自分探しの延长で始めた研究が、社会に蔓延する冷笑主义を打ち破る。| UTOKYO VOICES 065


大学院教育学研究科 比較教育社会学講座 准教授 仁平典宏
自分探しの延长で始めた研究が、社会に蔓延する冷笑主义を打ち破る。
国が福祉施策を民间に委ねる新自由主义が时代の潮流となっている今、ボランティアなどの社会参加の动きがなぜ広がっているのか。その问题をボランティアに関する100年の言説の変化から実証した仁平も、かつては社会に関心のない1人の青年だった。
大学に入って社会学に関心を持ったが、何を研究すべきか决まらない。「身の回り3メートルのことしか考えずに生きてきたので、社会に対する问题意识が持てず、政治的活动に勤しむ同级生を白い目で见るシニカルな学生でした」。
困った仁平は人类学の教授の「自分にとって一番远い世界に行きなさい」という助言を受け、知的障害児の施设にボランティアとして通い始めた。その中で、ボランティア活动に迈进する周りの若者たちもまた、政治や社会に特别関心があるわけではないことを知る。卒业论文では自分を投影するかのように、政治に関心のないボランティアについて书いた。
大学院に入ってからは、政治に対する无関心の背景を知りたくなった。手がかりになったのはやはりボランティアだ。活动の性质が昔と変わってきているのではないか。仁平はそう気づいた。
「かつて、生活を共にしながら贫困に苦しむ人々を支援する『セツルメント活动』という社会运动が広がった时代がありました。政治や社会に深く関与していたボランティア活动が、いつどのように変化したのか。それを见极めれば、政治や社会に関心を持たない若者が生まれる背景がわかるのではないかと考えたのです」
仁平は1960年代からの歴史を持つ大阪の団体の资料を読み込み、関係者に话を闻いた。その中で、70年代まで学生运动と肩を并べて、政治的に活动していたボランティアが、80年代に自己実现を目指す方向に変わっていく様子を捉えた。
それを修士论文にまとめ、さらに明治时代に遡って分析した博士论文が着作『「ボランティア」の诞生と终焉』に结実した。加えて、博士课程では国や自治体が责任を持つべき福祉施策を民间に委ねる新自由主义の中で、参加型民主主义と新自由主义との共振を実証的に研究した。
「ボランティアが政治と无関係に活动していると、自己実现などの美辞丽句のもとで、本来、国や自治体が実行すべきことの下请をやらされます。その依存から抜け出すには、70年代に脳性小児マヒ者の当事者団体『青い芝の会』が主张した、ボランティアの所得保障を要求する考え方を復活させることが重要だと提起しました」
仁平が现在、取り组んでいるのは「やりがい搾取」の问题だ。日本社会は、様々な分野で个人の热意、善意による无偿労働(アンペイドワーク)に委ねられてきた。それがやりがい搾取という言叶になり、2020年东京オリンピックのボランティアもやりがい搾取だという批判がある。
同様の観点から、ブラック公司の告発などの视点が形成されてきたことは兴味深い。一方で、ボランティアへの冷笑は根强く、芸能人が寄付すると売名行為だと叩かれ、何もしない方が正直者といわれる倒错した状况もある。
「やりがい搾取とアンペイド依存型社会を批判しつつ、シニシズム(冷笑主义)を打ち破る回路を作っていくことが终生のテーマです。やりがい搾取论と偽善论について、まとまった研究にしたいと考えています」
何百册もの本や资料、论文が入っている、いわば「マイ?ミニ図书馆」。いつでもどこでもアクセスできるので非常に重宝している。思いついたアイデアをぱっと书き留めることもできるので、手放せない。
大学院进学以后、ホームレス支援をはじめ様々な运动に取り组んできた。デモをしていると道行く人の冷たいまなざしに気づくことがある。それは、かつて自分の中にあったものだ。だからこそ、その人たちに届く言叶を创ることが自分の役割だと思う。

Profile
仁平典宏(にへい?のりひろ)
东京大学大学院教育学研究科博士课程修了。2004年より东京大学人文社会系颁翱贰特任研究员、日本学术振兴会特别研究员笔顿、法政大学社会学部准教授を経て、2014年より东京大学大学院教育学研究科比较教育社会学讲座准教授。専门は社会学。着书に『「ボランティア」の诞生と终焉――〈赠与のパラドックス〉の知识社会学』(名古屋大学出版会、损保ジャパン记念财団赏?日本社会学会奨励赏)など。
取材日: 2019年1月29日
取材?文/菊地原 博、撮影/今村拓馬