社会の“流れ”をスムーズに。「渋滞学」の提唱者は现场に通う。| UTOKYO VOICES 087


先端科学技术研究センター 教授 西成活裕
社会の“流れ”をスムーズに。「渋滞学」の提唱者は现场に通う。
渋谷のすさまじい人混みの中で右へ左へとこづきまわされているうちに、西成少年は自分が人间ではなく、石ころになったような気分がしてきた。茨城の小学校に通っていた西成にとって、生まれて初めて歩く都会の雑踏だった。
不意に足元の地面がぐにゃりと曲がり、西成は自分の体を支えきれずに昏倒した。しかし地面は歪んでなどいなかった。
「病院で脳の検査を受けたところ、异常なし。医师からは『この子は“混雑”が嫌いなんじゃないでしょうか』と言われました」
医师の见立て通り、少年は混雑や渋滞がとりわけ苦手な大人に育った。
「反対に、ずっと兴味があったのは星や宇宙。『宇宙戦舰ヤマト』が大好きだったんです。宇宙物理学者になりたくて大学では高度な数学を勉强し、大学院では数学を駆使する流体力学の道に进みました」
数学は大好きだったが、一つ问题があった。数学の研究は社会课题の解决とは距离が远い。しかし西成はどうしても、自分の研究を社会の役に立てたかった。考えに考えて思いついたのが、「大好きな数学や物理で、大嫌いな渋滞を解消する」という试みだった。
「でも4年以上、谁にも相手にされませんでした。学会で私が発表する番になったとたんに会场から人がいなくなり、司会と自分だけが残されたことも。悔しくて泣きましたね、その时は」
ところがいまや、西成が生み出した「渋滞学」は各方面から引く手あまただ。
最初の大きな业绩のひとつが、高速道路で起きる自然渋滞のメカニズムを数学的に解いたこと。その理论によれば、バイパス新设などの力技を使わずとも、走行中の车がみな车间距离を40尘に保つだけで渋滞が解消されるという。
ここで「メカニズムを解き明かし、理论として确立する」ところで终わらないのが西成の流仪。车间距离の理论は、警察とともに高速道路で実験を行って确かめた。
「学问を社会の役に立てたい、と思って始めたのがこの渋滞学ですから。解决策を见つけるところまでやらなくては意味がないんです」
ある日は研究室で数学の最新理论を勉强し、ある日は床に动线のテープを贴って人の流れの実験を行い、ある日は公司の工场で生产ラインの渋滞を観察する。西成に、「机上の空论」はない。
惊くことに、渋滞学は道路の渋滞に限らず「流れの滞るところ」ならありとあらゆるところに応用できる。群众の避难経路策定、会社の业务プロセスの効率化……果ては细胞内のタンパク质の反応が急に遅くなる现象から、金融バブル崩壊时のように投资の势いが急激に停滞する现象までも扱える。
大好きな数学と、大嫌いな混雑。一见、すぐには社会に役立ちそうもない纯粋科学と、解决すべき社会课题。そして理论と现场。西成は対立するものを见事に组み合わせ、渋滞学をパワフルな学问へと育ててきた。
「いま特に力を入れているのが物流の课题です。日本の物流は効率化が进んでおらず、あちこちで业务が渋滞しているんです。解决には、科学的に物流の効率化を考えられる人材の育成が必要。そこで、自分たちで育てようと寄附讲座を立ち上げたところです」
どんな课题でも、提言にはとどまらない。西成は自分で汗をかく。
おもちゃのように见えるが、「セルオートマトン」という数学のモデルを模型にしたもの。西成はこのモデルを使って「自然渋滞は车间距离が詰まることで起こる」というきわめてシンプルなルールを导きだした。
「渋滞の研究から、科学的にもこのことわざの正しさがわかってきました。急いでいるからといって皆がわれ先にと目的地に杀到するとたしかに、全员が不利益を被るんです。渋滞の本质をついた言叶ですね」

Profile
西成活裕(にしなり?かつひろ)
东京大学大学院工学系研究科博士课程修了后、山形大学などを経て2009年より现职。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、内阁府イノベーション国际共同研究座长、内阁府滨罢戦略本部滨罢厂タスクフォース委员などを歴任。『渋滞学』(讲谈社科学出版赏受赏)など一般向けの着书やメディア出演も多く、2020年东京オリンピック?パラリンピックでは组织委员会のアドバイザーとして、渋滞?混雑缓和策の立案から実务まで関わっている。
取材日: 2020年1月7日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马