮影する『中国絵画総合図録』(3編全15巻)プロジェクトに参加している。索引も完成し、鈴木先生が取り組み始めてから50年かかった一大プロジェクトの完了を記念して2020年3月15日にシンポジウムを行うこととなった(新型コロナウィルス拡大のため延期)。「約20万点の写真があり、デジタル化も含めてこのアーカイブをいかに活用するか検討しています」。
絵画研究には、「素晴らしい作品の持っている力に触れられる面白さがある」と塚本は言う。
「また、作品は创り出されたときに终わるのではなく、作家亡き后も新しい価値を创り出していきます。テキストと违ってモノである絵画によって伝え続けられることは沢山ある。絵画でしか表现できない人间精神の大事な侧面を明らかにしていきたいと思います」
塚本は、今后も絵画の持つポテンシャルと文化的多様性を追究していく。
作品を壊さずに近づくために大学时代から使っている単眼镜やルーペで、作品を観察?记録する。「とにかく作品に一ミリでも近づきたい。写真撮影ができない时は见て覚えます。絵画研究は作品を见ることが一番大事なのです」。
北宋时代の山水画家?郭煕の言叶。どんな素晴らしい芸术も、「林泉之心」でみればよいものとなり、悪い心でみればつまらないものとなる。「北宋时代の士大夫たちの内面の自由を尊ぶ艺术観がよく表れた言叶で、仕事も研究も何事にも常にこの『よい心』でのぞめるような人间になりたいと愿っています」
Profile
塚本麿充(つかもと?まろみつ)
1999年東北大学文学部史学科東洋?日本美術史専攻卒業、2001年同文学研究科歴史科学専攻東洋?日本美術史博士課程前期修了?後期入学、2001~2003年南京師範大学美術学院留学、2003~2004年國立台湾大学藝術史研究所留学、2005年大和文華館学芸部部員、2010年東京国立博物館研究員、2015年東京大学东洋文化研究所准教授。第21回國華賞(展覧会図録賞)および第24回 國華賞受賞、第7回三島海雲学術賞受賞
取材日: 2020年1月17日
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬